*この毛糸は残念ながら廃盤になりました。長らくご愛用していただいた方ありがとうございました。
シャトル織り機から出るふさ耳を再利用したコットンファー糸「どきどき」やニット工場や糸会社の手芸に出回ることが少ない質の高い工業糸の処分糸を回収し新たに生まれ変わらせた「一期一会糸」などオリジナル糸を送り出してきたニッティングバードですが。今回は新しく「オーガニックコットン100%」のTシャツヤーン「しっくり」を発売します。
この「オーガニックコットン100%」の「Tシャツヤーン」は「パノコトレーディング」が普段は廃棄をしている製造過程から出る「丸編の生地端」を提供してもらっています。
「パノコトレーディング」の白井さんが蔵前で行われたニッティングバードのワークショップに参加していただき、ニッティングバードの取り組みを話したことからこのTシャツヤーンの話が生まれました。
それではパノコトレーディングとはどんな会社なのか、この糸がどのようにできているのか順を追って説明していきたいと思います。
パノコトレーディングとは
©︎REMEIG AG / PANPOCO TRADING CO.,LTD
パノコトレーディングは1995年より「オーガニックコットン」の原糸の輸入・販売、生地の企画・製造・販売・OEMなどを行なっています。
オーガニックコットンの素材の素晴らしさに魅せられ、その生産に携わる多くの人々の強い想いを知り、希少なコットンの背景にある現実と将来のヴィジョンをお伝えしていくこと。そして、そういった活動を自分たちにできる方法で具体的にサポートしていくこと。をミッションと考えている会社です。
「bioRe(ビオリ)COTTON」
©︎REMEIG AG / PANPOCO TRADING CO.,LTD
パノコトレーディングはインド、タンザニア、ペルー、ブラジル、スイスなどの国々から、オーガニックコットン100%の糸と原綿を輸入し生地に加工し使用しています。
いずれの産地でも児童労働や不当な搾取のない健全な有機農業が行われ、製造も含めた全プロセスは、国際的な第三者認証機関により、検査・認証されています。
代表的なのが、世界最大規模のソーシャルプロジェクトから生まれる先進のオーガニックコットン「bioRe(ビオリ)COTTON」、スーピマ綿をスイスで紡績した最高品質のオーガニックコットン「SWISS COTTON」、綿花の故郷ペルー産のプリミティブなオーガニックコットン「WHITE COTTON / WILD COTTON」などがあります。
その中でも今回Tシャツヤーンの元になる原料は、「bioRe(ビオリ)COTTON」で作られています。
「bioRe(ビオリ)COTTON」とは、スイスのREMEI社が中心となったプロジェクトで、1991年からインド、1994年からタンザニアで始められました。
このプロジェクトは、オーガニックコットンを単純に買い取るだけではなく、この地域で暮らす人々が自立していくための様々な仕組みを構築しています。この功績が認められて2002年には国連から「持続可能な開発パートナーシップ賞」を受賞しました。
©︎REMEIG AG / PANPOCO TRADING CO.,LTD
パノコトレーディングも2001年度より「bioRe(ビオリ)プロジェクト」に参加しています。
インドの子供たちへの教育プロジェクト、タンザニアにおける水源整備事業へ参加し、資金提供を行っています。
Tシャツヤーンが出来るまで。
©︎REMEIG AG / PANPOCO TRADING CO.,LTD
インド・タンザニアで作られた原綿をインドで紡績した「bioRe(ビオリ)COTTON」は、日本に入って来たまず初めに編み機で編まれる前に専門の工場でコーンアップされます。
コーンアップ
「コーンアップ」とは糸を別のコーンに巻き上げる際に「ロウ引き」をすることで、機械で編む時の糸の滑りと強度(切れないように)を上げ編立性を良くするためにします。
このTシャツヤーンの元になる生地は「ロウ引き」をするときのロウ(ワックス)をケミカルなものではなく「蜜蝋(みつろう)」を使っています。蜜蝋は化粧品、医薬品、食べ物にも使われるほど体に優しい素材です。
整理加工の際、生地に「洗い」をかけるので、ロウ引きされた蜜蝋は最終的に落ちてしまいますが、こんなところにもこだわっているというのがパノコトレーディングが作る生地の素晴らしさを反映しています。
編み立て
ロウ引きされた糸は、編み立てをするために丸編の工場に送られます。
糸の太さにあったゲージの編み機で編まれます。ゲージ以外にも、シングルやダブル、パイルなどどのよような編み地にするのかで機械が分かれます。
