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布草履が進化したルームシューズ「MERI」

古来イグサで作られてきた日本の伝統的な履物「草履」。北国ではおばあちゃんの知恵として素材を変えて「布ぞうり」として親しまれています。「MERI(メリ)」はそんな「布ぞうり」が元になり一から素材を編んで作り、さらに一つ一つ手作業で編み上げた「ニット製ルームシューズ」のブランドです。

「MERI」は俗に言うプロダクトアウト型とは違うニット工場が始めた「ファクトリーブランド」。ニットの工場がいかにしてオリジナルブランド「MERI」を育て人々の心を捉えていったのか。履き慣れると普通のスリッパがではものたりなくなってしまうと言われる「MERI」独自のルームシューズが生まれる物語を追っていきます。

MERIのルームシューズはこだわりを強く感じますけど、どうやって生まれたのですか?

本社の小高莫大小工業は60年以上「横編みのリブを編む付属屋」としてニット製品の前立、襟、袖口などのリブパーツを専門に編むニット工場です。得意な「リブ編み」の延長線上で何か製品が作れないか?と思っていた時に青森県八戸の職人さんに出会いました。彼ら(彼女ら)は残反を仕入れてカットし、それを糸にしてイグサの代わりに編み込んで「布ぞうり」を作っていました。残反の生地が欲しいとのことで仲間のニット工場に声をかけ集めた生地を送ったことが最初のきかっけです。お礼としていただいた布草履はとても魅力的で逆に今度はこちらから連絡をして製品開発にご協力をいただきました。

デザインはニット作家でもあった女性スタッフが担当しています。最初は「メリヤスぞうり」という名前でしたが「MERI」と名前を変えて機能性だけでなく北欧をデザインテーマに単純に「かわいい」「履きたい」と思えるようなルームシューズを作っています。

製品から企画するのではなくオリジナル紐から作るとは素晴らしいです。そのルームシューズの土台になる「編んで加工した紐」はどのように作っていますか?


ルームシューズ用の原料は横幅の狭い手横(手動式編み機)に動力をつけて天竺編みのテープを編んで1本の紐として使用しています。編んで1本の紐にした時にカーリングしてまるまる加減や幅、クッション性など試行錯誤しながら1年以上かけてこの作業を青森の職人たちと繰り返しようやく商品開発にこぎつけました。

「手芸糸として一般に売っている糸」より編みやすそうで触った時は「編んで見たい!」と思いました。

紐の原料は東レのコットン50%ポリエステル50%の中空糸を使用しています。抗菌防臭と吸水速乾を備えているので履物として機能美にも拘っています。
もちろん洗濯もすることが出来ますし、一度履いたらクセになるような肌触りの良い素材を使っています。


『ルームシューズ用の紐を編みたてしている動画』

ルームシューズにはそれぞれ人の名前がついていますよね?


Anne(アンネ)、Hans(ハンス)、Tove(トーベ)、Ellen(エレン)、Mika(ミカ)の5つのタイプのデザイン別に分かれています。ボーダータイプや鼻緒を手編みの花モチーフをあしらったものもあります。土台はニットですが、鼻緒部分はプリントされた生地を使っています。

サイズ展開も沢山ありますか?

サイズはS(21〜23c)、M(23〜25)L(25〜27)LL(27〜29)展開。履けば履くほど足に馴染んで1cほど伸びるので1c前後は許容です。サイズやデザインによって値段は異なりますが1足¥6500+税〜になっています。

どこで編まれているんですか?

