「これがニットで生きる道」はオンラインインタビュー企画です。
その仕事の内容や、仕組み、やり方、稼ぎ方など、他の媒体ではなかなか聞けないことを、あなたに変わってニッティングバード の田沼が取材します。
ニット業界を盛り上げ、仕事にしたいと思うきっかけのひとつにしてもらうために、様々な仕事を掘り下げていきます。
ニットに携わるデザイナー、OEM・ODM、作家、アーティスト、経営者、ライター、ヤーンアドバイザー、プログラマー、手芸店員、撚糸屋、紡績屋などあなたが知りたい「編み物(ニット)」の仕事をしている人を追っていきます。
動画でも見ることができますが。文字起こしもしましたので。ご自由にご覧ください。
第3回目ゲスト「ニットウェア企画・監修 鈴木弘美」さんです
神戸の株式会社インプルーヴ代表「鈴木弘美」さんはニットウェアの企画総合プロデュースに関わりこれまで「8000型」以上ニット製品を作ってきた工業用ニットのスペシャリストです。
企業やメーカーがニットアイテムの外注先として鈴木さんにデザインや企画を頼み、1本の糸から無限の魅力を引き出すニット企画の扇動者として長年活躍しています。
自社に10ピースファクトリーという工業用編み機のある環境を作ったり、大阪モード学園や上田安子服飾専門学校で講師を務めるなど人材育成や教育にも力を入れています。
NPO法人cocoroitoでは高齢者の生きがいづくりを目的として、手編みで課題解決なども行なっています。
●鈴木さんの仕事お仕事「ニットの企画・プロデュースとは」●
knittingbird田沼(以下K)>インプルーヴでしている鈴木さんの仕事のことを教えていただきたいと思います。
インプルーヴ鈴木(以下鈴木)>そもそもはアパレルの企画会社なんですよ。なので、デザインから委託請負で実際に製品化するまでの監修をするというのが正確に言うと本業です。
K>っていうことはニットだけじゃなくて、それこそ布帛のアイテムだったりとか小物とかそういうのもやっているってことですか?
鈴木>いや、やれなくはないんですけど、ニットを得意としているので基本的にはニット製品の監修です。
そこから派生してもう20年位になるんですけど、その中でデザイン企画の業務委託の請負だけじゃなくて、実際にブランドさん達で糸から作りたいって人もいたりとかする中で、撚糸屋さんとオリジナルを作るとか紡績屋さんとお話をするとか、そういうことで色々拡がっていってるって言う感じですかね、今は。
K>会社自体は立ち上げてから何年目くらいなんですか?
鈴木>2000年に会社を卒業して、一応登記上2001年1月1日からってことに、きりが良いからしているんです。
K>そうなんですね。でも本当に20年近くやっているんですね。読者の人が多分OEMとかODMのことを知らない人が居ると思うので、説明していただいてもよろしいですか?
鈴木>はい。OEMはお客様のブランドの名前とか商品の名前になるものを、実は黒子で生産するっていう形がOEMですね。他社ブランド商品を生産するっていうのがOEMだと思います。
ODMのDはデザインのDなので、デザインごと委託して実は工場側、製造側が作るっていう理解で良いのかなと思うんですけど。
K>特にニットはやっぱり10年20年布帛で勉強した人も、いきなりニットをやるって難しいじゃないですか。なのでやっぱりニットってなると工場におんぶに抱っこだったり、こういうOEMとかODMの会社に行って、どうやってニットを生産していいですかって聞く人が多いという事ですよね。
鈴木>そうですね。だからうちが監修業として成立しているのも、やはり布帛の商品を作るのは、ある程度専門学校を卒業したデザイナーさんとか、若い方でも作り方が分かるので、工場さんとセッション出来るんだけど、
ニットに関して言うと、糸の調達をするのにまず糸の番手のこととかが分からないと、どんな編み機で編んで良いかが分からないし、編み機自体にも機種スペックが工場さん毎に違うので、どの工場さんが持っていらっしゃる、どの太さの針の、どの機械を使って、どんな編み方をする、それはどんな糸を使うのかって、ものすごくこうクロスワードパズルみたいに繋げていかないと製品のイメージを付けることが出来ないので、
なのでやっぱり出来る人が極端に少ないのかなと、キャリアがないとなかなか難しいので、私たちみたいにデザインの在庫を業務委託されるっていう企業さんがあるのかなぁと思いますね。
●経歴と独立について●
Kはい。そうしましたら鈴木さんの経歴、専門学校こんなとこ行ってたとか、もしニットやる前になんか勉強してたとか含めても良いし、何かあれば教えてほしいなと思うんですけど。
鈴木>経歴っていうと、専門学校は大阪のすごく名もない小さな専門学校を卒業しています。そこから、たまたまラッキーにも大手のアパレルさんに1987年に入社して、それまではもちろんニットのニの字も知りませんでした。デザインと言うと布帛の、ファッションデザイナーというのは布帛の仕事のイメージしかなかったので、学校でもそれしか教えてもらってなかったし、ニットデザイナーという、デザイナーの中のニットデザイナー、ファブリックデザイナーとかという風にそこが細分化されてるというのを知ったのは会社入ってからです。
