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編み師203gowロングインタビュー

コロナ禍になってからリモートが作業が多くなり、これを機にニッティングバードが以前やっていたようなニット関係者に会いに行ったり、工場に行ったりということをオンラインでやりはじめました。

ニッティングバードらしいインタビュー内容しようと思い編み物(ニット)に携わる「仕事」にフォーカスしています。
細分化されている業界の中で、「専門学校」に行ってもすべての仕事を知ることができません。

その仕事の内容や、仕組み、やり方、稼ぎ方など、他の媒体ではなかなか聞けないことを、あなたに変わってニッティングバード の田沼が取材します。
ニット業界を盛り上げ、仕事にしたいと思うきっかけのひとつにしてもらうために、様々な仕事を掘り下げていきます。

ニットに携わるデザイナー、OEM・ODM、作家、アーティスト、経営者、ライター、ヤーンアドバイザー、プログラマー、手芸店員、撚糸屋、紡績屋などあなたが知りたい「編み物(ニット)」の仕事をしている人を追っていきます。

動画でも見ることができますが。文字起こしもしましたので。ご自由にご覧ください。




編み師203gowとは

編み師203go自己紹介〜1分28秒

knittingbird(以下K)>編み師203gowさんについて簡単に自己紹介お願いしてもよろしいですか?

編み師203gow>自己紹介?自己紹介の文章あるよ。風変わりな編み物作品をつくっている203gowと申します。

203>世の中すべて編み物に見える。
あと一番大きいので8m、小物は米粒大から、大きいのは最高8mのダイオウイカかな。
だから立体物を作ってますね。
そのセーターとかマフラーとかそういうアパレル系って言ったらいいのかな、服飾系って言ったらいいのかな、そういうお仕事よりは装飾。百貨店だったり美術館だったりそういう、展示物を編み物で立体物を作ってる。だから造形作家みたいな。

K>はい。あの一番最初に戻るんですけど編み師って言葉って203gowさんが作ったんですよね?

203>そうそう。

K>それは何か由来とか付けた理由とかあったりするんですか?

203>由来もあったけれど、どんどんどんどん巧みな要素が増えてくると思うんですよ。やっていくうちにね。
そういう意味で、上手いこと言おうとしてずっと言葉が見つからないってやつですね。

K>あーなるほど。だから固有名詞として作ってみたのが編み師という、

203>そうそう。ずっとずーっと続けられる名前、という感じかな。

K>いいですよね。やっぱりいまどきデザイナーがデザイナーだけやってるっていうわけじゃないじゃないですか。

203>そうそう。だからね、いろんな要素をちょっと含ませたいなっていうのがあって、“師”っていう風に付けたんですよね。

K>かっこいいと思います。

203>でもだいぶ、ずっと大昔の話だよ。

K>今ってちなみに編み物をこういう立体表現として発表し始めて、活動的にはどのくらいやられてるんですか?

203>もう15年以上やってるかな。企業さんとやっていることね。個人的に何あの作品を作って、ネットでアップしたりしているのはその前からやってましたけど、企業を通したりとか、要はお金が発生するってやつ?そういうのはもう15年以上やっていますね。

203gowさんの作品

K>今もしよかったら、なんか作品とか見せていただけます?

203>毛糸だまの一番最新の作品があるので。毛糸だま連載してるんですよ、今ね。

K>そうですよね。

203>作ったのがね、分かるかな。

K>ああ、タッピだ!タッピ返しできる!
めちゃくちゃ面白いですね。あー!重りだ!
それめちゃくちゃ編み機好きに堪らないですね。

203>でしょー?これがね5月5日発売の、ヴォーグ社から出てる毛糸だま。

K>毛糸だまさんの最新刊。

203>もうずっと連載、何年やってるんだろ、6年…10年まではいかないですけど、結構長いこと地味~に続けてる作品ですね。

K>なんかあのー、連載されてる編みつぶしあるじゃないですか。
僕好きでいつも見させていただいてるんですけど。

203>あれね。

K>はい。

203>割と好きなんですけど。

K>作家さんとかでもやっぱりなんか、身近にあるモチーフを形にして編み物に置き換えるってあると思うんですけど、203gowさんの視点ってやっぱりちょっと違くて。

203>ネタ探すの大変なんですよ。

K>あ、そうなんですね。

203>マッチ。

K>ははは。いいですね(笑)

編み師 203gow ニッティングバード  手編み 棒針 かぎ針 アーティスト 千代田区 編み機 家庭用編み機 マッチ

203>紙マッチ。これでも反対に映っちゃうね。

K>いや、大丈夫です。可愛いです。

203>ロゴもデザインしたりだとか…。203>だから編み物なんてね。がっちがち本物ってよりも半分リアルな感じのほうが笑えるなっていう。半分本物っぽくて、半分編み物で、やわらか~い感じが面白いかなって思ってますね。

K>基本こういう小さい造形物を作るときは棒針じゃなくて、やっぱりかぎ針で?

203>かぎのほうがカチっとなりますね。棒でも出来なくはないんだけれど、やっぱり細かな作業になると、かぎのほうがやりやすいかな。棒だとよりあまくなるんじゃないかな。

K>でも棒の場合は立体にするってなるとやっぱり、中綿入れたりだとかしたりしてるんですか?

203>そうそう。逆に大きなものだと、棒針とか編み機とかメリヤスのほうが、いいんじゃないかなと思いますね。

K>後ろにある、クラゲとかのやつとかは基本棒針でっていう感じなんですよね。

203>そうですね。そうそうそう。この、このへんね。棒針。これかぎ針。いろいろ出来ますけど。だからジャンル特に問わない。編み物の場合も割とジャンルあるじゃないですか。なに好き、かに好き…

K>そうですよね。モチーフをなにに決めてみたいな。

203>私もだって言えば造形物イコール編みぐるみみたいな、でっかい編みぐるみ作っていますみたいな、感じに。たまに編みぐるみ作家さんですよね。って言われる場合もあるので、まあ間違ってはいないですけど。

K>でも、203gowさんの場合は単体の物というよりかは、やっぱり空間として、複数で組み合わせたりとか見せ方とか置き方だけでもそこまでこだわって一つのものを作っているということですもんね。

203>そうそう。そうです。こういう風に見えるのかっていうのを見てますね。占拠する感じ?編み物で。物量は確かに多いので、毎回展示はね。見ごたえはあるんじゃないかなと。大体お子さん連れの親子が来たときは子供が発狂するっていう。作品と色味と、あとは何でしょうかね。フワフワしてるものがたくさんあるから?そういうのはありますね。

K>うんうん。いいですね。
先ほどこのネタを探しているって言いましたけど、作りたいなぁとか思うきっかけとか、ここからこうしようとかいうのは何かあったりするんですか?

