ニッティングバード

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カンブリア宮殿 島精機製作所の回

2016年1月21日にテレビ東京より放送された「日経スペシャルカンブリア宮殿ものづくりの世界のファッションを変えた”和歌山のエジソン”」を観ましたか?

株式会社島精機製作所様にはニットの製造・生産するものとして間接的に大変お世話になっています。
工業機の生産に関わるニットデザイナーとして、OEM(外注)として工場とブランドの間に立つものとして、島精機の横編み機をプログラムし編み立て出来る人として、三つの立場から番組を観た感想と見解をお話して行きます。

 

カンブリア宮殿の放送内容

和歌山にある創業54年の世界的な機械メーカー島精機製作所

名だたる高級ブランドが島精機の機械を使いニットを生産している。
8割近い部品は内製化し、年商480億円を誇る編み機の世界シェアナンバーワンという企業。

78歳でありながら現役の技術者であり社長の島氏の半生を追う。

島社長は自ら部品や仕組みをひとつひとつ開発し、16歳の時に手作りした機械や手袋縫い合わせ機を境に、様々な発明をしていき現在では特許が600件に及ぶ。

機械のみにならずCGシステムなどの開発に力を入れ、1995年に世界初の「無縫製編み機ホールガーメント一号機」を発表した。

ホールガーメントは島社長が「究極の衣料である」と唱えるように、欧州アパレルメーカーも賛辞を惜しまない

ホールガーメントで編まれた製品は宇宙船内用カーディガンや医療やそして工学分野でも活躍し続けている・・・・・

*ホールガーメントについてはニッティングバード過去の記事でも簡単に紹介したので参照していただけたらご理解いただけると思います。→ホールガーメントについて

 

ニットを知る人が少ない

番組内で「工場側が見るデザイナーのデザイン画」が紹介されていたと思いますが、多くの工場は糸を知らない人、機械を知らない人=ニットを知らないデザイナーと多く取引をしています。その為、共通言語で話せないので思い通りの形に出来なかったり、作り直しが多いことも少なくありません。

CGシステムを進化させたアパレルデザインシステムを作ったのほこの背景が大きいと考えてます。(ちなみにソフトは数百万します)

実は世の中にはちゃんと工場と取引出来る「ニットデザイナー」が少なく、多くのアパレル企業は、中途のニットデザイナーを欲しています。
しかしながら、ニットを教える学校(ここでは手編みではなく工業機を含めた)が圧倒的に少ないためニットデザイナーの卵が生まれにくく、またニットに関わる人は女性デザイナーが多かったため早くに結婚して子供を産みやめてしまうっというのが中途が少ない原因のひとつになっていることや、育児などを支える企業側の整備が足りないものあるかもしれません。

ホールガーメントの可能性

番組内ではホールガーメントの編み機を、「右袖と左袖と胴を同時に編み出し、脇で繋がって無縫製で編める」という紹介がありましたが、実はもっともっと可能性を秘めている編み機なのです。

むしろ体に沿う細身なシルエットのセーターを考えると、無縫製ではなく、身頃、袖、襟を別々に編みリンキング縫製をしてドッキングした方がより着やすい。

これは、ホールガーメントの構造上、脇下に負担がかかり易く、肩の傾斜がとりづらいためである。

無縫製のホールガーメントは全後両ベットのスライドニードルの発明により、ただの無縫製ではない様々な編み地を編む事が出来るようになっています。

ホールガーメントと無縫製のニットと考えるだけでなく、「新しい編み地が作れる機械」と考えればファッションだけでなく医療や工学で使われる可能性が今後沢山出てくると思います。

それこそ、シマセイキ先端技術研究所で紹介があったような、妊 婦用の腹帯のセンサーを一体化させたニット生地、握力が弱い人やリハビリ用の補助グローブなどの医療として、ナイキのアッパーがニット1枚仕立て出来た 「フライニット」の様な工業製品のようなニットがどんどん出てくれば、編み機の価値が上がると共にアパレルの市場に囚われない新しいものが出来てくるのでは?と願っております。

 

工業的な側面とデザイン的な側面

ホールガーメントは普通の編み機本体にくらべ値段が高いため、サンプルも量産の工賃も普通の編み機より割高です。(そして一型あたりのロットも多い)また、普通の横編み機に比べ柄組(プログラム)が特殊な為まだまだ、技術者不足(ニット工場で働く人が少ないのも原因)だと聞いております。

ホールガーメンは無限の可能性を秘めています。しかしながら、編み立ての時間が工賃に比例する(そのためマッハと言われる従来のホールガーメントより速く編める機械が生まれ進化している。)ので、サンプルを作る時間を出来る限り減らし、ロットが多いモノを受けることが工場が利益を上げていくために必須となっています。番組に出てきてた、ドレクセル大学に併設する「シマセイキ先端技術研究所やオランダにある「テキスタイルミュージアム」のように24時間機械を動かし続けないと利益が出ないということを気にしないで研究・制作が出来る場所が日本にも増えて欲しいと考えています。

 

フュージョンミュージアム@フォルテワジマ

今回の放送で島社長並びに、島精機製作所の、ニットの奥深さが伝わったと思います。

少しでもニットや島精機製作所に興味をもたれたら、和歌山駅近くに「フォルテワジマ」という小さなデパートの三階に島精機の編み機博物館フュージョンミュージアムがありますので是非行ってみてください。

ここでは、世界で初めてのニット編み機や、番組内で島社長が説明していた、16歳の時に手作りした手袋縫い合わせ機や世界最速の編み機など順を追って編み機の歴史を知る事が出来ます。
また、自分で自転車を漕いでその動力で編める手袋編み機の体験やコンピュター制御の柄組を体験してマフラーやクッションを作ることも出来ます。


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