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スマイルニット倶楽部『ニット男子部』

World Wide Knit in Public Day(ワールド・ワイド・ニット・イン・パブリック・デイ)って知っていますか?
略してWWKIPDAYは2005年からDanielle Landesさんによって始まった、公共の場で編み物を楽しむ日。この日は世界中の至るところで、編み物イベントが開かれ、『編み物』を通して交流の場が開かれています。
今回は「スマイルニット倶楽部ニット男子部」が主催するKIPイベントにお邪魔してきました。
普段から屋外で編み物をする「ニットアウト」などパブリックスペースで編み物をしているニット男子部の始まったきっかけや、編み物に対する想いなど共有してきました。

今回はニット男子部のKIPにお誘いありがとうございます。僕自身『編み物』の仕事をしていながら、趣味で編み物をしている一般の男性の知り合いはほとんどいないので交流できることをとても楽しみにしていました。ニット男子部はどのように始まりましたか?

2011年に東日本大震災の被災地支援のためのボランティアグループ「スマイルニット倶楽部」を立ち上げたのが始まりです。
「スマイルニット倶楽部」では入居者の交流目的で宮城県の仮設住宅を慰問しながら、誰でも無料で参加できる編み物イベントを行なってきました。仮設住民の参加のほとんどが女性で、ある日1人の男性参加者が来てくれましたが30人もの女性ばかりに驚いて途中で退出してしまいました。

女性が大勢いるところでは恥ずかしさなどもあり萎縮してしまう男性もいますよね。

それをきっかけに2012年より男性が編み物をする姿をアピールすることで男性の参加者を積極的に促せると思い、全く編み物をしたことがなかったボランティアスタッフの男性2名で「ニット男子部」を設立し、自ら編み物の練習をしながら、男性へ向けた編み物楽しさを提案する活動を開始しました。翌年から関東で定期的に男性が編み物を楽しむ会として「ニット男子部定例会」をスタートさせています。

ボランティア活動から始まり、そこにあった一つの問題を解決するためとして環境を整えたんですね。部員の方にお話を聞かせていただきましたが、編み物を始めるきっかけもそれぞれで面白いですね。学生の時に、「誰よりも長いマフラーがしたい」という思いに駆られて母も姉も作ってくれなかったので自分で編み始めたという部員の方や、飲み代にばかり金を使っていて、これではいかん!と思い、何か趣味を持とうということでヴォーグ学園の講師の資格まで取ってしまったシステムエンジニアの方など多種多様でとても刺激を受けました。

はい。ほとんどは全く編み物に関係のない職業に就いている人たちの集まりですが、現役のアパレルニットデザイナーの男性もいます。設立当初は2名しかいなかった部員も、現在(2017年6月10日)では全国に35名の部員がいます。

男性の編み物人口が増えるのは僕自身も大変嬉しいです。活動はどのように行なっていますか?

毎月一回の定例会(ニットカフェ)を東京近郊で開催しています。ただ単純に集まって編むだけでなく、男性が編んでいる姿を公の場所で見せることも、男性が編み物を知るきっかけになるかもしれないと思っていますので、カフェなどの長居できる場所を使わせてもらっています。不定期ですが、今回のKIPのように公園などの屋外でも編み物イベントをしています。

この間ちょうど「ニコニコ超会議」の動画配信を生で見させてもらいました。スーツを着ている男性が編み物をしている姿はとてもカッコよく見えました。けものフレンズのキャラクター「ボス」のあみぐるみも素敵でした。

2017年の4月に幕張メッセで開催された「ニコニコ超会議2017」ではダークスーツにオレンジ色の小物をあわせたスタイルで編み物のパフォーマンスを行い、来場者に編み物をする男をアピールしました。また、2016年12月には街中のものを編みくるむストリートアートである「ヤーンボミング」を東京都羽根木にあるセレクトショップの店先で行いました。

見せていただいたQRコードを編み物で表現したモチーフ面白いですね。


部員間で非常に盛り上がった「QRコードチャレンジ」は最終的にこちらの2点が残りました。読み取り精度が高い2点で、ニット男子部の編み物ベテランが作りました。直接実物を見ると作品のあまりの繊細さにびっくりします。
左が1号針で編んだメリヤス編みで、右が3.5mm針アフガン表編みで編んでいます。

編み物の一目一目はピクセルの正方形ドットと違う形ですが、それをQRコードに置き換えて作ってみるっという発想は男性ならではですね。しかも実際に「ニット男子部」のホームページが読み込みできるというのも素晴らしい。

「ニット男子部」の会員にはどうしたらなれるのでしょうか?

職業も年齢も関係なく「男性」であればどなたでも会員になれます。ニット男子部ではManly(男らしく)Cool(カッコよく)編むことを目指しています。

そんな目指している男性像が書いてある「ニット男子部心得五箇条」も素敵です!

「ニット男子部心得五箇条」はニット男子部のメンバーみんなで考えを持ち寄って決めた五箇条です。これまで編み物に触れたことがない男性に、「普通」の男の趣味の一つとして挑戦して欲しいと思っています。「編み物」は女性的というイメージを一緒に変えてくれるような仲間を募集しています。

スマイルニット倶楽部「ニット男子部」の今後

「男性の編み物」はまだまだ日本では肩身が狭く、イギリスに留学していたとき感じていたのは、イギリスでは編み物をしている男性は日本に比べ遥かに多く、教会やパブや公園でも当たり前の風景として「編み物」をしている文化があります。「ニット男子部」が先頭に立って、日本でも当たり前のように「男性がする編み物」が文化として受け入れられるようになればいいなと思っています。

今後ニット男子部では、それぞれの編み物歴やレベルも違うので、今までは「編み物教室」のような体系ではなく各々が好きなものを作るというように進めて来ましたが、一部の部員の「もっと上手になりたい、自己流では限りがあるので、ちゃんと編み物を習いたい」という要望に答え、会社員の男性が参加しやすい日時の「編み物講習会」を行なっていくそうです。また、2017年12月11日~17日には渋谷NHKふれあいホールギャラリーで初めての「作品展」を行う予定だそうで個人的にとても楽しみです。

「編み物」を始めたいけどきっかけがないという男性の方、「編み物」を趣味としているけど周りに友達や知り合いがいないという男性の方は是非とも参加して交流を深めていって欲しいと思います。「ニット男子部」の今後にも大注目ですね!

スマイルニット倶楽部ブログ

執筆者 Knittingbird 田沼