203>日常生活のものをこう切り取る…
だいぶ前にweb連載、全然今ヴォーグさんと関係ないところで始めてたんですよ。
なんか一口コラムみたいな感じで。でそこでなんか編み物で面白いコラムみたいのを書いてください見たいこと言われたときに、じゃあなんか日常生活のものを編んで、じゃあそれに対する文章でやります。って言ったのが始まり。2009年から始めたんですけど。

K>なんか文章を見てても文才ある人だなって。

203>あのー、読んでくれないから。やっぱ写真がインパクトありますよね。絵で見て分かるというのが一番で、だからそれがちょっと面白いちょっとクスッと笑えるところとかあったり、それにプラス文章もついてるんだけど。読んでくれてる方がどれだけいらっしゃるのかちょっと分からないですけど。

203>文章もね、大変なんですよね。考えるのがね。どう落とすのか、どう納得させるのか、って。企業のプレゼンでもそうですけど、私の手から離れてしまうので、私の思いをどれだけ伝えられるかっていうのと、あとは趣旨。どうしたいのかっていうのを明確にして、なるべく短い言葉で提出しなきゃいけないので、ずらずら別紙に20枚も30枚も書けないじゃないですか。

K>書けないですね。

203>だからこういうことをやりたいという絵と、向こうが提示しているコンセプトにどこまで添わせるのか、それプラス自分の中にまた更に足して、それをキックバックするっていうか。
それで、担当者は私のこと知っているんですけど、会社の中でも私のことを知らない人が、要は向こうの会議で決めるわけだから、それを見て、ちゃんと判断できるような企画とか文書とか作らなきゃいけないので。

K>なんか聞いてて、あの203gowさんごめんなさい。会社員じゃないのに会社員以上に会社員の動きしてますよね(笑)

203>まあだって、昔、でもOLやってたこともありますよ。

K>あ、そうなんですね。
203>少しね。でね、企画立てたりなんなりするのが好きなので、昔とある会社の企画部にいたんですよね。

K>そうなんですね。それは、どういった企画というか。

203>うーんとね、いろいろですよ。イベントだったり、人だったり…レストランだったりとか、いろいろな小さな企画から大きな企画まで。
あとはそれで写真撮りとかもいろいろしたり。写真も好きだし、そういう企画を立てるのも好きだし、天職かなと思ってたんですけどね。

K>今の編みつぶしとかの写真は自分で撮られてるんですか?

203>そうです、そうです。全部自分。写真も全部自分で撮ってる。

K>めちゃくちゃうまいなあと思って。

203>ちょっと素人臭いのがいいんじゃないかなあっていう…

K>いやそれわざとやってるんですよね?(笑)

203>いやいや違う(笑)ど素人だからしょうがない。これ以上越えられないんですよ?

K>いやなんかやっぱこう、プロっぽいのでも~ありますけど、プロになる時にちょっと個性って削れちゃう。

203>そうなんです。プロはプロなりに撮り方があるので。プロっぽいなあっていうのは、やっぱり光の具合がプロだと上手なんですけど、うちの場合はなるべく自然光。編み物の場合は自然の光が、太陽光が一番きれいに映るので日のあるうちに撮るっていう。

K>バランスがすごいいいなって思うんですよね。やっぱり暮らしとか趣味とかってそっちに繋がっていると思うので、カチって撮るよりは、ちょっと温かみのある感じで…

203>やっぱり自分で見て、作品の良い顔っていうか場所っていうのは自分しか分からないので。自分のものをよく見せるには自分で撮るのが一番良いですね。カメラマンさんに言うと、あーでもないこーでもないって指示しなければいけなくて、指示もできなくはないですけど、面倒くさいから自分で撮った方が良いなっていう。

K>なんか203gowさんと喋っていると、編み師イコールちょっとアーティストにも似つかわしいっていう仕事だって言ってたじゃないですかさっき。僕の周りにもアートの関係の友達いるんですけど。でも大概がやっぱりプレゼンが出来なかったりとか本当に絵描くのが好きとか、一つのこと突き詰めてる人が多くて。

203>マルチ芸人みたいなものですもん。

K>うん、バランスめっちゃ良いし、ちゃんと全部できるからこそ、最終こうデベロップしたものが、ちゃんとした作品、見てる人だったりとか、読んでる人に伝わるんだなって今すごい思って。

203>でもね、なかなかね、うまく話が合えばいいんですけどね。私も個性がある作品なので、なんでも転用できるってわけではないんですよね。

企業の仕事について

K>ちなみにその企業とかから来るっていうのは、もちろん種類とかものにはよると思うんですけど、どこまでなんとなくフワッとした感じで来るものなんですか?

203>その企業にもよりますよ。

K>それこそまあ、ホームページ見ててパっと目に付いたのがナイキのあのボールとか靴とかあれはもうドンピシャでそういうのを作って欲しいみたいな感じなんですか?

203>そうそうそうそう。こういう企画があってぜひ起用したいんですけどいかがですかっていう。というお話はいただきましたね。

K>もっと抽象的なこともあるんですよね?場所があってとりあえずニット作品を飾りたくて、

203>そうですそうです。だからギャラリーとか美術館とかだと、ぜひお願いしますって言う。

K>あ~、もうもうなんでもいいけどっていう感じで。

203>うん。なんかご自分のテーマありますかとか、あと海沿いだったら海のテーマにしてみたりとか。
それはその学芸員さんとか、担当者の人たちといろいろお話ししてやりますね。
だから、まったく何もない状態からどうですかっていう、空間空いてるのでどうですかっていう感じですね。

K>基本先に絵を描いて伝えることから始めるってさっきおっしゃっていたと思うんですけど、
となると、やっぱり毛糸っていうのは後なんですよね?

203>そうそう。まず絵描くでしょ?絵描いて交渉しつつ始めなきゃ間に合わないので、納期が短いでしょ?企業間だとね。
だから、お話しつつある程度頭の中では決めていて、何をどうするかっていうのは決めていかなきゃいけないんですよ。それで、それと同時に立体物なので、まず立体物の中身を作んなきゃいけないわけなんですよ。編みで覆うための覆う中身。クラゲだったらクラゲの中身を作んなきゃいけないんですよね。まずね。それから編み物で、編み物一番最後なんですよね。一番ハードな仕事が一番最後に残るっていうね。すごい山あり山あり山あってのいつ下るみたいな。ずっと山ばっかりっていう。

K>そう考えると、編みぐるみ作家って普通に逆じゃないですか。多分側から作って綿詰めて…

203>まあまあ、そういう場合もありますけど、2mとか3mとか大きいものになると、編み物だと耐えられないので、なるべく張れるように中にウレタン入れたりだとか、いろんなものを入れたりして形を決めなきゃいけない。

資材や毛糸の調達について

K>ちなみにそういう資材、プラス毛糸とかっていうのはよく買いに行ったりとかしているところはあったりするんですか?

