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「編み物の技術」だけでアランセーターを生まれ変わらせる

柄やデザインは気に入っているけれどどうにもサイズが合わない古着のセーターや古くなった手編みのセーターを持っている人はいると思います。

1本の糸で編まれた「編み物」の構造だからこそできる方法で、ミシン要らずのお直し(リメイク)に挑戦してみました。

古着や一昔前のセーターは全体的にオーバーサイズ。ドロップショルダーになるのは良いけれど、どこかしっくりきません。

今回のアランセーターは「ウール100%の古着のセーター」だということもあり、「一度糸に戻してから編み直す」という方法は取らずに、裾のリブより上のケーブル柄1リピート分(約10センチ)ほどカットして着丈を短く調整します。そのあとに糸を解いて取り除き、裾リブはそのまま綺麗に「メリヤスはぎ」の応用「1目ゴム編みはぎ」ではぎ合わせて編み直したと同じような綺麗な切り替えにしていきます。

また脇リブ部分にスリットを加え、袖口にアームウォーマーのように着れる指穴を作り現代性のあるデザインを入れていきます。

着丈調整の手順

①別糸で目を通す


カットをする目安の目印をつけるのにはぎ合わせたい段の目を一目一目拾っていきます。布帛でいうところの地直しのような作業ですね。模様編みなので慎重に、段がずれないように気をつけながら進めていきます。(あくまでも目安なのでカットしてほどくときに調整しても問題ありません)

別糸は最後に抜くので、すべりのよい丈夫な糸がおすすめです。

②脇の縫製をほどく

①のラインの数段上まで脇のとじ糸を解きます。
脇の縫製は解かず輪のままカットし調整しようと思っていましたが、前後の縫製でズレが目立っていたので、脇の縫製も解くことにしました。

②カットする


①のラインの数段下にはさみを入れます。今回は10cほど取り除くので大体で切っても問題ありませんが、糸を解く作業もあるので取り除く幅が短いときは要注意です。

③別糸の段まで糸を解く

身頃の方は編み始めの方から解いていくので、端の目は絡まりやす解きづらいです。また、交差している箇所も糸を引くだけではスムーズにいかないことが多いので、かぎ針やとじ針を使用して丁寧に解いていきましょう。糸は細かく切りながらでもOK。


④裾パーツ:リブ部分まで糸を解く


切り離した裾のパーツは、はぎ合わせる段まで解いていきます。今回は模様編み部分をすべて解き、リブだけを残しました。最後の1段分は、次の工程ではぎ合わせる際に使用するので残しておきます。
身頃とは解く方向が逆なので、スムーズに解けていきます。前後合わせるとそれなりの糸量になるので、解いた糸は巻きなおしてリサイクルできるのも嬉しいですね。

⑤身頃とリブをはぎ合わせる

表天竺同士をはぎ合わせるときは「メリヤスはぎ」という技法を使います。
今回の裾のリブは一目ゴム編みなので「一目ゴム編みはぎ」をおこないます。裾リブのループと身頃パーツの模様編みのループを1目1目注意して針を通していきます。
同じ目数のパーツをはいでいくと、上のパーツはシンカーループを拾っているので半目ずれます。今回は裾リブから身頃のところにいくまでに増やし目をしているため身頃の目数がリブの目数よりも多いです。裾リブの目数に対して余剰分が均一になるように身頃の目数を調整してはぎました。

⑦別糸を抜く

別糸を引き抜きます。ひっかかりがあればその場所で切りながら抜いてもOK。

⑧脇をとじる

②で解いた脇のとじ糸を使い、リブの手前まで同じようにとじていきます。残したリブの部分はスリットになります。今回の古着のセーターはなみ縫いのように始末をしていたので同じように始末します。編地に平行に針を通すのがポイントです。元の製品の仕様に合わせて、すくいとじやリンキング(引き抜きとじ)などの始末を施すといいでしょう。

袖口に指穴をつくる

①とじ糸をカット

指穴を開けたい部分の縫製をカットします。
誤って袖本体の糸を切らないように気をつけてくださいね。

②とじ糸をほどいて留める

カットしたところから左右に2センチほど糸をほどき、かぎ針を使って糸端を固定させます。糸が短く始末が難しい場合は、はた結びなので糸をつなぎしっかり始末をして糸端を隠しましょう。

お直し完成


丈が短くなり、すっきりとした印象になりました。袖のボリュームとのコントラストも気に入っています。
袖部分に親指穴を作ったことで袖の長さも気にならなくなり、アームウォーマーのような着こなしができます。

このお直しの工程は動画でも見ていただけます。

ニッティングバード的「アランセーターのリメイク」いかがでしたか。
今回は着丈の調整と袖に穴を開けるというお直し方法をご紹介しました。
1本の糸から生まれた編み物は、このように解いて再構築することができます。

一から編み直ししたり、ミシンを使ったりするのも良いですが、編み物の技術を使って少しでも手間暇をかけたものにはそのひとなりの個性が表れ、また着たいなという想いが沸いてきます。

これからも編み物をベースにした「セーターのお直し方法」をご紹介したいと思います。

なおニッティングバードでは基本的にお直しは受けていませんので、ご了承ください。