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樋口メリヤス工業株式会社(大阪府)

大阪府枚方市にある「樋口メリヤス工業株式会社」様を取材してきたのでお話したいと思います。

暖簾

樋口メリヤス工業株式会社の歴史

「樋口メリヤス工業株式会社」様は1933年に創業した老舗の靴下メーカーです。
元々は郊外型チェーン店などの靴下のOEM生産を主とした量産メーカーでしたが、工場の閉鎖と共にこれまでの量産体制を一切止め、他では出来ない『自社でしかできないモノづくり』に力を注いできました。
6代目となる中江社長は自身がインターネット事業を手がけていた経験も踏まえ、自社ブランドのこだわり商品を作り直販するWEBサイトを開設し、B to Bだけでなく一般消費者向けのB to Cのオリジナルのデザインで1点から生産可能な「メッセージ靴下」の直販もやっております。(靴下の平均ロットは200~300枚以上と言われています)また本生産の大量ロットにも協力工場に委託して作る背景も持っております。
中江社長は「一般の方・知識のない方に靴下製造に、参加してもらい靴下への興味関心を高め、後世に残していきたい。」という思いから、2009年には念願であった 物作りを伝えていく為の工房を開設。小さな子供も靴下づくりに参加することが出来る体験工房として、一般の方へ 靴下作りを通して熱い思いを届けています。

靴下編み機と設備

機械靴下

スポーツ用靴下編み機と一般的な靴下を編む二つの旧式の機械を使い生産をしています。
新しい機械に比べ 技術的に劣ることはありますが、メンテナンスがしやすく、コンピュータで全てを制御してはいないので人の手である程度融通が利くというメリットがあります。中江社長自らアナライザーに向かい、紙に書かれたデザインやイラストを元にプログラミングをしています。

機械金具

旧式の靴下編み機の細部。中央の四角いチェーンのようなもので靴下の長さを調整しています。
1パーツで12段を編む指示ができます。(360段編みたければ30パーツ必要)

カセット

プログラミングしたデータはカセットテープで機械に読み込みます。最新の編み機では、ワイヤレスでデータを飛ばしたり、USBでデータを移すのが当たり前ですが、旧式の編み機を使っている工場は沢山あります。旧式の編み機では、もうすでに生産が終了されているフロッピーディスクやカセットテープを使ってデータの読み書きがされますが、まだまだ現役で使用されています。

リンキング

つま先縫製機。編みあがった靴下のつま先部分をリンキング(縫製)をする機械です。
編み目のループを正確に刺す細やかな技術が求められます。(糸が黒くてハイゲージの編み地などはかなり難しい)どこの工場も、高齢化が進み日本では定年を過ぎたご年配の方がアルバイトでやっているのが現状です。
最近の靴下編み機では、つま先の連結部分も一緒に編み立てられて出来上がるので、この工程は不要になります。

樋口メリヤス工業株式会社様と靴下の未来

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中江社長は中国やバングラディッシュなどの海外生産主体のものづくりではなく、「日本のものづくりの技術を絶やさずに 後世に伝えていかねばならない。他所ができないことだけを突き詰めていきたい。そうしなければ残した意味がない」という思いが、同じニット業界で仕事をしている身としてとても痛烈に感じました。
ニット工場は全盛期の10分の1以下になり、先が見えずに辞めてしまわれる同業者も少なくはないですが。厳しいけれどこれからが楽しみと前向きな発言が聞けました。
2033年の創業100年を目標に、ニットの未来を明るく語る中江社長の笑顔が印象的でした。