203>資材はねネットで買うのと、あとはホームセンター。私の心のよりどころのホームセンター。
あとね、行きつけの毛糸屋さんは、キロ単位で買うので問屋に行きますね。おなじみの問屋さんがあるので、そこで買いますね。

K>それはそのコーンとかじゃなくて、基本玉になってる結構手編みの太い糸が中心なんですか?

203>あと細いのとか、あとちょっと飾りに使いたいなっていうのはメーカーさんの糸。玉の状態のやつね。その辺はバランスよくやっています。だからもう、コーンとか、カセの状態、もう巻くのも大変なので。出来れば巻いてもらえるところの方が嬉しいなっていう。

K>でもその最後に側だけ作るってなると、糸の量を把握するのも結構難しいですよね?

203>そう~、その辺はまあ、塩梅を見て。いろいろ色の組み合わせはするので。おんなじ色で全部っていうわけじゃないので。だから、まあまあうまいこといくように、編みますね。
あとはね、一本で編むよりは引き揃えたもののほうが多いですね。

K>うんうん。それはやっぱり単色でありのままの色というか、混ぜてやっぱり絵具的な感覚で。

203>そうですね。その場所場所で映える色が違ったりするので、混ぜてあると、意外に白が際立ってたりとか、意外に混ぜたらブルーの方が際立ってみたりとか、あとはオリジナルな糸が出来るのでそれが一番は一番なんですけどね。私の色が出せるっていうのはありますね。
あとはね、こんなに編み物が長続きするとは思っていませんね。まさか自分で始めたはいいけど、まさかこういうことになるとは思っていないっていうか。

203>仕事的にも、編み物的にも長く続けられるって。大体飽き性な感じはするんだけれど、飽きずによく…

K>話している感じだとそんな感じがしました。ちょっと飽き性で新しいものが好きなのかなと。それを取り込むのがすごい上手いのかなというのが。

203>そうそう、飽き性なの。飽きずにやれること。編み物でっていうのが一番なんだけれど。

K>そう考えると、やっぱめちゃめちゃ幅が広いってことですよね。表現だったりとか、柔軟性があったりとか。

203>そうね、そうね、そうね。そうそう。だから時代によってどんどんどんどん変わっていくから、なんか新しいこと、面白いことないかなというのは探していますね。今は何が面白いのかっていうのはあんまり分からないんですけど。

K>ちなみに、203gowさんが編み物以外に力を入れたりとか趣味とかテレビだったり動画だったり見ているものって何かあれば教えてほしなって思ったんですけど。

203>力入れてる…ないない、ない。

K>何かないんですか。映画見たり音楽…

203>もう編み物しかない、かな。あとなに…海外の人の作品を見たりとか、あと糸、糸を載せる人もたくさんいるので糸見たりとか。

K>それはネットサーフィンしたりとかですか?

203>そうそうそう。時間あればね。

K>それはラベリーとかじゃなくて?

203>いやラベリー…大昔にやってたけど、やってないな。最近はね。インスタで見たりとかネットで見れる範囲で見てます。
あとは全然関係ない、イラスト見たりとかもしますし、知り合いの展示会にも行ったりとか。編み物じゃなくてイラストだったり、いろいろです。だけど基本的にお仕事に入っちゃうと、結局はお仕事に集中しなきゃいけないので、一か月なら一か月ずっと缶詰めにならなきゃいけないので、その間はそのことしか考えられないので。あと何してるっていったら、何してるんですかね。だからまあ、息抜きも編み物ってやつですよね。要はね、最近とか靴下とか編んだりしてるからね。

K>あー、普通に自分が履く用のですか?

203>そうそうそう、まだ途中のもあるんだけど。やっぱり口でいくらこの色、指し色だからいいよ、こういうことやったらいいよとか、もうちょっと色味を使おうとか言っても、やっぱり言葉だけじゃ足りないんですよね。だから実際に作ってみて、マフラーでもセーターでも、こういう風になりますよって作ってみると、皆あーこういうことが出来るんだっていうのが一目瞭然なので。だから私ももっとスキルアップをしなきゃ。セーターを編めるようにならなきゃいけないっていうね。それで、こういう風に遊べますよっていうのを発信をしていきたいなっていうのはありますけどね。なんか同じ色ばっかりでしょ?

K>まあ、そうですね。

203>デザインとか服飾系の人はおしゃれなのたくさん作っているけど、一般的な人でもうちょっとこう自分の個性入れて遊びましょうって言ってもやっぱり出来ないんですよね。だからその辺の中間ぐらいな感じでいれたらいいなっというのはありますね。

K>それは何かおすすめはあるんですか。
その出来ないというよりは皆多分しっかり作っている。ゲージとか決めてしっかり作ってるんだと思うし、自分がこの色しか似合わない。
この方が無難に合わせられるよねっていうので多分色味とか作ってると思うんですけど。

203>だからそれをほぐしてやりたいなっていうのはありますね。なんでもそうなんですけど、自分でこうロックをかけちゃうっていうか、
こうしなきゃダメ、あーしなきゃダメ、この色しかダメとか、心にロックかけている人がたくさんいるので、そうじゃなくてもうちょっと解放しましょうという。

K>そうですね。僕も多分そっちのロックしてるっていうか、よくまとめようとしちゃう。

203>そうそうこれはね知らないうちにかかってるんですよね。
それが気付けるか気付けないかで全然違うんですよ。他の人の作品みたりとかで気付ける人もいるし気付けない人もいる。
実際教えて、この色入れてって順番ずつやってあげないと分からない人もいるし、だからその人なりのロックの外し方はあるんだけど、何だろうね。ガッチガチにならないようにもっとこう柔らかい気持ちで編めるっていう。

K>それこそそのセーターとか編んでたらたぶん自分に合うのとか誰かに想像してとかあると思うんですけど、身に着けるもの以外で作ったほうが逆にそういうのやりやすいんですかね?

203>まず入りとしては自分用に作ってみるとか、誰か架空の人物もしくは、身近な人物。身近な人物はいらないと言われる可能性もあるので。でも、身近な人物に着せてあげたいなっていうのでデザインしてみるとか。そういうのでもね、始めてもいいと思うんですけどね。

K>ちなみに仕事抱えてる時って、多くてどのくらい、次何を作るっていうのを含めてどのくらい…

203>一番多くて、すごい重なっている時があったよ。終わりかけのと始まりのと途中のとで…6件くらいあったこともあったなあ。

K>それはすごいですね。

203>尾ひれもつけながら合わせるとね。ありましたよ。
まあ展示だと開催してしまえば、あとはワークショップをやったりとか、そこまで大きな役目は無いので、展示する前がちょっと大変なだけなので。その間に仕事は入れられるので、だからまあそういう重なり方はありますよね。

K>今って収入源っていうと悪い言い方かもしれないですけど、稼いでるところって、企業とのタイアップだったりとか、美術館とかにお願いして…?

