この記事は「あむかわアミーナで学ぶ編み機のこと」と「あむかわアミーナ きれいに編む方法を解説 実践編vol1」「あむかわアミーナ イラストシートでジャカード柄を編む 実践編vol.2」の続きの記事です。この三つの記事を読んでいただけるとより理解が進むと思います。最後となる今回は「説明書に載っていない裏技編」として様々なマニアックで応用編の技を写真と動画で解説していきます。
あむかわアミーナの裏技?!
前回までの記事で、あむかわアミーナ、 そして編み機の一通りの使い方がわかってきたのではないでしょうか。いよいよラストとなる今回は、編み物の特徴とも言える表情豊かな編地や柄がつくれるのか試行錯誤してみました。
ところで、あむかわアミーナでは天竺しか編めないと思っていませんか?
ここからは取扱説明書には載っていない、裏技的テクニックをご紹介していきたいと思います!
ゴム編みの編み方
1目ゴム編み
ゴム編み(リブ編み)は、表目と裏目を縦に交互に配置した編地のことを指します。この組織は伸縮性があり、天竺のような表と裏の違いや 、編み端がくるんと丸まることもありません。縮む特性を持つため、同じ目数でも天竺よりも編地の幅は狭くなります。セーターの袖口や裾、ニット帽などでよく見かけるのではないでしょうか。
家庭用編み機には片板機と両板機の2種類があり、両板機でないと基本的にはリブは編めません。しかし、片板機で編む際にも使える、タッピ返しという技があります。ストッキングが伝線するときのように目を1列一気に落として、編みなおす手法です。編み始めの目まで落としてしまうと補修が厄介なので、必ず先にタッピで目を通してから伝線(目落とし)させてくださいね。
必要段数をまず天竺で編み、タッピで目を返していきます。今回は始まる位置をわかりやすくするために1段別糸で編み目印にしています。
ゴム編みにしたい段数が多い場合は、10段ずつ、のように分けて編み進めていくとスムーズかと。
目を落としました。タッピを挿している箇所で目落ちは止まります。
1目ずつタッピで編み進めます。この作業を目直しとも言います。
最後の段まで目直しができたら針に目をかけましょう。
慣れるまでは難しいかもしれませんが、1本の糸から編まれており、何度でもやり直しができるのが編み物のいいところでもあります。目を落とすこともはじめはこわいでしょうけれど、勇気を持って挑戦してみてほしいです!
2目ゴム編み。1目ゴム編みよりも畝が太くなりカジュアルな印象。
このタッピ返しの手法を応用して、ゴム編みを発展させてみましょう。違いが細かいので、動画も用意してみました。ほんのわずかな違いで生じる差を比べてみてくださいね。
イギリスゴム編み(片畦編み)
ゴム編みの変化組織で片畦編み・イギリスゴム編みとも呼ばれる組織です。片側にタック編み(編まない目を引き上げる)を重ね合わせることにより伸縮性は減り編地は幅がでて、通常のゴム編みよりもふっくらと肉厚でニットらしさが感じられます。編地の裏表が異なる仕上がりになるので、どちらを表として使うかはお好みで選んでくださいね。
浮き目
浮き目とういう裏側に糸が渡る編み方にも挑戦。表はメリヤス目が大きく、裏は織物と編み物がミックスしたような不思議な雰囲気になりました。
2段分を1目として編む
解いた目をタッピで数段分まとめて編むことで、1目が大きくなり存在感がでます。2本取りでは太くて編むことが出来ませんが、今回は2段ごとに行うことで2段分が1目になっています。もっと段数をまとめることでギャザーのような効果をもつことも。表側は1目ゴム編みとさほどかわりのない仕上がり。
リンクス柄
前述のゴム編みの解説で、タッピ返しをおこなうことで表目だけではなく裏目が編めることがわかりましたね。やや手間はかかってしまいますが、この手法を応用すると自在にリンクス柄も編めてしまうんです。
リンクス柄とは表目と裏目を混在させ、編み目の凹凸による柄が楽しめます。手編みではメジャーなガーター編みも、表目と裏目で構成されているので、リンクス柄の一種といえます。
1目鹿の子
イラストシートを利用して、イラスト編みではなくリンクス柄を編んでみました。青い印を裏目に返しています。裏目の部分が手前に膨らんで見え、凹凸のある模様編みが完成します。イラスト編みと併用するのも面白そうです。
すべり目
1×1鹿の子のように表目とすべり目を交互に配置してみました。すべり目=編まない目を作ることでその部分に糸が渡り、模様となります。
あむかわアミーナのキャリッジにはすべりの切り替えボタンはありませんが、前回のイラスト編みを思い出してみてください。スイッチをイラスト編みに切り替えると、手前に出ていない針は編めませんでしたよね。この仕組みを応用し、糸はそのままに針の選定をおこない編み進めていきます。
斜めのストライプに糸が渡るようデザインにしています。
糸は裏に渡るので、裏目側を表として利用することが多いです。糸の渡りは細かいほうが安定もして仕上がりがきれいですよ。
透かし柄
編地に穴を開け、レースのような透かし模様が作れるテクニックで、アイレットレースとも呼ばれています。手編みにおける二目一度・掛け目と同じ考え方になります。
目をウツシに取り、隣の針に移動します。移す方向は柄にもよりますが左右どちらでもかまいません。その後はいつもどおりに天竺を編み進めます。
均一にたくさんの穴を作ることで、メッシュのような編地にもなりますし、穴の配置によってさまざまな柄のバリエーションが生まれます。