そこで13年ほど勤めて2000年の10月に退職させていただいて独立する、という形になります。それでその時に個人事業でインプルーヴという名前でフリーランスから初めて、2008年に法人化して今の株式会社インプルーヴになっています。
K前の会社に居たときも、ニット、横編みニットの生産とかデザインに関わっていたということですね。
鈴木>そうなんです。たまたまね、私が配属されたブランドが当時日本では一番大きいブランドだったんですけども、そのブランドの中の主軸事業がニット製品のファッション商品、お洋服だったんですね。
ニットの強いブランドにたまたま配属されたので、ニットデザインの世界があることを知って、新人の時に色々な先輩のお手伝いをするんですけど、たまたまニットデザイナーさんのお手伝いをした時に、図案の配色を考えるとかね、あとテキスタイルデザイナーさんにAという糸とBという糸と、これを太さを色々変えて、本数取りを変えてちょっとねじねじと撚り合わせてみてなんていう作業のお仕事を頼まれるわけですね。
「この仕事何やろ?」と思いながらやっているうちに、それが糸になり、やがて服になり、お客様のお手元に届くっていう、その一連のストーリーを見たときに、「いやいやニットの世界ってすごい面白いやん。」って思ったのが始まりで、それで当時のブランドの上司に駆け込んで、「ニットデザイナーのアシスタントに専属させてほしい。」って無謀にも願い出て、それで変えてもらったんです。
Kそれはもちろんあれですよね。布帛とかそっちのデザインをやっていて、
鈴木>うん。ジャケットとか布帛のデザイナーだったんです。
Kジャケットなんですね。そういうニット世界を知って、やっぱりそういうところと比べると、ニットだと糸一本から調理して、テキスタイルからデザインみたいな感じで幅広さを感じたということですよね。
鈴木>そうなんです。会社に入って、会社に入ってっていうか、そもそも私は目標が1人でというかフリーランスじゃないけど、独立してデザイナーとして一本で自分で生きていけるようになりたいというのがそもそもあって専門学校行ってるんですけど、
子供の時からファッションデザイナーになりたいっていう夢があったので、そこから会社にいざ入ってみたら、デザイナーって、ファブリックのデザイナー、布帛のデザイナーさんはやっぱりパタンナーさんのスキルというか腕がすごく大きくて、デザイナーさんが絵を描くというより、どのパタンナーさんにそれを担当していただくかだけで、なんかシュッとした型が描けたり、すごく優しいシルエットになったり、同じ絵を渡しても全然違く上がってくるのね。
そこに「あ、これ自分一人で独立するのは絶対無理だな。」ってぼんやり思っていた時に、いざ横で工場さんに仕様設計書書いて、もちろん当時もニットのパタンナーさん居たけれど、ある程度パタンナーさんが工場とセッションするんじゃなくて、デザイナーが工場さんとお話する機会がすごくそっちの方が多くて。先輩達を見ていたらね。
出来上がる工程で自分でやり取り出来ることがすごく範疇が広いから「こっちなら独立してやっていけるんじゃないか。」って思ったの。それでそっちに転向させて欲しいって願い出たんです。
Kなんか今では珍しいですよね。ここ最近のニットのところってやっぱり新卒ってなかなか取れるところってないじゃないですか。やっぱ中途で即戦力で欲しい、って人は居ますけどそれこそやっぱり女性の方が多くて、ご結婚されて子供産んで辞めちゃうって人がいるからまんま穴が開いちゃってるって色々な会社で聞いていて、
そういう時どうしてるかって言ったら、カットソー部門があったら、カットソー部門から一応ニットだから繋がっているだろう、まあ全部は知らないけど、ニットのことを知っているだろうっていうんで結構スライドして工場さんと一緒に話しながらやるっていうのがありますけど、
そういうニットデザイナーでニットを勉強できて更に自分からやりたいです、っていう環境があったというのがとても羨ましいなと今思います。
鈴木>ラッキーでした。時代が。
K>それに入ってニットデザイナーの人に教わりながらかた型(サンプル)を上げていってニットを学んでたという感じですよね。
鈴木>そうですね。
K>やっぱりニットって工場とか手編みさんとかにあげることもあると思いますけど、ファーストサンプルを出していって、そこから修正していくじゃないですか。それでやっぱりどんどんどんどん自分がこここうした方が良い、こここうした方が良い、みたいな感じでどんどんニットを・・・。
鈴木>当時は本当にね、その時居たブランドはあんまり出張とか行かせてもらえなかったんですよ。だから機械を見たのはずいぶん後で、3年目4年目の頃なんて機械を見たことなくて、海外生産が始まりかけた頃だったので初めて中国で工場の機械とかをすごく沢山あるのを見たのは、もしかしたら中国が最初だったかもしれへんかなあぐらいな、ぐらいかなあ。
