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ブラザー社の幻の編み機 CK-35に出会う

「 家庭用編み機の歴史とこれから 」という記事 を書いて3年が経ち、久しぶりの投稿となりました。宮田 明日鹿です。

その記事の中で、日本には存在しないかもしれないとお伝えしていた機械ですが、なんと!日本で持っている方からご連絡を頂き、生存確認をしてきました!
今回は そんな幻の編み機、CK-35に出会うまでのお話をお伝えしていきます。

*CK-35とは、1990年頃にブラザー社が 家庭用ではなく、アパレルに進出するために作ったといわれている機械です。主にリブ編みやダブルジャカードが編め、両サイドに6色カラーチェンジャー、キャリッジが自動で動くモーター付きの電子編み機です。

CK-35との出会い

2013年に私は家庭用編み機の面白さにのめりこみ、ドイツを拠点にしながら編み物の旅をしていました。
その時にお世話になったビクトリアが運営する通称 「ETIB」 (Electronic + Textile Institute Berlin )にCK-35が2台あり、そこではじめてこの機械の存在を知りました。当時は機械を組み立てはじめたところだったので、動く姿は実際にはみることができませんでした。

それから帰国し、ブラザー社は日本の会社だし絶対日本にもあるはず!と思い、CK-35の情報を求め編み機の修理をいつもお願いしている方に探してもらったのですが、見つかりませんでした。
調べていくと、どうやら海外向けに作った機械で 生産台数も100台?ほど。あまり多くは生産されていないということを知りました。

それから6年経ち、今年のお正月明けにCK-35を持っている方から「あなたのことをネットで見つけ連絡しました。CK-35に興味があれば連絡ください」とメールが来たのです。
なんということ! もう日本にはないと完全に諦めていたから、不意打ちの連絡に心がざわざわして急いで返信をしました。
すぐに動ける状態ではなかったので、まずはCK-35をどう使っていたのかをメールで聞いてみました。

その方は、1990年に ひょんなことからCK-35を使う仕事につき、それから95年に自らのアトリエを立ち上げ、同時にCK-35を2台引き取ることに。そして編地を反物のように編んではセーターやジャケットなどを仕立て、1点物のニットを作って展示販売を行ってたそうです。
3年ほど前にアトリエを閉めてから、1台は友人へ。もう1台は自宅に持ち帰り、今は稼働していない状態でした。アトリエを引き上げる際に処分を考えましたが、これだけは30年使ってきた大事な機械ということで捨てられず、家に保管していたところに 宮田のブログと、knittingbird の記事に出会い、連絡をくださいました。

数年前の記事やブログですが、ネットで検索すればすぐに探し当てられる編み機のマニアックさよ!思わずガッツポーズ。
こうして幻のCK-35に日本で出会えることになったのだから、気になることや知りたいことを発信して良かった、と つくづく思いました。ドイツでは動かす前の機械自体は見ていたのですが、やっと、やっと、動いている姿を目にすることができました。

ついに対面!使い方や特徴は?

CK-35は家庭用編み機の3倍くらいの場所を必要とする大きさです。

組み立て前のパーツや部品たち。編み機本体以外にもなにやらたくさん!
編み機の針数は200本と見慣れたものと同じですが、モーターやカラーチェンジャーがある分一般的な家庭用編み機よりも縦にも横にも幅があります。ネジで固定しているだけなので取り外しができ、移動する際はもう少しコンパクトにはなります。

高さ2.5m(土台から、テンションの高さまで) 横幅2m, 奥行1.5m(糸を置いた位置を含めて) 重さは電子編み機が10kg前後なので、土台含めると20㎏?くらいと推測されます。

さてお次に気になるのが、柄の入力方法。当時は2タイプあったそうです。
1つ目は、ブラウン管テレビに専用の機器「ニットキャンバス」をつなぎ、テレビ画面を見ながら柄を操作して作っていきます。作った柄はカセットに保存させて、それを編み機にさして柄を編んでいく方法。発売が1990年頃なので当時の手法ですが、現在もブラウン管テレビがあれば出来る方法です。