20年ほどパノコの生地を編んでいる工場では、安定しづらいオーガニック糸を編むために様々な工夫がされて生地が編まれています。
ソーピング
筒状に編まれた生地は、「整理加工の工場」に運ばれ生地として出荷できるように一手間、二手間加えられます。
まずはソーピング工程。
*この写真は生地が見えやすいように旧式の機械の写真を使っています、実際はラスタム型の機械で洗いにかかります。
まず初めに編まれた生地を、洗いにかけゴミやニッティングオイルなどを除いて、編み目を安定させ風合いをよくします。
160kgの窯で約10反分(約100kg)だいたい60度のお湯で数時間かけてソーピングしていきます。
ここで使っているソーピング剤も、赤ちゃんにも使えようなソーピング兼柔軟剤を使用し、石油化学製品を原料とする界面活性剤・酵素・合成香料・着色料不使用で使用後は生分解して自然にも優しいものが使われています。
脱水
ソーピンング後脱水されます。
開反
*写真は工場の工程を説明しているため他社の生地になります
その後、ねじりを直しながら筒状の丸編生地を縦方向にカット(開反)してフラットな生地の状態にします。
*写真は工場の工程を説明しているため他社の生地になります
パノコトレーディングが使用する生地には蛍光剤が入った洗剤は一切使用していませんが、何かのはずみで蛍光剤が付着していないかブラックライトを当てて確かめます。
拡布仕上げ
ニット生地は伸縮するのでねじれや歪みが出やすく、開反した後に縦と横が均一になっていません。
それをコンピューター制御で、生地をまっすぐに直し縦の目横の目を揃えて「拡布仕上げ」を行います。
トワル組をするためのシーチングでの地の目直し以上に天竺素材で地の目を安定させるには、しつけ糸を使い縦の地の目と横の地の目をまっすぐしアイロンをかけて綺麗に仕上げますが。ここではそれを一瞬でやってしまいます。
幅出しと乾燥
開反した天竺素材の場合、両端がカーリングするので、乾燥させながら樹脂で安定させます。
生地幅を整えるべく、針がついた機械で抑え安定させた耳をカットしていきます。
この時に副産物として出てくるのが、Tシャツヤーンの耳なのです。
パノコトレーディングが原料・編み立て・加工からこだわりにこだわり、地球環境のことを考え作られたオーガニックの生地なので、最後の最後まで捨てないで使うというのはとても理にかなっていますね。
この糸は年間の生産量が限られているので(生地を作らないと出ない)大変希少なTシャツヤーンです。
カットされたTシャツヤーンのカセを工場から送ってもらい、私たちが一つ一つ手作業で玉巻していきます。
オーガニックなTシャツヤーン「しっくり」で何をツクル?
オーガニックヤーンで出来たTシャツヤーン「しっくり」は普通のTシャツ素材に比べ繊細な生地なので、カーリングした後でも軽く、伸縮性も抜群です。
他のTシャツヤーンと同じで太さが一定ではないので、カギ針や棒針で編む場合は12mmから15mmを目安に編んでください。ゆるく編んだ方が、生地の風合いを生かすことができます。
かぎ針で細編みを編んだ編み地
棒針で表編みを編んだ編み地
「しっくり」の触り心地を生かすには、かぎ針より棒針編みの方をおススメします。
また指編みで編む場合も、かぎ針のように編むより指全体を使って棒針編みを編む指編みの方がいいです。
大きい針に慣れない方やお子さんも指編みは最適です。
ガーター編み(パール編み)で編むと肉厚な編み地に(かぎ針で編んだような厚みでより風合いが良い)仕上がるので、ラグマットや絨毯にしても素敵ですね。写真は約2玉分使用しました。
違う糸と組み合わせて、ティッシュカバーなんかも◉
今ではTシャツヤーンは手芸店だけでなく最近では本屋さんにも並び、これで編み物を始めた人や、ハマった人も多いかと思います。
この糸では寝具や、クッション、ラグマットなどが素材の味を一番活かせるデザインだと思います。
赤ちゃん用にアイテムを作るのもいいかもしれないですね・Tシャツヤーンの素晴らしいとオーガニックの良さを感じてもらえたら幸いです。
オリジナルオーガニックヤーン「しっくり」詳細は下記のようになっています。
素材:オーガニックコットン100%
棒針・かぎ針:約12mm〜15mm
指編み ◯
標準状態重量 1玉約330g〜(約40m)(製造工程上重さや太さが一定ではありません)
*この毛糸は残念ながら廃盤になりました。長らくご愛用していただいた方ありがとうございました。
冒頭に説明した「オリジナルふさ耳糸”どきどき”」の記事はこちら
「オリジナル引き揃え糸”一期一会糸”」の記事はこちら