ニットの魅力について
K>若い子だったら多分独立してやりたいとか企業でニットデザイナーっていう風にやりたいとか、 工場に就職したいとか、あるいはOEM、ODMってその二の次にされてしまうと思うんですけど、OEM、ODMとかっていうのに必要な知識だったり技術、あるいは魅力っていうものがあれば教えてほしいと思っていて。
鈴木>う~ん、そうですね。魅力か。まあなんか全部自分で采配できるのが面白いんじゃないかなと、ニットに関わっているとやっぱりそこが一番面白いんじゃないかな思いますけどね。
お客様がこういうのを作って欲しいっておっしゃって、例えばセレクトショップさんのオーナーさんなんかがね、こういうのを作りたいんだけどって、ほとんどリモートワークなんですよ。そもそもがリモートワークなので、ファーストインプレッションでお話を聞くときに、なにかこんなって絵を送ってくれるんだけど、本当に簡単な絵なんですよね。デザイナーさんじゃないから、そもそも向こう側の方はね。
それをこの部分はアームホールのラインが無いけどラグランのイメージですか?とか、セットインのイメージですか?とか、アームホールは下がった感じで、今風にちょっとパフっぽいお袖にしたいと思ってらっしゃいますかとか、色々こう掘り下げて聞いていく中で、あ~この人が欲しいイメージはこういうのが欲しいんだろうな、っていうのを推察していって、で逆に私の方で絵に起こしてこんな感じのイメージですかとかって言ってお客様とやりとりをするんですね。
それが実際にそれで一旦アプローバルをそのイメージでって取ったら、その起こした絵型からどんな糸にしようとか、この工場さんのこの機械を使ってやったら出来るんじゃないかとか、そういうところを工場さんと今度ずーっと色んなやり取りしていく中で、実物の形になっていくわけですよね。
やっぱりそれが最終的にお客様が「そうそう!あ~そうそう!」っ言ってくれるのがダイレクトに伝わってくるから、納品した時に喜んでもらえるのが一番嬉しいっていうか、うちのスタッフとかも含めてね。そういう感じかな~。
ニットのデザインシステムについて
K>ちなみに鈴木さんのところってシマセイキのデザインシステムって持ってらっしゃるって言ってましたっけ。
鈴木>はい、持っています。
K>あれで何か例えば提案することとか、編む前に一回こういう編地出来ますとか、バーチャル製品みたいなので出せたりするじゃないですか。そういうので見せることっていうのはあったりするんですか。
鈴木>アパレル契約先さんではそこまではないと…例えばアーガイルの柄であるとか、あとお客様が持っている糸の残糸を少しずつ残ってるからどうしようっていう話の時に、じゃあ引き揃えにしちゃって色をミックスになるようにしたらどう?なんて話をしても、それがどんなものか相手は想像付かないから、それをシミュレーションでバーチャルで紙に起こしてあげて、何色と何色何本ずつ入れたらこんな色になりますよって言って見せてあげたりとかすることで色を決めたりとか、そういうことはしますね。
K>それってスキャンして、編地みたく出るやつあるじゃないですか。
鈴木>そうですね。糸の色を拾うピッチャーっていうのがあるから、
K>あ~、で、2本混ぜて、こんな色になりますって
鈴木>島精機さんのそのCAD上というかCG上で何番手のこの糸を、あ、糸もスキャンしてもちろん糸の種類、糸の形をスキャンして入れたりしますけど、色が全色手元にあるとは限らないので、それはもう色見本帳でピッキングして、色の配色を決めて変えていくっていうのでシミュレーションします。
10ピースファクトリーについて
K>基本ニットを作るってなった時、そうやってサンプルあげて、もちろんたまに立体で組んだりすることもあると思うんですけど、基本やっぱり工場ありき糸ありきだと思うんですけど、ちなみに、言える範囲で良いんでどういう工場とかお付き合ったりとか、どういう糸会社とお付き合いがあって、作っていってるのかなと思いまして。
鈴木>糸はやっぱり澤田さんが多いかなあ。澤田さんとか近藤株式さんとか滝善さんとか、お付き合いはありますね。丸安さんとかももちろんなんだけど、ただうち今2年前に自社で編み機を所有するに至り縁があって、10ピースニットファクトリーっていうバーチャルファクトリーの形でモノづくりをお手伝いしてるんですけど、それはカシミヤが多いです、ご依頼は。
それの派生形で今自社でエンドユーザのお客様からペットとかの写真、例えばくうちゃんの写真を私がいただいて、その写真をもとに島精機さんのその機械でシミュレーションでバーチャルに柄を起こして、それを自社の機械で一点物の枕カバーとかクッションのカバーとかそういうのを展開しようと今しているところなんだけど、それなんかはシミュレーションがすごく効きます。見えるかな、この辺とかがそうなんだけど、こっちがバーチャルで、これ実物の編地なんですよ。
K>すごいですね。ちなみにそれは何ゲージの機械で編まれました?