203>そうですね。そういうのが大きいですね。

K>毛糸だまさんとかの執筆と。

203>そうそうそうそう。連載ね。と、あとはね、今小物を作ったりしているのでグッズをWebショップで売ってたりするので、そういうのもありますね。全国津々浦々…。

K>そうですよね。パターンはフリーなんですよね?

203>うん。パターンっていうか、ほとんどないですよ?

K>実物の作品を売っているだけ。

203>そうそうそうそう。編み図が作れないんですよ。

K>あー自分の感覚では書けるけどっていう。

203>そうそうそうそう。それで、目の増やし方もランダムなんですよね。1目立ち上げて8なら8で、次は16、倍数倍数で増やしていった方がきれいになるじゃないですか。なんだけれど、おんなじところで目を増やすと、そこだけ増やしたっていうポイントが分かるじゃないですか。

K>そうですね。点が入りますもんね。

203>点が入るからね。それが嫌なの。おんなじところに点々点々って繋がってるのが。
だから分散させているわけ。広がるところを。そうすると編み図になりにくいんだよね。
だからその…無駄な努力をしているっていうやつなんだよな。
一般的に編むのとは違う編み方をしている。で、あと印…よっぽど同じものを作らない限りはチェックしないので、何目何目って自分でポイントを付けないので、一発編みなんですよね。だからなかなかこう、編み図に落とし込めないものが多いですね。なんか削がなきゃいけないでしょ?編みやすいようにね。

K>そうですね。まあでもそれはやっぱり、デザイナーみたく量産ありきで作るんじゃなくて、一つの作品として作るやり方であって。

203>でも最近はあんまり言われないですけど、昔ね、編み図下さい、編み図下さいってよく言われましたけどね。作れないんです。って言ったら、どうして作れないんですかみたいなこと言われるんだけど、うーん勉強してないからですかね。みたいなそんなかんじで。

K>でもそれはそれでいろいろな違う仕事の人がやるんでね。編み物をやる人に糸だったりとか編み図提供する人はいるんで。一人の人間が全部やる必要はないですし。それやってると大変になりそうですよね。

203>そうなんだよね。そうすると監修になるわけですよね。削ぎ落さなきゃいけないから。キノコ編む場合だと頭と軸をそれぞれ編んで繋げるっていう方が一般的な考えで編みやすい、簡単なんだけど私の場合だと一気に続けて編みたいの。人筆で編みたい、から余計なことをたくさんしなければいけないので、面倒臭いことをしているっていう。だからそれを編み図にするのが七面倒くさいことをいっぱい箇条書きに書かなきゃいけない。完結ではない。それはそれで面白いのかもしれないですけどね。すごいいっぱいここはこうしてください、あーしてください、ポイントだらけの編み図みたいな。七面倒くさい編み図になるんじゃないですかね。
それか、大きい2mのマンタとか一生のうちに何回作るかっていう話になるので。だからそんなのも残してないし。編み図はね。
あとはね、ニッターさん編み子さんに頼まないんですかって言われるんですよ。おんなじものを編んだりとか、あと仕事を減らすために。私の負担を減らすために、発注かけたらどうですかって言われたりもするんですけど、その指示書が書けないので、指示書を書いている暇があったら、私が作ったほうが早いっていう話になってくるんで。もう堂々巡りですよね。結局一人。孤高の編み師、っていうことになる。もうちょっと上手いことやれば上手い風になるんじゃないかなっていうのはありますけどね。でもうちも得意な分野と得意じゃない分野があるので。

K>ちなみに、なんかコラボしたいとか、あるいは編み物じゃなくてこういうもの作りたいっていうのが、あったりしないんですか?

203>コラボね。コラボも全然私としてはウェルカムなんですけど。作りたい物はね、まあ作品も確かに作りたいですけど、皆やっぱり身に着けたいって言われるんですよね。作品とか美術館で展示していても、なんかやっぱり作品を持って帰りたいと。そうすると、グッズをもうちょっと充実させたいなっていうのはありますね。それで皆こういう展示場行ってきたっていう風に見せたいとか、あとは家に飾りたいとか、そういうのをよく言われたりするので、だから展示以外にも家を飾る何かとか、カバンにつけるものでも何でもいいんですけど、そういうものをもう少し充実させたいなっていうのはありますね。なんかクラゲとか家に吊るしたいですってよく言われるんだよね。

K>これは販売はしてないんですよね?

203>たまーにですね。大きいのはたまに。展示プラスα販売することは…美術館じゃなくてギャラリーとかで売る場合もありますけど。

K>ちなみにこの今まで作ったそういうでかい8mとかのものとかって、どうやって保存しているんですか?

203>家にある分も、家に収納しているのもあるし、あとはそののもありますね。その美術館に収めている場合もある。いろいろ、ですね。

K>でも、もうそうやって十何年と活動してきて、めちゃくちゃたまってますよね。

203>たまってますね。

K>直近で個展みたいなのを開いたのって近々だといつあったとかってあるんですか?

203>島根?が最近かな。違ったかな?島根じゃなかった。鳥羽。鳥羽の海の博物館が一番最終かな。今はもう自由な、フリーな感じですよ(笑)

K>それはあれなんですか?そこの美術館にあった作品を作るってよりかは、集めてとかやってなかったんですか?

