ニッティングバード

ニット専門のウェブマガジン

コロナ禍で変わったニット工場。ニットマスクは今後どうなる?

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)感染拡大に伴い不織布マスクが品薄になり、政府が一人当たり2枚の布マスクが配布決定しました。

それと同時に手芸業界では手作りで布マスクをつくりはじめ、アパレル業界ではブランドや縫製工場もオリジナルのマスクを作り販売を始めています。

そんな中「ニット業界」ではこんなことがおこっています。

工業用編み機で有名な「島精機製作所」がホールガーメントで編めるニットマスクの編成データーを有料配布を始めました。頃を同じくしてドイツの編み機製造メーカー「STOLL」は無料配布を行っています。

同時に、緊急事態宣言に伴い縫製工場と同じでアパレルメーカーからの受注やキャンセルが多くなり、機械の可動時間が空いている工場も増え同時多発的に「マスク」をつくる環境が出来ました。

今回ニッティングバードではファッション性だけでなく一から3Dニットの編み立てを行ったり抗菌や防臭など機能性に着目して「ニット製のマスク」の可能性を見出す、とびっきりの「ニットマスク」をご紹介致します。

佐藤繊維-和紙の高機能立体ニットマスク。 2つの抗菌作用。

山形から世界に発信する「佐藤繊維」。糸では世界最細のモヘヤ糸など国内外のアパレルメーカーの顧客をたくさん抱えています。オリジナルブランドとしてはM&KYOKOや991などが一般の消費者には身近です。

こだわりの繊維
ほとんどのマスクが「綿素材」ですが、雑菌が繁殖しづらく吸水・速乾性を持つ繊維として、ストレッチ性のあるポリエステルを包んだ和紙糸を用いています。従来の製法等は異なるやら若い和紙糸を使用しているため、吸水・速乾だけでなく、肌触りや、シワになりにくさ、毛玉の出来にくさと「シルクプロテイン加工」による保湿効果もあります。

さらには強力な抗菌・防臭作用のある「銅」を使った、佐藤繊維独自の銅シートを開発。

和紙マスクのポケット部分に差し込まれたこの銅シートは銅化合物のコーティングを施した糸を使用しています。 このコーティングに用いられた銅化合物は細菌類を死滅させる性質を持っており、その優れた抗菌作用が評価される銅は病棟の床、洗面台やドアノブ等にも採用されています。また菌の繁殖を食い止めることでイヤな匂いの発生を防ぐ防臭効果も持ち合わせています。

編みのこだわり
今回のマスクは3Dニットマスクとして文句の言いようないくらい、編みだけで立体的でフィット感が表現し、着用時のごわつきも減らしています。隙間がなく、顔の形状に編むことで、顔や口の動きを妨げない仕様になっています。
また耳に掛けるニットテープは、耳に掛かる負荷の比重も弱くなるよう設計されている為、長時間使用時の痛みやストレスも軽減しています。

佐藤繊維は991の服に象徴されるようなホールガーメント編機を使用した人体構造、人体可動域に対するニットウェアの研究開発を続けており、ストレスフリーな可動域を持つ立体的なニット製スポーツウェアの製造を手掛けています。

今回の「ニットマスク」もホールガーメント編機を使った単なる「無縫製」ではなく、研究開発で培った佐藤繊維でしかできない技術の賜物であると言えます。

「編み立て」と「素材」どちらも凝りに凝った佐藤繊維の「ニットマスク」。どの工場もブランドも真似できないものがメイドイン山形の佐藤繊維から作り出されています。

佐藤繊維のニットマスクはこちらから→Sato Seni-佐藤繊維-が和紙の糸で編み上げた抗菌える和紙ニットマスク

長谷川商店-3D立体シルクマスク


手芸好きではお馴染みのシルクの長谷川。

アパレルでは海外ラグジュアリーブランドにシルク糸を提供していることで知っている人も多い。1年以上前からシルク製ニットマスクの開発と販売に力をいれています。

こだわりの繊維

長谷川商店さんらしくシルクにこだわりをもってニットマスクを作っています。

「シルク」は人間の肌成分に最も近い天然の保湿成分でできているのでマスクの素材としてうってつけな原料のひとつです。

シルクは空気を多く含む繊維構造で保湿性に優れ、外気温や湿度に影響されにくいので一年中気持ちよく装着することが出来ます。肌や喉の潤いアップ、乾燥対策、紫外線対策に効果的です。