鈴木>これは12ゲージ。
K>ダブルジャガードですね。
鈴木>そうそう。4色ジャガードなんですね。こっちは紙だから裏何もない。だけどこれ実物はちゃんとこの編み目にちゃんとなっているので、
10ピースファクトリーは前からやっぱり気になっていまして、見た感じだと多くても10枚しかやらないですよと、もちろんそれ以上増えた場合は外部になると思うんですけど、ニットを知らない人が勉強する、こういう縁でこういう縁だからやってるんですよっていうんで、そういうサポート的な役割もすごい面白いし、今日さっきも見させていただいた基本一点物をやっぱり工場さんに作ってもらうのって申し訳ないじゃないですか。時間的なこともそうだし、売り上げのことも考えると、ってなったときに自分たちで所有してんだったらそれはそれで採算取れますよね。
鈴木>そうそう。そうですね。工場の社長さんにはもちろん、私たちが行って編み機を動かすわけじゃないから、セッティングして動かしてもらうというのは委託してお願いしているので、それは加工値みたいな形でお支払いしてるんですけども。
だけど、それ以上に、1枚2枚を動かすのに先様の機械を使っていただくわけにはなかなかいかないじゃないですか。
K>そうですね。サンプルだけっていうのは一番工場にとっては痛手ですからね。
鈴木>こういう柄のプログラムを工場さんに作ってもらうというのも、その時間がすごく申し訳ないから、やっぱりうちにそのCGがあるからできることかなあと思いますね。
●糸や工場について●
K>ちなみに糸を選ぶ上で、例えば糸を選ぶときにイメージだったり、最終的な値段だったりとかもあるっておっしゃいますけど、糸を選ぶ上でどのようにして糸を選んでるのかっていうのと、
あと工場ですね、工場も、その言っていた、背景に何の機械があるとか、あるいはロットがいくつかっていうのもあるんですけど、その辺の選定の基準みたいなものがありましたら教えてほしいと思いまして。
鈴木>工場さんを選定するっていうか、選定するというよりやってくれるって説得、納得してくれるかの方が大きいかな。
うちそんなやっぱりOEM、ODMって言っても、そもそもがアパレルさん側というか、企画する側と契約している場合が多いので、取引工場さんは決まっていることの方が多いんですよ。そこをこうやってうちが自前でやるってなってくると、本当の小ロットのニーズにお答えするってところに特化してるから、色々な工場さん知っていますけど、やってくれるって言うところはなかなか無いですよね、話に賛同してくれるっていうか。
だからどちらかと言うと一人二人でされているような家内工業的な先様がやっぱ多いし、そういう方たちと「既存のスタイルでは皆やらないようなことをちょっと面白がってやってみようか。」って言って「鈴木さんそんな考えるの面白いね。」って言って、なんか笑いながら付き合ってくれるようなところとやっています。
K>それはあれですよね、工場にもよりますもんね。やっぱりね、効率化図って数出してほしいって言うところもあれば、新しいものをやりたいとかそういうところもありますもんね。
鈴木>そうそうそうそう。そこの感覚が共有できるかどうかっていうのが一番かなあと思いますね。そうじゃなかったら向こうも気乗ってやってくれないじゃないですか。
K>はい。その工場さんが決まってるっていうのはあると思いますけど、20年やる中で例えば中国だったりとか新しい工場が開拓とかもしているとは思うんですけど、それっていうのはどのようなタイミングとか、どのような基準で開拓とか新しく増やしたりしているのかなと思いまして。
鈴木>それはやっぱりお客様ありきなので、極端な話16ゲージでゴム地で成型やりたいんですって言われたら、誰かやってくれる工場無いか探す、みたいな。
K>16ゲージ自体やっぱり持っているところ少ないですもんね。
鈴木>そうなんですよ。16ゲージでRTを持ってる工場さんじゃないと出来ないんですよ。島精機さんに「RT今持ってるところどこか知りませんか?」とかね。昔のお付き合いで繊維工場さんの社長さんとか、やっぱりのこの業界で古株の方とかにそういう時はSOSの電話をして、「こんな案件があって工場さん探してるんですけど、どこか紹介してもらえないですかね?」って言って探すとかいう感じですかね~。
K>中国でも背景があって作ったりしているんですか?それこそ手横とかは。
鈴木>昔はありましたよ。今だから逆にその中国生産でそれこそロットがいるじゃないですか。だから難しい場合の方が多いですよね。
K>インプルーヴで仕事を受けるっていうのは、どのぐらいのロット数でやってる感じですか?200とか300枚ぐらいの単位ですか?
鈴木>なんか今言われているのは、もうどうしようかなっていう中途半端に30枚とか。でも受けてあげたいけど、うちの機械で受けるかなあとか思ったりしてますけど…。そんなのもありますよ。
とか、ワンピースで一型で150枚ぐらいとか、そういう案件もあったり。追加追加でね、結果最終150枚になったね、みたいなところもあったりしますけど。まあ100枚前後あったらうちとしては、私としては多い方ですね。
K>今って年間どのぐらい受けていて、今まで何千型くらいやってるのかなあってすごい単純に気になったんですけど。
鈴木>あ~、5、6年前で8000型は超えてたから…
K>めちゃくちゃすごいですね。
鈴木>その時点でやっている型数は。でも今は、どうかな。年間ベースで言ったら100はないかもしれないね。100型くらいかな?