203>鳥羽は海女さんを編みましたね。それは、鳥羽の海女さんを編んだので、そのまま収めていますね。いまだに活躍中ですかね。
あとは、少し自分の作品を足し増ししたのと、手持ちにあるのと、その時によりますね。オール新規っていうのはないかもしれないですけど、でもあるかな、まあ大体手持ちにある作品プラスα、新しい物を何点か作って展示するっていうことが多いかな。

編み物のをしたきっかけ

K>ちなみに編み物をやったきっかけとか、それこそさっき自分の作品を売り始めてそこから表現活動としてやるきっかけみたいな、編み師とかアーティストを主にやるきっかけみたいなところも含めて教えていただけたらなって思ってるんですけど

203>きっかけ?…たまたま?わけじゃないんだよね。
もともとグラフィックデザインとか、あとは雑誌の編集にも興味があったし、関係にもちょっと興味があったし、そういう分野のほうを考えていたんだけれど、立体物ちょっと面白いなと思って、そうこうしているうちに、たまたま机の上に毛糸があったので毛糸でなにか作ってみようかなと思ったのがきっかけで、未だ作っているってやつかな。

K>基本的にはじゃあ編み物自体は独学なんですね。学校に行くんじゃなくて、

203>そうです。学校とか、全然考えてなかったですね。
ちょろっと細編みなら細編みだけ覚えて、だから初めは何にも考えずにやったので縛ったりしてたんですよ。要は糸でなんか表現できないかなと思ってたから。今よりもものすごく前衛的な作品になっているっていう。

K>それはそれでめっちゃ見たいですね。

203>そうそう。縛ったり切って貼ったりとか、あとは指で編んでるのかマクラメなのか、結びなのか、何なのかよく分かんないものになっているっていう。団子みたいな感じになってる。これじゃ埒が明かないなと。で毛糸もいろいろな種類あるし、選別して、あとは道具を買ってみたりとか、あとは編み方を覚えてみたりとか。それで徐々に徐々にですね。作品にしていったてやつ。

K>ちなみその表現においてアート作品というか見せることについては…?

203>見せることね、まったく考えてなかった。自分が楽しければ。
まずその自分を喜ばせるのはもう自分しかいないので。あとはね、なんか昔のなんかいろいろ見てみたらね、家中びっちびちに編み物で埋めたかったみたいな。ドアを開けたら編み物がだっと流れてくるみたいな。そんなぐらいまで編みたいっていうのが目標だったみたい。きっかけ。

編み師のお仕事

K>あの、ゲリラ編み集団やってるじゃないですか。編み機集団…

203>今ちょっとご時世があれなんで、ライブニッティングって言ってるんだよね。

K>あ、そうなんですね(笑)

203>昔はね、ゲリラでもよかったんだけど(笑)ちょっと文章を掲載するときにその企業企業によって引っかかる場合もあるので、ライブニッティングっていう風に柔らかい、本当はゲリラって言いたいんだけど、いろいろな規制が今ご時世的にかかるので、優しく言ってますね。

K>コンプライアンスですね。

203>そう。日本では全然当時ゲリラ的にやってる人がいなかったので、でも同時多発的なんですよね。私がやり始めた時、アメリカでも始まったヨーロッパでも始まったってポチポチポチポチ。ネットがだいぶ普及しはじめて、SNSもちょろちょろ浸透してきましたよっていう時に、皆やり始めて写真に載っけたりとかしてたので、それで海外の情報も知るようになったり、それでこれはもうやっぱり日本からもやらなきゃダメだと。それでゲリラ的にやりましたね。だけどゲリラ的に日本でやるとちょっとそれもいろいろ規定があって大変なことになるので、

K>そうですよね。日本は厳しい。道路交通法とかね。色々あって。

203>1回だけゲリラですね。

K>あー、そうなんですね。
基本その延長線上がそのヤーンボミングみたいに編みくるむみたいな感じなんですか?

203>それだとやっぱりやり逃げみたいな感じじゃないですか。
一爆撃的な…なんですか、一気にその雰囲気を変えましたよっていう名目でしょう?

K>はい。

203>そうじゃなくて、日本的な考えとして皆で編んで1つの作品を作りましょうっていう風に今は落とし込んでますね。
それでその地域交流とか、立ち合い交流とかというふうに今はちょっと落とし込んでますね。延長上でですよ?

K>流行ると思います。なんかすごい面白いなあと思ったのが、203gowさんが大きい作品を作るにあたって1人じゃなくてそれこそ
アシスタントとかじゃなくて巻き込みながらやるじゃないですか。

203>あー、そうですね。203gowさんというのは集団ですかってよく言われるんですよね。

K>なるほど、そうなんですね。

203>1人でやってますけどって。
たまにジョイントして色々な企業さんとやりますっていう。

K>でもなんかそう考えると、キヨさんとかディスプレイとかしてるのも含めて、アートディレクション的な感覚でやってるっていうのもあるんですよね?

203>そうですね。だから空間があるので編み物で埋めてくださいと言われるわけですよ。
美術館だったりだと20mの10mの15mを編み物でどうぞと言われるんですよね。
だからテーマもなにもかもすべて自分で決めてやるので、自分で自分をディレクションしてるみたいなところもありますけどね。
だからいろいろ自由にできるので、ありがたいし面白いですけどね。
あとはやっぱ、進め方としてやっぱりその自分の…いくら言葉で言っても伝わらないでしょ?
こういう大きな編み物を、カラフルな大きな編み物を作りたいですって言っても分からないわけでしょ?
だからイラストを書いて企画書を作るんですよね。企業さん向けにね。
編み物の他にそういう細々した仕事もあるんですよね。

K>そういうのってなんかプレゼンしに行くんですか?

203>プレゼンしたりネットで送ったり…、まあでもだいたい箱見なきゃ、空間を見なきゃいけないので、実際行って空間を見てここであそこ吊れますねとか吊れませんね、ここで何できますかっていう交渉もするので。
あと余白として、ここは編めますか、ここは編めませんかとか、あと違うところも侵食してどこまで編んでいいのかっていうのを確認、じゃないと、ここの手すりはOKですかとか、階段周りはOKですかっていう許可をいろいろその時に取って、それで話を進めていくってやつですね。だからやっぱりそれは現場に行かないと、どこを編めるのかというのは分からないので、だからそういうのもライブといえばライブなんですよね。ライブ的に編んでるみたいなっていうんですかね~。
一応ね、企画書みたいなのも見せられるといえば見せられるんだけど…
こういうイラストを書いてみたり周りにこのイメージする、あとテーマとか。
千代田区で今やっている多世代交流、おばあちゃん達で、おばあちゃんって言ったらちょっと申し訳ないぐらいのみんな元気
なおばあちゃん達なんですけど、その人たちと編み物で多世代交流できないかという話をいただいて。
それぞれテーマがあるんですよ。今年でもう5回目?6回目ぐらいになるのかな。
それでそのテーマに合わせて私がその皆のいろいろな意見を聞いてイラスト描いて何ができるかっていうのを提案するっていう感じ、を取ってるんですよね。
だから初めは、なんでしょうかねぇ。
皆セーターとか帽子とかは編めるんだけれど、立体物を編んだことがないと。
じゃあ白鳥編みますか?これから白鳥編みますんで、と言っても皆ハテナマークついて仕事が進まないんですよ。意味が分からないと。
見たこともないし、作ったこともないしって。
現物をそのまま持っていければいいんだけれど、同時進行なんですよ。要はまだ立体物を作る前から説明しなきゃいけないので結局イラストと言葉での説明になっちゃうんで、現物見てこれ編みますって言ったほうが一番なんですけど、だから一番初めはちょっと苦労しましたけど、趣旨を理解していただいたところから、もう皆、私がいなくても勝手に進めてくれる、そういう状況でしたね。

K>面白いですね。そういうコミュニケーションツールの一つとしてやるというか。

203>なんでしょうか。ある程度の年齢の人だと和裁、洋裁を当たり前できた人達なので、
昔やってたとかその地域の話が聞ける、昔話を聞けるというのはちょっと面白いですね。
だからそういう面では交流、小さいお子さんはね5歳児、あとは小学生とか男女も来るし、あとは中年層のお父さんも来るし、お兄さんも来るしって、いろいろな人が来てくれるので、ちょっと面白いですね。

K>そういう時って場所とかってどこでその空間の場所で編み始めるんですか?