針抜き編み
針抜き、という名の通り、使わない針がつくりだす柄のことをいいます。
通常編むときは針をあみだし位置まで出しますが、針を休めたままキャリッジを動かします。すると、編めていないことで糸が渡り、軽やかなレースのような雰囲気が生まれます。針抜きを編み始めるときは目移しをしてから、目のかかっていない針を休めておきましょう。
針抜きの編み終わりもバリエーションがあります。1目の針抜きだとあまり目立ちませんでした。素材や糸の太さ、仕上げ方によって柄の出方が変わってきます。
針抜きと寄せ柄を組み合わせた編地
交差柄の編み方
手編みらしく見える交差柄(ケーブル柄)。その名の通り、物理的に目を交差させて編まれている組織です。
■家庭用編み機ウツシ
家庭用編み機だと、ウツシが3本入っており、1目・2目・3目がそれぞれ1セットになるようになっています。あむかわアミーナにはウツシが1目・1本しかないので、半ば無理やりではありますが、実践していきましょう。
目を2目ウツシに取り、交差させて目を戻す。あとはそのまま編み進めてください。
交差柄が編めました。(画像右)ですが、せっかくの柄が埋もれてしまっていますね。交差柄を引き立てるにはコツがあります。
交差をした隣の目を裏目にする(画像中央)と、模様が浮き立ってより強調された見え方になります。前述のゴム編みの編み方と同様に、1行ずつタッピ返しをしてきましょう。
または、両隣の目を針抜きにする(画像左)ことで解決もできます。針抜きだと隙間ができてしまいますが、その分交差をする目にもゆとりが出てくれるのでオススメです。
度目が調節できないあむかわアミーナでは2目以上の交差は厳しいのであまりおすすめできません。壊れないように無理のない範囲で挑戦してみましょう。
成型、目を減らしたり増やしたり
目数が20目と限られてはいますが、まっすぐ編んで正方形や長方形などを作るのではなく他の形を成型することも可能です。
端の目を左右のどちらかに寄せて、二目を重ねて1度に編んで目を減らしてしまいましょう。今回は内減らしという方法にしてみましたが端っこで減らす・増やすことももちろん可能です。
目を増やす場合は1段下の目を拾って引っ掛けます。端で目を増やす場合は、端の一目を移し、空いた針に1段下の目を拾うか、巻き目で増やすこともできますよ。
引き返し編み
靴下のかかとに主に使われるテクニックで、一部分だけを多く編むことで立体感を生む効果があります。切り替えつまみをイラスト編みに切り替え、中央部分を台形・上下に反転した台形のように編み進めていくとこのような形を作ることもできます。
リリアンテープ
往復編みが基本の編み物(手編み・編み機ともに)ですが、リリアンは筒状にぐるぐる編む構造のことを指します。往復編みなのに、筒状に編む方法があるのか? さて、どのように編むのでしょう。
実はとっても簡単!ポイントはただひとつ。
キャリッジの切り替えつまみを(♡) に切り替えてください。ただし、左右どちらか片方のみにしておくことが重要です。イラスト編みに切り替えたときは前に出した針のみが編まれましたよね。これを利用し、片方は針が出ていないので編めない・糸が渡る→編む→編めない・糸が渡る→を繰り返すことで、キャリッジは左右に動かしていても一方方向のみ、つまり輪に編むことができるようになります。
3~5目で作り目を、その後はひたすらキャリッジを動かすだけで簡単にリリアンテープが完成します。糸が渡りますが、編めた後に編地を引っ張ることで自然とループに分散されていきます。なので、目の大きさは通常よりも大きく仕上がります。
輪に編みたいからといって、目数が増えすぎると、渡る糸が長くなりすぎて分散できなくなるので、最大で5目くらいに留めておきましょう。
柄を組み合わせて
たくさんの柄を編むことができることがわかりましたね。あとは自由に組み合わせて遊んでみましょう。
寄せ目+アイレット+裏目を端に入れて際立たせてみました
あむかわアミーナで遊びながら学ぶ
いかがでしたか?
おもちゃのあむかわアミーナで、ここまでのことができちゃうんです。単にキャリッジを動かすだけではなくなるので手間だと思われるかもしれませんが、夢中になれてとても楽しく、愛おしさのような感情が募ってきます。
ご紹介した裏技は、組み合わせることでもっと複雑でオリジナリティのある編み組織をつくることができます。何事にも言えますが、基礎が身につくと自由な発想で遊べるようになってきます。ここまで身につくと、目落ちや失敗もまったく怖くありません!失敗してもやり直せばいいや~と気楽に楽しめることに気づけるのではないでしょうか。
思うようにいかないことだって、何度もありました。壊れないかひやひやすることも。(実際に、針のベラが曲がったり針ローラー吹き飛んでしまったり…)
だけど、トライするたびに、もっとこうしてみよう・こうしたらどうなるだろう、とわくわくの種がどんどん増えて、気がつくとこんなにバリエーション豊かなテクニックができることに辿り着いていました。
たくさんの挑戦と失敗を重ねて、ひとりでも多くの方に編み物の奥深さに触れていただけると嬉しいです。
メリヤス編みばかりで飽きてきたな~という方や、あむかわアミーナをもっともっと楽しみたい方、編み物・編み機を勉強してみたい方は 今回ご紹介した裏技に挑戦してみてくださいね。手編みにも通ずる内容なので、編み物のレベルが格段にアップするはずですよ。
執筆者 Knittingbird/坂田