K>それでもやっぱりいいですね。ちなみに立体でニットを組んだりしている社員さんとかこの間居たと思うんですけど、それってやってるのはニットソーの方なんですか?それとも丸とかカットソーに近いものもインプルーヴは作ったりするもんなんですか?
鈴木丸編は…ん~難しいね。トワール組んだりするのは何でも全部1回組むんですよ、ほとんどのものが。
K>それはでもシーチングとかじゃなくて近い生地でってことですか?
鈴木>あ~そうそうそうそう、近い生地で。それはシーチングじゃなくてなんて言うのかな、スムースの生地を買ってきたりとかして、シーチングの代わりにして、うちのパターンナーがトワールを組んである程度イメージを固めてから型紙に起こすっていう作業を基本的にしてますね、うん。
K>それはニットソーだったり、ニットカットのアイテムでってことですか?
鈴木>ううん、成形品でも全部トワール…
K>成型も一回組んで、形でイメージを共有するみたいな感じなんですか?
鈴木>工場さんに送る前に確認したいっていうのももちろんあると思うんですけどね。デザインものが多いから、うちが企画する場合って。普通に丸首のセーターとかってことではないことの方が多いので、ディテール、襟の部分のイメージだったりとかそういうのはやっぱりトワールで組んでやります。やりますというかやってくれます。私がやるわけじゃない(笑)
K>今ってちなみに、お二人居られるんでしたっけ?
鈴木>私とパターンナーの2人です。同じ会社だったの。
K>あ~そうなんですね。その方もニットとかパターン…
鈴木>パターンナーで就職して、たまたま配属されたのがニットパターンナーのチーフの下で、パターンの勉強されたっていう感じです。
ニットの勉強や成長できる環境について
K>それは良いですね。ちなみに、なんかこの間インターンの子とか来てるみたいなこと言ってましたけど、結構学生さんが勉強しに来たりとか、新卒を取ってないにしろ何かそういうことをやっていたりもするんですか?
鈴木>業界、業界って言ったらすごく大層、うちなんかが大層なんだけど。でもひしひしと感じるのは、そういうことを勉強したことがある後継者、後継者というか後続の後輩たちの存在がどんどん減ってるっていうことにちょっと危機感を感じているわけですよ。
私たちがに入社して会社で勉強できた頃っていうのは、やっぱり先輩もたくさん居たし、新卒の採用を毎年取ってたりとか大手さんだったらしてくれていたけど、今はもう専門学校を卒業してもデザイナーで就職はなかなかなくて、皆販売とか…
K>そうですよね。なんか最初の1、2年目はそれこそ販売員で、デザイナーの枠が空いたらそっちに移動させるみたいな感じですもんね。
鈴木>うんうん。その中で今度またそれがニットの業界でってなったらもっと絞られてくるわけじゃないですか。だからその会社でたまたまそういう仕事に携わることになったとしても、上に教えてくれる先輩が居なかったら、やっぱり編み機のこと機種のこと工場さん、産地のこととか、全然インプットできる情報量がすごい少ないと思うのね、今ってね。だからなかなか成長しづらいんじゃないかなって。人が増えづらいっていうか。
K>そうですね。さっき言っていたニット部門が居なくなってカットソーの人たちが移動してきたのもありますけど、その人達すらも居ないところとかはやっぱり全然ニット知らない人がなんとなくで工場さんとおんぶに抱っこでお願いしているっていう現状が多いって聞くので、そういった意味でもニットってやっぱり知れば出来る人が少ないから食いっぱぐれないけど、もっと増えてほしいなっていうところですよね。
鈴木>そう。逆にね、工場さんサイドで色々な工場さんとお話してるとね、皆さん決まっておっしゃるのが「今時のデザイナーさんってね、写真を送ってくるだけでね、何にも分かってないんだよ。」みたいな事皆おっしゃるんだけど。
「分かってないっていうか分かる術がないんだもん仕方ないじゃん。」って多分若い子たちは思ってるんじゃないかなっていう側面を感じていて、だから私たちはそういう意味で工場さんから「絶滅危惧種や。」ってよく言われるんですけど、でも絶滅危惧種からいいねじゃなくて、やっぱり絶滅しないようにちょっともっと広げな増やさな、っていう思いがあって。
K>そうですよね。それこそ今産地の学校とか、セコリの宮浦君とかが立ち上げてて、やっぱ産地気になっているデザイナーとか一般の方ってすごい増えてるんですよね。それこそ鈴木さんも請け負っている、例えばデザイナーとかブランドあると思いますけど、多分鈴木さんに丸投げするよりかは、ニットをどんどん勉強してて知って、知った上でもっとこうしたいっていうんで、鈴木さんにお願いした方がもっともっと良いもの出来るじゃないですか。
鈴木>うんうん。
K>だからもっとそういう勉強できる機会、知る機会っていうのが増えてたらニット自体のクオリティも上がるし知りたい人とかももっともっと勉強できますよねっていうのは思いましたね。
ちなみにこの間話した時は僕も精華大学で簡単なんですけどニットの授業やってるんですけど、今って鈴木さんはどこで教鞭を執ってらっしゃるんでしたっけ。
鈴木>今うちがお受けして行っているのは、大阪モード学園のキャリアコースっていう夜間のオプションコースの工業ニットの上級っていうやつをやっています。あ、ニットスペシャリスト上級やったかな、コースとしては。
K>それっていうのは短期コースで、それとも他のやつを勉強している中の一つの…
鈴木>短期で募集、応募して受けたい人が受けに来るって感じみたいです。
K>そうなんですね。それはちなみに全何回ぐらいあるんですか?