203>場所はね、千代田区で持ってる場所があるので、そこで皆で交流しますね。
ただまあね、集まる場所も大変なんですけどね、ほんとうはあっちこっち全国でやりたいんですけど場所だったりとか、あとその
予算も確保しなきゃいけないし、だからその辺で千代田区は割と恵まれているので、今成功してやっているという感じですかね。

203>一回梅田のデパートのディスプレイ…依頼はコンペだったんですよね。

K>あーそんなのもあるんですね。

203>あるある。そういうのがある。で、ダメでしたって言われたことがあったな。

K>それででも写真とかプレゼンの資料用意してから話…?

203>でもね、向こうで一つ企画会社が入ってるから私が資料渡すだけで向こうがまとめてくれるので。こういう人がいますって言って、一応その構想だけを伝えて、軽いね。簡単なイラストでまとめて、こんな感じですか?って向こうが。一番楽なパターン。
もあるし、こっちで全部考えなきゃいけないこともあるね。2位でしたっていうこともあるよ。
取れる時と取れない時があって、コンペはやっぱり難しくてねー、毎年の毛色があるからそれよりも新しいことやっぱり入れてみたいわけ。だから新しく入れたい、私の素材みたいな。でもやっぱり去年のほうがいいっていう風になるし、いやまた違う方がいいって言う場合もあるし…だから取れたら嬉しいなっていう感じかな。コンペだとね。
それか直接来るときもありますけどね、これお願いしますって来る場合とコンペですっていう場合と。二通り。だからコンペだと半々ぐらいで考えるかな。取れるかな、取れないかなあ、みたいな。

K>ちょっとやらしい話になっちゃうんですけど、やっぱりコンペとかある仕事の方が、単価だったりとか予算は大きかったりするもんなんですか?

203>いや、そんなことはないよ。コンペ用に物を作らなきゃいけない場合もあるんですよ。作んなくてもいい場合もあるんです。
コンペ用にに作ってる作品を出してくれるところもあるし、出してくれないところないかな、大体出してはくれますね。その金額の差があるっていう。

K>なるほど。

203>あとはね一番これは言っていいのか分からない。外資系だととても手厚く迎えてくれますね。手厚くね。

K>いや何かその自ずとそうなる想像はしてましたね。

203>うん。で、大企業だからといって、たくさん頂けるかっていうのはそうでもない。だから考え方一つですよね。

K>ちなみにその作ったリストするには、手伝ってもらって、たまに自分以外でやると思うんですけど、その企業さんからお願いされた中で最終的に例えば動画にしたいとかCMに使いたいとか、そういうチームでやる場合とかってたまにあるものなんですか?

203>いや、 ないね。うーんとね、そういうもし私から手を離れると二次使用、三次使用っていうことになるのかな。
そこで金額が発生するか発生しないかっていうのは交渉になってくるのかな。それは事前に一番初めに、もし二次使用、三次使用になった場合はこうします、あーします、っていう話になると思います。それで、またビデオにしたいんで新しく作ってくださいってなったら作った制作費をまた頂けるのか頂けないのかというのも交渉になってくる。その都度変わる場合もあるんですよ?急にビデオが欲しくなったとか、一応保留で置いた企画がまた復活するみたいなのもあるので、だからその辺は臨機応変にどこまでお話できるかっていう。なんせコンペの場合は勝ち取らないと。直接お話しいただいたのは誠心誠意編みますけど。でも作るキャパにもよりますよね。金額が大きくなれば大きくなるほどキャパも大きくなるので、それで私がどこまで太刀打ちできるのかっていう。

K>ちなみにそういう短納期が多いって言ってたじゃないですか。

203>これ言ったらだめだと思う。納期あまりにも短すぎるところもあるもん(笑)

K>平均としてどんなもんなんですか?一か月後とか二か月後とか。

203>まあまあ平均一か月かな。でもそのやりとり含めてだからね。やりとり含めて一か月半、二か月あるかないか、かな。
美術館だと一年前からオファーが来るんですよ。一年以上前ぐらいから…

K>企画早めに通してってことですよね?

203>そうです。作家さん抑えなきゃいけないので。こうしたい、あーしたいっていうのを言う。

K>いやー、めっちゃ面白いですね。そういう同じニットとか編み物でもそういう世界を全然知らなかったものなので。

203>全然、企業さんも一社とかじゃないので、日本の企業から海外の外資系の企業までいろいろたくさんあるし、いろいろなギャラリー含め個人でやっている人もいるし、そこそこそこで合わせて作ってくっていう考えだから、ほんとうにいろいろな人と会いましたよ。いろいろなたくさんエピソードがあるんだけど、言えるエピソードと言えないエピソードがたくさんあるっていう。

K>203gowさんのホームページ見るとポートフォリオみたいな感じで見れるから、企業の人たちもそういう風に見て判断できる材料があるからっていう感じですか?

203>一応そうですね。企業向けというか、分かりやすいように。
企業の人が見て、あーこんな風にできるんだとか、ギャラリーだとこういう風に展示できるんだとか、あとは百貨店だとこういう風にできるんだっていう。だから仕事の幅もね、いろいろ広いので。だからいろいろご提案できる。
そこの壁を編んでみたりとか。やっぱり企業側も調べてくるわけですよ。こういう人をちょっと起用したいなとか、こういう企画に合った人はいないかなとか探したときに、うまくヒットできればいいと思うんだけど。でも宣伝力が足りないかなぁ。まだまだアピールしないと。営業もやらなきゃいけないし、編まなきゃいけないし交渉しなきゃいけないしって、すごいいろいろやらなきゃいけないことたくさんあるんだけど。…難しい。