編みのこだわり
ホールガーメントで立体的に編み上げ、上下で異なる形状で、顔の大きさや鼻の高さに合わせて着用していただけます。編みながら形を作ることによって無縫製で布マスクにはないシルエットとフィット感を再現しています。

女性には嬉しい機能として、化粧うつりや皮脂の付着を防ぐ効果として、マスクの内側に使い捨てタイプのインナークロスを同時に使えます。
インナークロスはシルク100%とコットン100%二種類あって選べるのも嬉しい。

裏側には表と裏を間違えないように裏の文字が書いてあるのも素敵。
また、サイズSの女性タイプ以外にもはMサイズ男性用もあります。

花粉ブロック率99.6%のため、花粉症の方にもおすすめです。
(一般財団法人 カケンテストセンター実施 一般社団法人 日本衛生材料工業連合会 全国マスク工業会 規定試験方法での試験結果です。)

現在では、抗菌防臭機能に大変優れ、とても軽いタッチの素材「銀Agイオン糸」を使った夏用のニットマスク等も追加されています。

長谷川商店のニットマスクはこちらから→3D 立体シルクマスク S (女性サイズ)〚MA1112〛

ミツフジ株式会社-高機能衛生マスク「100回洗える夏マスク/hamon AGマスク」-

1956年に創業したミツフジは西陣織の帯を作る会社からスタートし、「高導電性繊維」の開発などもおこない、近年では銀繊維を使用したスマートウェアから独自技術で正確な生体データを取得、解析し、様々な社会課題の解決に挑戦しています。
そんな、アパレルメーカーや工場とは違った視点で研究開発や製造を行う「ミツフジ」が長年培った独自技術で開発した銀めっき繊維「AGposs®(エージーポス)」とウェアラブル用に開発した医療用繊維の2つの糸を使用し、「hamon AG マスク」をつくりました。

また、3月17日より医療用繊維を使用した高機能衛生マスク「hamon AG マスク TM」はさらなる進化を遂げその後、「100回洗える夏マスク humor AG マスク」として生まれ変わりました。

こだわりの繊維

マスクのメイン素材には毛羽立ちを抑える長繊維のポリエステル・ウレタン糸を使用しています。この糸は医療用ウェアブル製品に使っていて、制菌性を持つだけでなく伸縮性もあり着用性は抜群です。

また、以前は銀繊維シートを入れるためのマスクポケットが内側にあるため2重構造でしたが、夏マスク用に新開発した銀めっき繊維配合の専用糸 「AG fit AQUA」をマスク本体に使用。1 層マスクの薄さで接触冷感、抗菌防臭効果を実現しました。

本体に57%使われている「AGposs®」は表面に銀をめっきした独自の繊維で、銀練り込み繊維やフィルム状の銀糸とは違い「銀量」が圧倒的に多いため導電性に優れています。この特殊繊維はマスクにあって欲しい抗菌・防臭の機能だけでなく、電磁波シールド、保温、断熱、制電効果などもあるという素晴らしい機能繊維です。

編みのこだわり

福島県川俣町の自社工場でホールガーメントによる編み立てを行っています。ウェアラブル繊維テクノロジーを使った独自のフィット感だけでなく、立体的なシルエットで、耳掛け部分をさらに改良を加えてフィット感をそのままなのに残したまま、耳の引っ張り感をなくしています。
特に女性には嬉しい点は、特殊糸の配合とデザインによりメイク移りが目立ちにくく、肌の露出部分を少なくして日焼けがしにくいデザインにも変更されています。