鈴木>今回コロナでちょっと時短になって、時短というか1回を延長にして13回になったけど、1回当たりの時間数を増やして。通常は16回です。
あとは上田安子服飾専門学校も行ってるんですけど、上田安子さんの場合は昼、3年生が受けるコースで半年行ってて、その半年の中で私が教壇に立つのは5回です。
K>あそこもニットのそれこそ島精機さん、ホールガーメントでしたっけ。
鈴木>ホールガーメントじゃない。SES。
K>あるけどやっぱり動かせる人がいないし、テクニシャンさんもあまり呼べないから全然動いてないって聞いてますけど…もったいないですよね。
鈴木>10年ほど、教室もクラスもなかったんですって。学校の中に。編み機が置いてあるだけでニットを教えるカリキュラムの中にそういうコマ数もなかったらしい。だけど、やっぱり世の中にニット製品がこれだけファッション商品の中にあるのに、自分の学校が教えてないっていうのはちょっとおかしいんじゃないかと、はたと気がついたんですって、って言ってました。
K>ガーナさんが入ってからっていうのもあるんですかね?
鈴木>ガーナさんはその後じゃないかなあ。あ、違うわ。ガーナさんは居たのかな。彼は手編みを教えていたんですよ。
彼はどっちかていうと、手芸よりというかハンドの世界が得意な人なんで。でもその工業ニット、コンピューターの編み機を動かすニットっていうところのデザイナーさんを育成しようっていうのが、大阪モードも上田安子さんも両方とも共通して今始められているところです。
K>あ、そうなんですね。じゃあ結構その工業ニットの何が必要かとか、プログラミングの話とかも話している感じなんですか?
鈴木>そこまでは話してないけど、こういうのがあるよ、ぐらいは紹介しています。何を教えるってもうそもそも専門学校さん丸投げで、特にテキストがあるわけでもないし、16回どうしましょう?なんかお願いします~みたいな感じだから。
どうやったら学生さんが飽きずに話聞いてくれるかなって試行錯誤しながら毎回テキストをパワーポイントで作ってオリジナルで持って行ってます。
K>なんか今うちがちょうど梅林さんとかと組んで、編地付きのニットの教本みたいなのを作れたら面白いんじゃないかって。澤田さんの糸の宣伝にもなるし、それこそ糸から調理できるから…やっぱり糸そのものと編地見ないと分からないじゃないですか。ニットって。なんかそういうの出来たらなあって。
鈴木>そうそう。それはね、同じ事思ってました私も。
K>ぜひとも、鈴木さんも加わっていただいて何かご指導頂けたら…こういうの増やした方がいいんじゃないの?とか。
なかなか多分、売るまでちゃんとするのは難しいと思うんですけど、でもそれがないと始まらないのかなって。それこそ布帛の人でもニット知りたいっていう人がすごい最近増えてるような気がしてて。それでニットアイテムしたいって時に、完全に任せきりってよりかはやっぱり知ってどんなこと出来るっていうのが増えた方が、ブランドとしての価値も上がるのかなあとか思って。
鈴木>そう思います。だから私ね、学校で教えているときどっちの学校もそうなんですけど、実は滝善さんにご協力いただいて、シーズン落ちのプレゼンマップ、素材の番手が書いてあって、名前があって、特徴が書いてあって、生地見本が貼ってあるっていう、あそこ毎年マップを作られるんですけど、そのマップのシーズン落ちのやつをごそっと提供いただいて、学生さん達にそれをスクラップするっていう時間を設けているんですよ。実際に糸の種類がこんなにあるとか、基本学生さん達って細い糸をあんまり見たことがないっていうか…
K>ああ、そうですね。手芸店にある糸とコーン巻きの糸は仕様が違いますもんね。
鈴木>そうそう。あんな細い番手なんて基本売ってないじゃないですか。一般には。だから48番双糸の糸がどうとか26番単糸のストレッチがどうとか、そういうのって実際手にしてみることで、「え、同じ糸でこの編み方がこういう風に違うんですか。」とか、そういうことを感覚で理解してもらうって思うとそれが一番早いなと思って、滝善さんにご相談したら「ええよ~。」って言って毎年送っていただいて、学校に寄贈しながらするんですけど。
そういう中で思うのが、テキストを作った時にちゃんと揃ったものがそこに添付されているっていう風になるのが一番テキストとしては望ましいので、機械買ったときに実はいつかそういうことが出来たらいいなっていうのも思ってはいたんですよ。