K>難しいですね。大変ですね。

203>難しいね。だから一概には言えないよね。

K>それこそ村上隆さんみたくね、事務所みたくしちゃってそこでやるっていうのも一つの手ですけどね。

203>そうなんだけどね。やっぱり誰かもし私のアシスタントさんにやらすと、たぶん妥協しなきゃいけない部分がたくさん出てくると思うんだよね。自分のやりたいものがどこまで出来る人たちなのかっていうのが分からないからね。
だからその人材を集めることから始めなきゃいけないでしょ?そうすると、飛び抜けた人だとたぶん独立しているわけですよ。もうね。
その独立していない中で、どこまでの技術があって、どういうことを考えて、私の意見をどこまで汲み取ってくれるのかっていう、その人材をどう探せられるのかっていうのがね。すごく難しい。あと育てるって言うのもあるんですけどね。
なかなかこれ編むのより大変な作業なんじゃないかって。すごいなと思ってね。大企業とかそういう人をちゃんと育てている人っていうのはすごいエネルギーだなっていうのはありますね。

K>しかもずっといるとは限らないですよね。辞めちゃったりとか。

203>そうなんですよ。結局技術を学びたいじゃないですか。だから技術学んだら独立したいじゃないですか。自分でもやりたいわけでしょう?だからそういう人たちに自分は何を教えたらいいのかっていうのはね。何が知りたいのか何を教わりたいのかっていうポイントもあんまり分かんないなぁっていうのはありますね。
私は私なりに悪戦苦闘しつつやってきたっていう感じなので。だから何だろうね、うまく次の世代に繁栄できるかっていうのは、どうなのかまったく分からないですね。まったく私と同じ仕事を継ぐとなるとなかなか大変な話になってきますよ。全部教えてもいいんだけれど、結構ハードですよ?

K>でもやりたい人はいっぱいいると思うんですよね。ゼロじゃないですよ。
それこそ僕的には作家さんになって、例えばminneさんとかそういうところで売るのであれば、やっぱり差別化する意味も含めて203gowさんみたく、美術館とか企業相手にやるって人のほうがまだ違うハードルが上がるけど、ライバル的な考えが違くなるじゃないですか。

203>まあね…そうなんだけど、やっぱりね美術館を埋められるか埋められないかというのは一つの線引きとしてあるよね。大きな立体物を作れるか作れないか、っていうのもありますけどね。小物だと割とね、作りやすいので。作り込むか削ぐかはそれぞれ個性があると思うんだけれど、大きなものを作れるかっていったら、なかなかいないんじゃないかな。それも編み物で作るとなると結構いろいろ考えなきゃいけないことがたくさんありますよ。
あとは送るのが大変でね。

K>そうですね。送料がね。

配送のお話

203>送料も最近どんどんお高くなっているので。

K>だってうちも今、佐川さんとかクロネコヤマト契約しているんですけど、140以上か。140までは結構一定の料金なんですけど、それ以上150、160になると、140を2個送った方が安いんですよ。送りたくないんだろうなって、でかいのは。

203>そうなの。結局その140以下が多いわけ、一番ね。需要があるからね。私みたいなのは一番重要がなくて面倒くさいやつなのね。だからプラスαになってくるわけ。だからなるべくコンパクトにしたいから、2mのマンタを編んだ時は羽を折りたためるようになるべくちっちゃく。

K>なるほどなるほど。


203>なんだけど、なんていうか私的な余計な話なんですよ?本当は長く手を広げて編みたいの、楽だから。なのにいらん工程を入れなきゃいけないわけですよね。その分骨組を変えなきゃいけないんですよ。だからすごい余計な事も考えて、梱包のことも考えて展示のことも考えて、さらに編みコーティングするっていう。二重に三重に四重にっていうね。

K>まじでマルチですね。なんかそれって結構経営者的な考え方じゃないですか。配送も考えないと残るものがないじゃんてなるから。

203>そうなのよ。だから経理から怒られるからね。経理部門の私から怒られるから。考えなきゃ。だったら初めっからそういう風なシステムな考えで作らなきゃダメだって、じゃあこの辺で骨を折ろうか、この辺で骨を折ろうかっていう。それで技術の私に指示をするわけですよ。じゃあこういうふうに作ってくださいって。

K>それこそ美術館とか、大量な作品しなきゃいけないんだったら車で運んだほうが安いときも。

203>そうですね。だからもう2tで送ったりとか。美術館はね、専門のスタッフ、美術配送の人が付いている場合があるんですよ。ない場合もあるんですけどね。

K>2tトラックってえげつないですね。

203>あとハイエース2台とか。

K>引っ越しできちゃいますね(笑)

203>そうそうそう。だから引っ越し便で送るとか、あとはなるべく規定内に、規定外だと跳ね上がるので規定で収まるようにするとか。まあ多梱包の送り方も、そういう便もあるのでそういうのも使ったりもしますけど、だんだん厳しくなってるんですよね。

K>ヤマトとかが数があって届く日が決められないけど、安かったりするんですよね。

203>そう。前はそういうのも規定が全然なかったんですよ。があったりとか、ヤマトさんにいろいろ聞いて、毎回怒られたり何ですか、かんですかって言うと怒られたり、大量にあるので遅い時間でもいいですかとか、ちょっと融通をね、ヤマトさんといろいろ折り合いを合わせながらはしてるんですけど。だからなるべく小さいものを編んで大量に、ということになるんじゃないかな。大きいものだとね…あとは中身入れないで折りたためるようにするとか。針金だけでね、吊って。だから3mのものが何十センチになるわけですよ。アコーディオンみたいに作ったりとか。その代わり天井から吊らないとダメなんだけれど。いろいろそういう風に考えてますね。全然編み物と関係ないところも考えなきゃいけない。

K>いやそれめちゃくちゃ勉強になりますね。送って返送もしなければいけない。戻ってくるんですもんね。

203>なんせ展示に間に合わないっていうのが一番、大体ギリギリに送るので届かないっていうのが一番ね、大変なことなので。あとは私の体調もちゃんと管理しとかないと、疲弊しているだけではね、ちょっと困るので。なるべく具合の悪くならないくらいに疲弊させておいて、そこから作品を作ってからまた今度展示しなきゃいけないんですよね。現場に行って。だから施工会社も含まれているんですよ。自分で編んだものを今度施工会社の私に頼んで私がまた展示しなきゃいけない。あと指示ね。美術館だと大体施工会社が入っている場合が多いので、指示したり、あれ吊ってこれ吊ってあれ吊ってって、でも実際は私もいろいろ物量が多いので手伝ったりなんなりするからね。それでやっぱり脚立も乗れる人間じゃなきゃダメだ。脚力をやっぱりつけなきゃな、みたいな、それでスクワットしなきゃな、みたいな。

K>なんかすごい人間的ですね。

203>そうでしょう?(笑)
いろいろこう繋がっている感じはするんですよね。だから目的と手段とルールっていうかその目的に対するその手段をどう編み物で考えるかみたいな感じですかね。

K>そこまで建設的に考えてる人いるんですかね。編み物やってる人で。すごいなと思って。

203>いるんじゃん?会社だと、だから一人まるで~~なってるわけですよ。だからダメなんだよね?