柔らかい肌触りで、洗濯耐久性が従来の約50回から倍の100回まで伸ばしています。(家庭用洗濯機を利用した場合)

衛生的で高機能な繊維の開発だけでなく、今まで培ってきた繊維の技術、自社工場にある機会、資材を生かして社会課題の解決を目指すべく「ニットマスク」を作るアプローチは、他企業には真似できないものあります。また、たった二ヶ月で夏用マスクにするために新開発の繊維を使用し、顧客の要望を形にする技術力と開発スピードの速さは素晴らしいとしか言いようがりません。

福島県川俣町の自社工場は、震災・産業復興を目的として作られただけでなく、川俣町、行政、企業、大学との共同開発を行っているのミツフジの企業としての在り方は「人と社会」「社会と企業」の結びつきの重要性を改めて実感しました。
なお、「hamon AGマスク」および「100回洗える夏マスク/hamon AGマスク」はミツフジ株式会社が商標登録出願中。

ミツフジのニットマスクはこちらから→100回洗える夏マスク/hamon AGマスク

ニットマスクの今後

マスク不足が深刻になったこと、緊急事態宣言によりメーカーの受注が減少したこと、島精機製作所が編成データーの配布を始めたことなどが重なり「普段はメーカーの生産だけを請け負う工場」も「オリジナル」のマスクとして製造・販売を始めています。

2020年5月現在販売をしている工場のリサーチを行いました。もともとニット業界の文化的認知工場や仕事にする人を一人でも増やしたいという思い「ニット工場」の取材から始まったニッティングバードの「ウェブマガジン」ですが、この「ニットマスク」のことも情報が乱立している中、今後のニット業界を盛り上げていく上で言及する必要があると思い今回の記事をつくりました。

「ニットマスク」はファクトリーブランドとしてオリジナルのニット製品を小売しないところまで製造・販売しているのはとても興味深いことです。

普段から製造コストにシビアな工場は量産に効率化を測り比較的安価なマスクを製造していたり、以前から研究開発に力を入れている工場は抗菌素材などの選定や、ホールガーメントによる立体的な構造やシートが挟めるようにするなど、衛生面に配慮をし、そしてオリジナリティー溢れるマスクを提案するなど、工場が大切にしている姿勢が出ています。

工業用編み機で、一から「ニットマスク」を作るというのは「セーター」を当たり前に作っている工場からすると、とても異質で難しいものなのですが、

「ニットマスク」を作れた背景には、普段から培ってきた「技術力」の賜物であり、そこに研究開発や糸の生産もできる工場であれば、より高品質で付加価値の高いものを提案することが出来ます。

「ニット」というのは、カットをして縫製する布の生地とは違い、糸一本から調理できるので「テキスタイルデザイン」、「シルエット構築」が一体化し、そして素材ロスが少なく済むということ、リードタイムが速いというのはアパレルの製造の中で強いメリットがあり、また他分野の商品開発にも技術を応用しやすいのも大きな特徴だと思います。

今後「マスク」が世界中の生活様式に入り込んでくることが予想され、ファッションブランドが洋服のアイテムの一つとして発表したり、日本製のマスクが欲しいという海外の需要も増えていく可能性があります。

ニット工場が手がける「ニットマスク」は、技術革新、素材開発などプロダクトとしての可能性を大いに秘めており、日本製の安心・安全な高機能繊維(糸)➕技術力が単に合わさっただけでなく、時代に即したファッション性や最新のテクノロジーなども考え製造している工場は、「ニットプロダクト」として他分野へ活動の幅を広げていくことになるでしょう。

最後に余談ですが、ニットマスクはスポーツとの相性が抜群なので、夏の気温や湿度にも対応して苦しくないものや、ランニング中などの運動中にも使用可能など、大好きなスポーツの分野でよりニットの技術力が生かされていくことを楽しみにしています。

執筆者Knittingbird 田沼


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