K>いやでもそこまで考えてやってらっしゃるなんて素晴らしいなとは思いますね。僕自身やっぱり毎日が勉強だし、人に会うことによって新しい工場とか新しい機械を見ることによって自分自身が知る機会もあるっていうのでまとめてて、それを色々な人に知ってもらいたいなっていうのがあるので、やっぱり鈴木さんみたいな先駆者の方とかしっかりODM、OEMやってる方がそうやって誰かに伝えるということをやってるっていうのはすごい嬉しいと思います。
鈴木>あ~いえいえいえ。仲間がいるっていうのは私も嬉しいですよ。田沼さんとか梅林さんもね~。
インプルーヴのプライベートスクールについて
K>今後ニットを勉強したい、ニット自体やっぱり学校少ないじゃないですか。それこそ東京の文化さんでも2年目から勉強して2年間だけとかって、ガッツリニットを勉強する場所が少ない中で、これからニットを勉強したいとかニット業界入りたいと思っている人にアドバイスとかあればな、って思って。
鈴木>そうですね、アドバイスになるか分からないですけどご紹介させてもらうと、うち一応プライベートスクールっていうコンテンツを提供はしているんですよ。
個人の人で学びたいという方に基礎コースから、学校で教えていることをもう1回コンテンツを30分単位ぐらいに分けて、2コマ3コマとかで来れる時間でお話を聞ける、お話出来るようにっていうプライベートスクールっていうコンテンツはうちで持ってやってます。
それで言うと、一つ企業さんでニットアパレルを始めてるんだけど、やっぱり自分たちで立ち上げたセクションだから、先輩も居ないし素地がないので試行錯誤しながら香港の貿易公司とやり取りしてるけど上手くいかんっていうのでご相談いただいのがきっかけで、今企業のデザイナーさん向けに同じように研修してるんですね。2年目に入って今も実践コースになったりとかしてるんですけど、年間で時間数を月間で決めて、デザイナーさん達にデザインの仕方を教えるっていうようなこともやってます。
K>ちなみにそれって企業のデザイナーの人達が、知らないから企業側がお金出して来てるんですか?
鈴木>あ~そうそうそう。その会社の事業部が自分達で予算組んで、捻出してやってはります。
K>ちなみにそういう人達は何歳ぐらいの人達なんですか?
鈴木>20代後半かなあ。セクションの部長さんは30代後半かなんかだったと思うんですけど。
K>いいですね、そういう機会があるっていうのは。それこそ島精機さんで島の機械買ったら一応勉強できる~~~~(40:51)じゃないですか。でもやっぱりあれは初歩的なことだったりとか、量産前提とかで考えてなくて基礎のキだったりするので、そういう場所も必要だし、それ以外に何か色々なところ学べるっていうのは、やっぱり必要だと思ってて。
それこそニットって考えるとやっぱり手編みの教室だったりワークショップだったりとかそっちの方が多くて、がっつり工業用ニットを学べるコースがあったりする学校があるってなったら気になる人は多分少なからず居ると思うので、それはめっちゃ色々なところに伝えたいなって感じです。
鈴木>だから私たちが業務委託契約でそのデザインの慣習をしてきた歴史を今踏まえると、私たちがずっとワーカーというか第一線で動いているというよりは、動ける人に私たちがやってきたことを教えて伝承していくことの方が私たちの年代的にもね、ポジションそうじゃないかなって思ってんねんね。
だから企業と私たちが契約するのは作り方を教える先輩の役目というか、そういうご契約がいいんじゃないかなって。ノウハウが会社に残るから。知的財産として、その会社に残るから。それを残していけるような仕組みを作れたらいいのかなとは思うんですよね。
●NPO法人cocoroito(ココロイト)について●
K>10ピースファクトリーの話を最初に聞かせていただいたんですけど、インプルーヴの授業以外でやっていることを教えていただきたいなと思ってるんですけど。
鈴木>1つは、ココロイトはNPO法人として、私が今一応幹事という形で5人の中の1人で参加させてもらってやってるんですけど、
あれは高齢者の人たちの生きがいづくりというか、学びから生まれる生きがいづくりっていうテーマで動いているんですけど、白鷺団地という団地のおばあちゃん達がそもそも対象で始まった手編み教室で何かものづくりをしたものを普通の一般の方が欲しいって買ってくださるような、「作ったからいらん~あげるわ」っていうような、そういう趣味ではなくて、ちゃんとなんかそれを誰かが欲しいって思われるようなものを皆で作って販売まで繋げていこうって。
それが本当の生きがいなんじゃないかっていうような実験的って言ったら変ですけれども、そういう仮説のもとに活動している経営者が集まってやっている活動ですね。
K>そのデザイン自体はじゃあ鈴木さんが担当していて…?