K>ダメじゃないです、ダメじゃないです、すごいですよ。

203>他の人がいればいいわけ。

K>そうですよね。経理やる人だったり、配送する人だったり、なんなりする人だったりで。

203>お願いねって言っておけばいいわけだし、じゃあこの骨組みでこう作ってくださいって私、何度人に頼みたくなるぐらいどうしようどうしようと思うときもあるんだけれど、考えてなんか物を作ったりするのが好きなので、結局自分でやってしまうというね。こうしたら面白いかなとか、あーしたら面白いかなとか。しかもそれを限られた時間でやらなきゃいけないっていう。いろいろなものにものすごく追われている状況で、いかにその時のベストを見つけるかっていう。だからその直線的な考え方をするっていうのがもう癖になってるんだよね。

K>最短距離でっていうことですね。

203>そう。最短でこれだと、これでいけるって。あとは慣れてきたら大体分かってくるので、それだとこれぐらいでできるな、とかね。
あとはあんまり早く作っても寝かせる場合もあるし。ある程度の期間で作れますっていうことを言っとかないと、何でも早く作れる都合のいい女にはなりたくないので。なるべくね、大変だったよっていうのも。大変なのもあるからね、確かに。すっごい時間かかりました!ってしばらく寝かして(笑)それは向こうには分からないので。
そう、そういうのもあるね。いろいろですよ。やり方。だから皆なかなか出来ない仕事だと思うんだよね。仕事の話になるとね。

編み師を目指す人へ

K>そうしましたら、203gowさんの後輩ってわけじゃないですけど、そういう編み師だったりとか、アート活動を編み物でしたいっていう人がもしいたとしたら、なにかアドバイスできることとか。

203>アドバイスっていうのはね、ちゃんとあれですね。交渉できる人じゃないとダメですよね、ちゃんと。

K>会社の人と話してですよね。

203>そうそう。あとは、ちゃんとまとめられる人。作品は素晴らしいけど、お話をまとめるのが得意じゃないと成立しないので。あとはね、納期が企業の場合だと短いので、短期決戦に強い人。

K>それはあれですよね。自分で作るもそうだけど、背景も含めてですよね。が手伝ってくれる…

203>で、その中で自分の力量+αこの納期でどれだけのことが発揮できるのかというのを考えなければいけなくて、最短ルートをいかに見つけるか、というのをできる人じゃないと、結構盛り込んで盛り込んで出来ませんでした、というわけにはいかないので、その辺のテクニックっていうか、そういうのを…まあやってけばどんどん身に付くんでしょうけど。勢いでは出来ない仕事ですね。

K>なんか今日聞いてて本当にもっとアート的な、アーティスト的な話をするのかなと思ったらやっぱりそのバランスだったりとか、先程マルチって言ってたんで。

203>マルチ、あんまりマルチって言えないかもしれないですけどね。

K>他のアーティストの友達とか、それこそ今教えている大学の生徒とかにも聞かせたい話だったなって思いました。

編み物とモチベーションについて

K>あと見て頂いているコロナウイルス拡大になってこういう感じでリモートでインタビューしようって始めたので、もしそういう人に何か伝えたいこととかあれば。

203>伝えたいこと?伝えたいことはね、編み物はとっても楽しいので、モチベーション…ずーっと編んでるわけにはいかないと思うんですけど、その環境の中でこういかに自分が編めるモチベーションを保てるのかとか、自分と編み物の関わり方を考える機会にはちょうどいいんじゃないかなと思うんですよね。だからその時間の使い方だったりとか、あとは今回やりたいことを書き出して作ってみるとか、そういうまた新しい自分になかったものをちょっと入れてみたりとか、もっと編み物の楽しい考え方みたいなのを入れて編んでもらえると、深まるんじゃないかなと思いますけどね。

K>なんかやっぱりこういうご時世になっちゃって結構マイナスになっちゃたり落ちてしまう人とかもいるとは思うんですけど、これきっかけに何か違うことを考えられたりとか、出会いがあったりだとか、それこそこういうきっかけがあって僕すごい良かったなっていうのはあるので、編み物やっている人とかもそういう気落ちしないで、ね。

203>やっぱり普段一人でいる、家にたくさん人数がいる状態で編まなきゃいけないという場合は、それだけでも自分の時間の妨げになるでしょ?その妨げにならないように編み物に集中するっていうやり方とか、そういうのを考えて駆使して編んでみるとそのゲーム感覚で楽しめるんじゃないかと思うんだけどな。

K>そうですねぇ。その考え方めっちゃいいですね。

203>うん。何やってかにやってって、自分に要求されたぶんを、今ここあと一目で終わるから後にしてくれないかっていう、そこでイライラしてしまうのか、それともそこで一旦止めて用事を済ましてから、もう1回同じテンションで編めるっていう、そういう訓練は必要だと思うんです。そうすると長くその穏やかな気持ちで編み物が出来る。

203>そうね、目標立ててなんかこう自由に編むためには、やっぱり目標を立てて自分をコントロールして編むっていうのを、頭に入れてやるとより面白くなるんじゃないかなと思いますけどね。

K>いい言葉ですね。編み物やってる人ってストレス解消だったりとか、なんかそっちのほうが近い人が多いと思うんですけど、人それぞれ表現の仕方が違うし、考え方も違うと思うので、203gowさんのそういう考えでやれると面白みが広がるよっていう意見はすごい良い言葉だと思いました。

203>いろいろね、編み物警察じゃないけどこうした方がいいああした方がいいっていうのは言う人多いと思うんですよね。だからそうじゃなくて自分なりにはどうしたらいいのかっていう考え方の視点を変えてみるだけでも気楽に編めるし、みんなが編んでるから急いで編まなきゃいけないっていうんじゃなくてマイペースで編める訓練っていうか考え方があるともっと自由に編めるんじゃないかなと思いますけどね。


編み師203gow

風変わりな編み物作品 「へんなあみもの」を作り続けている。

​世の中全て、編み物に見える。

カラフルな色合いで小物アイテムや8mの大型立体物まで編み制作。

糸状のモノを見ると、つい編んでしまう。

街中を編み物で埋め尽くす、ゲリラ編み集団「編み奇襲団」主宰。

百貨店、路面店ショーウインドウや、ファッション誌等の背景装飾。

美術館・アートギャラリーにて立体造形・空間装飾(インスタレーション)展示。

ワークショップ、地域・多世代交流編み会なども手掛ける。​

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