青森と東京の職人さんが中心ですが、1足3時間ほど掛かることもあり需要が増える中ベトナムでも職人を養成し現在女性6名がソール部分を編んでいます。職人を育てるには1年以上かかりベトナムにも毎月技術指導に行きました。当初国内で内職としてお願いできればと思っていたので心配はしていませんでしたが実際日本での生産はなかなか難しいのが現状です。

私たちも手編みが出来る淡路島の方たちと協力して作っていますが、編み時間や季節的なことなど、多くの課題があることを実感しています。

当初は全国の布草履の先生に依頼しその背景で生産してもらえればと簡単に考えていましたが、現実は厳しく自分たちで職人を育てて生産しなければという結論に至りました。日本でも徐々に職人さんを育てながら生産ラインを増やそうと試みてはいますが、毎月このくらい編んで欲しいというノルマや納期厳守をお伝えするとかなりの確率で脱落して行かれます。ベトナムで職人を養成したのは「工賃が安い」からではなく手作業が得意で本業として内職をお願いできる職人さんがいるからです。実は原料を送って作ってもらったものをさらに送り返してもらうと、コストは日本で作るより高くなります。

どのような人が購入していきますか?

40代女性をメインターゲットにしていますが、今では様々な人が購入してくれています。
北欧をデザインテーマにしていますが、海外の人からはどこか和モダンを感じるようで室内履きの文化がないと思われている外国人の方も沢山買ってくれています。またギフトとしても人気で自分の分だけでなくまとめて2足、3足と買ってくれるお客様も増えてます。

ルームシューズ以外にも、指割れ靴下や手袋も始めたのはなんででしょうか?


元は「MERI」が冬場に需要が落ちる傾向がありMERIのルームシューズをより暖かく履くために必要な指割れの足袋ソックスと5本指ソックスのブランドとして生まれました。夏は素足で冬は「TUTUMU(ツツム)」の靴下を履いてルームシューズを履いていただく提案をしています。
「TUTUMU」の靴下は靴下工場ではなく手袋の工場のホールガーメントの編み機を使って作られています。

ホールガーメントで編むことでより立体的でデザイン性のある靴下を作れるということですね。

はい。洋服に比べ「デザイン性のある靴下」というのはかなり限られていて、5本指のソックスや足袋ソックスになるとさらにニッチな分野になります。普通の靴下を編む機械では色数やデザインなどの規制が多いですが、ホールガーメントで編むことでデザイン的にも機能的にも差別化した靴下や手袋を作れます。今ではルームシューズに合わせる以外にも靴下や手袋単品で購入するお客さんもたくさんいます。

MERIから見えるファクトリーブランドの今後

「MERI」は百貨店や海外でも取り扱いが年々増え続けています。元々は莫大小工場の商品開発チームから生まれたプロジェクトで立ち上げから約1年半で本社の売上の10%を占めるようになりました。その後直営店を立ち上げるタイミングで本社から独立し現在ではそのメリヤス工場に原料の紐を依頼するという形で生産の一つの柱を担うまでになっています。

ここ数年様々なニット工場が従来の生産方法で作り続けるのに限界を感じているところが多く、生産のイニシアチブを取るためにオリジナルブランド始める工場が増えてきました。
ニット工場はニットの生産や糸の知識はピカイチですが、デザインとなると別でなかなか長く続くブランドを作るのに苦戦しているのが現状です。ましては「洋服のブランド」として運営するのはライバルが多く得策とは言えません。
そんな中、「ニット製ルームシューズ」というニッチなカテゴリに勝負しているのはとても素晴らしく、また糸の開発からおこない、手作業の生産ラインを整えるといった簡単には真似ができない生産方法を確立することによってMERIのルームシューズの完成度とオリジナリティが消費者に評価されているのだと思います。

今後「MERI」は日本での「職人の育て方と仕組み作り」に力を入れて職人を増やしたいという。「MERI」が今後ファクトリーブランドとしてどう大きくなっていくのか楽しみですね。

本店の「MERIKOTI」ではMERIやTUTUMUなどすべての商品を見ることが可能です。

MERIKOTI
〒130-0014
東京都墨田区亀沢1-12-10 平井ビル1F
TEL 070-6986-0708
営業時間 10:00~18:00
定休日 不定休
http://www.meri-koti.tokyo