鈴木>私が担当しているわけではないですけども、手編みの先生が別にいらっしゃるんですよ。手芸の世界分からないから。ただ、糸の調達とか1つが出来上がるまでにはどんな工程が必要かとか、監修するのに同じ均一の商品になるにはどういうところをチェックして作っていかないといけないかとか、どっちかというとそういうところを見ている感じで、1個1個の商品をどういう編み方にするとか何を作るとかっていうのは編み物先生と相談しながら先生がレシピを作ってくれています
K>毛糸はなんか丸安さんとかも提供してるって聞いてたんですけど。
鈴木>うん。丸安毛糸さんにお願いして、かぎ針がし易いようにとか、ちょっと加工してもらったりとか既存のものを。太さ調整してもらったりとか、それは動いてくださっています。
日本手芸普及協会っていうのも、その参画の賛助会員さんの中に協力していただいたりとかしているので、そういう形で編み物の先生を派遣していただいたりとかしてますね。
もともとエムズさんっていう会社の桝谷社長が発起人なんですけども、こころいとの活動は。それと大阪府立大学がそもそも地元の地域の課題解決をするのにどうしたらいいかっていう会議の中で生まれたのが始まりなんです、あの活動は。
K>やっぱりその老人ホームとかで作ってて、それこそ認知症予防とかでやってるみたいなのはありますけど、そこだけで止まらずにそうやって生きがいを作ったりとか、それこそ社会貢献としてニットとか編み物が何出来るかって考えて構築させるっていうやり方はすごいめちゃくちゃ参考になりますし、これからもそういうのは色々増えていったらいいなと思います。
鈴木>本当に目指すは、それをインターネットで商品を紹介したりとかして、お買い上げくださる人とおばあちゃんたちが直接メッセンジャーとかでやり取りをしたりとか、色をオリジナルでちょっとこの色を変えたいんだけどとか、そんな話をカスタムメールとかもできるようになったら一番作る側もやりがいに繋がるし、もらった方も思い通りになったらすごく嬉しいだろうし、そういう連鎖になったらいいなっていうのは理想としては持っているんだけどね、なかなかそこまではまだいってないんだけど。うん、そんな感じですかね~。
K>面白いです、ココロイトは。
●作り手の思いを着る人に届ける●
鈴木もう一つね、別に活動をやっているのがあって。それは作り手の思いを着る人に届けるっていうテーマで、やっぱり経営者の方達で集まって5人ぐらいでやってるんですけど、それも研究会みたいな形で3年ぐらい前からやっていて。
そこにいるのはお洋服の小売店の専務さんとか、ニットの製造業されている工場の社長さんとか、織りネームとかパッケージを手配するお仕事をされている会社の社長さんとかで集まって、大量生産大量消費じゃなくて本当に作りたいだけの量をそれが欲しいという人に欲しいだけを届けるにはどうしたらそのビジネスモデルが作れるだろうかっていうのを3年ぐらい前から色々なんだかんだやっている集まりで。
そこから最終的に今回やっと製品化まで1つ行っているのが、高身長男子の人のためのかがんでも背中が見えないセーターっていうふうのを今売り始めてます。
K>なるほど。後ろの丈がちょっと長めに作ってあるとかそういうのですか?
鈴木>いや、背丈全体に長いんですよ。背が高い男の方です。たまたまそのメンバーの私以外の4人が皆背が高いんですね。横に大きいんじゃなくて背が高いのはLLとか3Lとかでも賄えないんですって。横にだぶつくだけで身長に対してのケアはそんなにブレンディングされてないから、納得いかずに短いLを着るらしいんですよ。
袖丈とかも何か違うんだって。だから袖丈とか丈に長さをちゃんとしてあげているLサイズ、それも189センチの人がモデルなんだけど、それらの人がぴったりになるように、それをベースにしたサマーセーターを今作っています。
もう一つそのサマーセーターである理由は、業界的に夏すごく落ち込むというか。片や、日本の気候は冬は減ってるわけですよ、どんどん温暖化で。だから春夏秋の期間にいかにニット製品で人が快適になるとか、喜ぶものを作れるかっていうのはすごい喫緊の課題だと思っていて、そこへの実験でもあるんですけどね。
K>いいですね。
鈴木>なのでそこで使っている特殊な糸なんだけど、4大消臭を叶える糸で加齢臭とか汗くさい臭いとか、その臭いのもとを吸着して拡散させない、なんか雑菌と一緒に結合するから臭いになって出るんだけど、その前にキャッチしてしまうっていう機能を持っている糸があって。
それは横編みの製品用には開発されてなかったんだけど、それを糸屋さんと色々やり取りをする中で横編み機にかかる撚糸とか太さとかオリジナルで作っていただいて、今それを製品化というところまでこぎつけたって感じなんですよ。なのでその糸はうちからでしか買えないという形になってるんですけどね、今のところは。
K>ちなみにそれキロおいくら位するんですか?
鈴木>6000円ちょっとします。
K>いい感じの値段ですね。やっぱスポーツウェアとかがどんどん進化していって、それこそ防虫防菌とか撥水とか当たり前に出てるので、そういうニット製品が増えるっていうのはすごい嬉しいですね。
鈴木>うんうん。そうね、なんか機能に特化するんじゃなくて、快適で外に出て行くときにちょっと小洒落たというかね、ちょっとお洒落な気持ちになれるんだけど、実は心の中のお客さんと会ったときにいつも僕ちょっと汗っかきやから何か気になるなあ、なんて思ってる心の中を軽くできたら尚良いかな~みたいな。そんな挑戦もしてます