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あむかわアミーナで学ぶ編み機のこと

以前の記事「編み機の歴史とこれから」でも少し紹介した初めての手芸を楽しく学ぶおもちゃのひとつとして、昨年11月にタカラトミーから発売された「あむかわアミーナ」

プラスチック製のおもちゃでありながら、本格的な編み機の構造になっています。
amazonのレビューなどは評価が著しく悪いですが、何故そうなっているのか。果たして本当に使いづらいのか。私たちプロの目線から家庭用の編み機との比較も交えつつ、「あむかわアミーナ」を分析していきたいと思います。後日、ニットテキスタイルアーティスト/家庭用編み機研究家の宮田明日鹿さんにも、客観的に検証するために記事を執筆いただいているので、楽しみにお待ちくださいね。

それでは、検証スタートです。

取扱説明書は丁寧に作ってありますが、なかなか書面だと理解し難いですよね。基本的な使い方、注意事項などは丁寧な動画もあります。使用前にチェックしておくことをオススメします。

○家庭用編み機との部品、パーツの違い

パステルカラーで彩られた編み機。メルヘンで いわゆる‘ゆめかわいい’カラーリングに乙女心が疼きます。これは以前の無骨な家庭用編み機になかったものであり
道具の細部までリボンやスカラップなどで装飾されており、デコレーション用のシールもついています。

家庭用の編み機と比較をしながら、パーツごとに注目していきましょう。

キャリッジの違い



<あむかわアミーナ、キャリッジ>


<家庭用編み機 、キャリッジ>

キャリッジの構造も家庭用編み機をよりシンプルにしたつくりになっていることがわかります。編み機はキャリッジを左右にスライドさせると溝に沿って針が運針し、編み目が形成されていきます。
家庭用の編み機では、レース編み、すべり目やタックといった技法もキャリッジに含まれますが、あむかわアミーナはそれらがなく、平編みベースで模様編み(ジャカード)のみが可能となっています。

また、度目と呼ばれる、編み目の大きさ(緩さやきつさ)を決めるダイヤルはありません。(家庭用編み機の中央についている数字のダイヤル)
このダイヤルがあると、1台で細い糸から太い糸まで、幅広い種類の風合いを表現できます。同じ糸でも度目0と度目10では風合いにかなりの差を出すことができます。しかし、あむかわアミーナでは度目の調整ができず、風合いの表現が一定になり、使用できる糸の太さも限定してより簡単に出来るようにしているようです。

キャリッジを本体に取り付けるときには、ピンク色の歯車が針板の下にくるようにセットしてください。ここがしっかりはまっていないとキャリッジを動かした際にうまく編めず、針が曲がったり折れたりする原因になります。

メリヤス針の違い


<あむかわアミーナ、針>

<家庭用編み機、針>

針数はあむかわアミーナが20本、家庭用編み機の細機は200本、太機は114本。針の太さは太機とほぼ同じですがほんの少しだけ小さく、針の間隔は3ミリほど広めのつくりになっています。
5本おきに色がピンクに変わっているのは、数えやすく工夫がなされていますね。

針位置の表記の違い


<あむかわアミーナ、針位置の表記>

<家庭用編み機、針位置の表記>
家庭用編み機は「A、B、C、D」と針の位置表記がされていますが、あむかわアミーナでは「やすむ、あむ、イラストあみ(あみはじめ)」と表記されています。


家庭用編み機とあむかわアミーナ針の最大の違いが針の交換ができないことです。
家庭用編み機では抑え棒を外すことで、針を取り外すことが可能で針が曲がったり折れてしまった場合に交換ができるような構造になっています。また別売りで針も売っています。

テンションダイヤルの違い



<あむかわアミーナ、テンション>


<家庭用編み機、テンション>
編み機は糸の素材や種類によって糸のテンションを変え糸の送りを滑らかにして編めるような構造になっています。手編みでいう左手のテンションの調節でとても重要な部分です。
家庭用編み機ではテンション調節で糸を送る強さに変化を持たせることで、さまざまな糸を扱えるようになっています。

あむかわアミーナでは簡易的に作ってあるためテンションの調節ができません。編み進める際に緩んだり引っかかったりしないように注意が必要です。取扱説明書にある通りに糸をかけ、ピンと張った状態にしてから編み始めること、玉巻きした糸を使うとき中心から糸をとりますが、糸が玉巻きした圧力で引っ張りづらくなってしまっていないか注意が必要となります。

道具の違い


<あむかわアミーナ、タッピとウツシ>


<家庭用編み機、タッピ>

<家庭用編み機、ウツシ>

目落ちした際に編み目を拾い編みなおすことができるタッピ(竜飛)、交差柄など目を移す際に使用するウツシ(ウッシとも呼ばれる)。あむかわアミーナの付属品はこれらの機能が一つになり、グリップもついて握りやすくなっています。タッピは編み機本体の針と同じ、ベラ針の構造になっています。なかなか便利な代物なので、次回の実践編でも活用法をご紹介しますね。


<あむかわアミーナ、おもり>

<家庭用編み機、おもり>

編地に引っ掛けて、下へ引っ張ることでスムーズに編み進める役割を果たします。両端は目落ちや緩むリスクが高いので、端っこにおもりを掛けますが、それだけでは中央が緩んでしまいます。1段編むごとにしっかりと編地を下へ引っ張ると、均一でトラブルも少なく編み進むことができます。
あむかわアミーナのおもりにはスイッチがあり、通常時は針が出ない安全設計になっているのでお子さんでも安心です。でも、怪我をしないように気をつけてください!


<あむかわアミーナ、イラストシート>


<家庭用編み機、パンチカード>

名称が異なりますが、同じ役割を果たします。あむかわアミーナでは配色模様(ジャカード)を表現する場合に使用します。リボンやイチゴ、ネコなどのかわいらしいモチーフのイラストが15枚入っています。赤と青のガイドに沿って針を手動でセットして、1段ずつ編み進めていきます。詳細は実践編で改めて書いていきますね。
家庭用編み機ではパンチカードと呼び、その名の通り、パンチングしてシートに穴を開けることで、オリジナルの模様や柄を編むことができます。
レース編みやタック、すべり目などと併用もできるので、同じパンチカードでもさまざまな編地がつくれます。

編み機の構造の比較

普通の家庭用編み機は定価は10万円以上、また同じようなプラスチック製のドレストレインの編み機は3万円ほどします。それに比べあむかわアミーナは1万円ほどで買えるのでかなりシンプルな構造になっているといえます。
また、大人が使う編み機ではなく対象年齢をぐっと下げたことで従来の家庭用編みにはない軽さとポップな色合いが目を引くデザインになっています。
あとはどのくらいのことが出来て、どうやったら楽しめるのかというのは次回のあむかわアミーナをもっと楽しむ実践編として実際に動かしてみてのレビューや、取扱説明書には書いていない編み機のテクニックや裏技をたくさんご紹介します。