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カナダの伝統ニット・カウチンセーターの成り立ちと特徴について

セーターの中には、「フィッシャーマン」や「ロピー」、「アラン」、「フェアアイル」、「ガンジー」など固有名詞のついたセーターがあります。

それぞれ、生まれた場所や特色が異なり、それぞれの歴史を紐解いてみるととても面白い背景があることがわかります。

今回は伝統的なニットセーター「カウチン」についての起源を追いながら、謎を解明して行きたいと思います。

カウチンの起源

カナダのバンクーバー島に住む「カウチン族」が狩猟の際に着ていたと言われるセーターが発祥となっています。

脱色や染色をしていない羊毛を使っているのでグレーや茶、アイボリーなど「羊毛そのものの色味」が特徴です。極太の糸で編まれたローゲージのセーターは伝統的な動物のモチーフが編み込まれてます。

狩猟時の「防寒性」と「防水性」を重視しているため、脱脂をしていない(油が残った糸)で密度を詰めて編まれるためセーターの重さは1着あたり1.5kg前後あります。(写真1枚目のセーターはメンズのLサイズ相当で1.65kgありました)

本物のカウチンにはカナダでは認定制度もあります。

KANATA-カナタ-


1979年に創業したカナダ製ハンドニットのカウチンセーター専門で、カウチンといえば=KANATA(カナタ)と言われるくらい世界的にも有名です。

KANATA(カナタ)とは、ネイティブインディアンたちの「村」を意味します。

ハンドニットのみで作られているので本場のカウチンセーターは現在でも機械では編まれていません。

そもそも、この太さの糸を機械で編むのは難しいというのと、「カウチン編み」は機械では再現できないからです。

他にも、CANADIAN SWEATER(カナディアンセーター) というブランドも有名です。

カウチン編みの特徴とは!?

カウチンセーターはほとんどが表編み(天竺)で編まれています。

表編みの部分も防寒性を高めるため普通の編み地より密度を詰めて編まれています。

柄が入っている編み込み模様の部分のみ、機械編みでは出来ない手編みでの技法で『編みくるむ編み込み(カウチン編み)』という編み方で編まれています。

編み込み模様を編みながら同時に後ろの糸渡りをくるむように編むことで渡りをなくすことができます。



渡っている糸を編みくるみながら編むことで糸渡りがなくなり、着るときに引っ掛ける心配が少なくなります。また密度がつまり、編み地の厚みが増すのがカウチン編みの特徴です。

「編みくるむ編み込み」の技法はシェットランドでも見られますが、カナダの寒い地方では編みくるむことで密度が上がり、隙間から風が入ってきやすいセーターをより暖かく着ることが出来ます。

カウチンセーターのディテール①

カウチンといえば、直線的なプルオーバータイプのセーターやカーディガンで作られていて、その襟にはショールカラー(ヘチマ襟)が代名詞的に使われています。


ガーター編みで編まれた襟は、直線的なシルエットのカウチンセーターにとてもバランスよくついてます。

柄のモチーフ

柄のモチーフはカナダのインディアン部族の間に伝わる神鳥「サンダーバード(雷鳥)」やトナカイなどの動物そして幾何学柄がメインに使われています。

他にも「動物モチーフ」のセーターはありますが、極太の糸で編まれているためより大柄になっています。


狩猟民族であり、独自の彫刻技術を用いて木彫りの動物を多く作っていた影響でセーターも動物モチーフが多いと言われています。

元々の「カウチンセーター」は他の編み込み模様のセーターと同じで効率重視で袖を4本針、身頃を9本針で筒状に編まれていたので、カーディガンをつけるときは前身頃の中心をカットし切断してつくりました。

現代の「カウチンセーター」はパーツに分かれて編まれ最後に身頃と袖をくっつける方法が多くなっているようです。

世界の伝統ニットの一つ「カウチン」

「カウチン」ニットは理解出来ましたか?

現代では洋服として進化し、軽くするために密度を緩くして編んだり、伝統的な柄でも普通の編み込み模様で編まれてたり、羊の油も少なくしたりと変化し続けていますがそれでもカウチンのディテールを残し冬のファッションアイテムとして今でも愛されています。

次はアイスランドの伝統的なニット「ロピーセーター」に迫って行きます。

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