実際に柄を作ってみているところ。手前のニットキャンバスで操作しながら、編みたい色や柄をドット絵のように配置していきます。1段に最大6色まで使用できます。

2つ目はパソコンに柄をスキャンしてフロッピーディスクに入れて柄を読み込む方法。
ええ?なんと!? パソコンに柄をスキャン?大柄を編む方法が手入力以外にあったのかー!と驚きました。
スキャンする方法は、まさに今 私が家庭用電子編み機を改造して自在に大柄を編んでいるのと同じ感覚だったのです。
しかしこちらは、フロッピーを読み込むためのFB100という機械が必要。ですが既に3台もだめになってしまい、代用品もないため今は出来ないそうです。スキャンできた時は大柄を自在に編めて楽しかったと、作品を見ながら話してくださいました。

機械には寿命があり、よりアナログな1つ目の方法がかろうじて残っているというわけです。なので、改造されている私の手法をみて新たな可能性を感じてくれ、連絡をくれたのだそう。

そして、当時編んでいたという作品の写真と、実物を見せてくださいました。

6色まで使える機械ですが、3色使いをメインにしていたとのこと。6色だと機械の動きが複雑になってしまうので、効率がよい3色で作ることが多かったそうです。生地の厚みもちょうどよかったと教えてくれました。一般的な家庭用編み機でできる2色使いとはまた違って、可能性がぐんと広がるのがわかります。

インタビュー

CK-35の持ち主に、気になるあれこれを伺いました。

宮:なぜ、CK-35を使うことになったのですか。それまでの経歴なども気になります。

「機械編みの講師の免許を取得し、それまでは平編みが編める機械をメインに使っていました。あるとき知人を通じてCK-35を導入する会社から声がかかり、それからリブ機でジャカードを編むようになりました。」

宮:CK-35の使い方はどこで習いましたか?

「ブラザー社に1泊2日で習いに行って、その後説明書を見ながら習得していきました。メンテナンスも説明書を見ながら独学で習得しました。」

宮:習いに行ったのが1泊2日!? そんなに短い期間で大丈夫でしたか?

「使いこなすまでは機械に遊ばれることが多かったけど、使っていけばなんとかなります。」
宮:それでも相当苦労があったと思いますが、、私も1泊2日で習いにいきたいです!

ところで、CK-35は日本にはもうないのではないかと思っていたのですが、他にも使われていた場所などご存知ですか?
「たしか北海道や山口にも持っている方がいたような… 歌手の松尾和子さん* が買ったらしいと聞いたことがありますよ」

宮:北海道にまで!でも今はもうほとんど現存していないんですよね。このような貴重な機械の生存確認が出来ただけでも嬉しいです。引き継いで作品を作っていきたいです。

家庭用編み機を使っている人は今でも世界中にいて、CK-35もロシアやドイツなどで使っている人がいるのは確認ができています。日本からも発信していきたいと思います。今日は本当にありあがとうございました!

* 私は松尾さんという方を知らなかったのですが後日調べてみたら、こんな本が出ていました。「松尾和子の編物がやめられない―歌と機械編の365日」
内容が気になってしまい、Amazonでみたらあったので買いました。

出会いの1日を終えて

気づいたら日も暮れはじめ、今後のCK-35という機械の可能性や出来そうなことを話したりしていたらあっという間に時間が経ってしまいました。
お話を伺い、30年使い続けてきた思いを感じ取ることが出来た貴重な時間となりました。
最初は引き継ぐにも場所がないなと、迷っていたのですが、直接お話ししているうちに私はこの機械を引き継ぐ使命感のようなものが湧いてきました。ちょうど、この大きな機械を置ける場所に引っ越すことになったというタイミングの良さもあって背中を押され、決心をすることができました。

組み立て、操作方法を習うことになったので、次回は実際に動く姿や、実験してみたこと、改造をどうやってやるのか、などをお伝えできたらと思います。楽しみにしていてください。

ニットテキスタイルアーティスト/家庭用編み機研究家
宮田 明日鹿

宮田 明日鹿HPはこちら

編集:Knittingbird/坂田

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