「これがニットで生きる道」はオンラインインタビュー企画です。
その仕事の内容や、仕組み、やり方、稼ぎ方など、他の媒体ではなかなか聞けないことを、あなたに変わってニッティングバード の田沼が取材します。
ニット業界を盛り上げ、仕事にしたいと思うきっかけのひとつにしてもらうために、様々な仕事を掘り下げていきます。
ニットに携わるデザイナー、OEM・ODM、作家、アーティスト、経営者、ライター、ヤーンアドバイザー、プログラマー、手芸店員、撚糸屋、紡績屋などあなたが知りたい「編み物(ニット)」の仕事をしている人を追っていきます。
動画でも見ることができますが。文字起こしもしましたので。ご自由にご覧ください。
「これがニットで生きる道」第4回目ゲストはファンシーヤーンで有名な京都の「モンドフィル 」さんで手編みのニットの生産管理や毛糸の小売の営業企画をしている小嶋亜衣さんです。
モンドフィル はいまでこそ、一般の人にも認知される毛糸をつくる会社ですが、もともとはメーカーやブランドが工業用のニット製品を作るための毛糸を販売していました。
小嶋さんの仕事はメーカーやブランド側が外注先としてモンドの糸を使ってニット製品の生産管理、そして手芸糸としてモンドのファンシーヤーンを小売するための営業企画です。
手編みニットの生産管理の難しさ、手芸用毛糸をどのようにユーザーの元に届けているのか貴重なお話が聞けました
モンドフィル 株式会社HPはこちら→http://www.mondo-fil.com
経歴とモンドフィル に入るまで
Knittingbird 田沼(以下K)>小嶋さんの経歴を教えていただきたいです。ニットに関係なくてもいいんですけど、専門学校から前の居た会社から今モンドフィルさんに入るまで教えてください。
モンドフィル 小嶋(以下小嶋)>
文化服装学院に入学して、全然ニットをやりたいとかじゃなかったんですけれども、色んな科があって見学していくうちにニットデザイン科に進学しまして、そのまま山形の紡績工場もある会社に入社して糸についてやっていきたかったんですけれども、希望の部署につけず。ずっと縫製を山形の方ではやっていて、もっと糸に近いところに行きたいなっていうので今のモンドフィルに転職しました。
K>文化服装学院ってたしか2年目からニット選んで、2年目と3年次がって感じですよね?ちなみに1年目のときはコースというか、何科に行った感じなんですか?
小嶋>
1年目は服飾の全体的な基礎を勉強して、2年目から色んな科が。パターンに強い科ですとか、デザインに強い科に分かれていく中で、ニットデザイン科を選ぶことになって。
見学があるんですね。1年目のこの後どのコースに進むか、みたいな。その時に最初はパターンナーを目指して入ってたのでパターンの科を見学しに行ったんですけれども、空気的に「あ、私ここじゃないな。」って思ったりして、結局全部の科を見たんですけれども、デザイン科とか。でもしっくり来なくて、それでニットデザイン科を見学しに行った時に「あ、私ここだ!」ってなったんですね。
特に手編みがすごく好きとかそういうわけじゃなかったんだけれども、もうその科の空気的なものが気になってしまって、ニットデザイン科に入りましたね。その時はかぎ針編みを趣味ぐらいにしかやってなかったので、棒針編みも出来ないですし、家庭機っていうのも存在すら知らなかったんですよね。なので本当にフィーリングで決めたっていう感じなんですけれども。
K>文化服装の当時小嶋さんがいる時って、設備的にはどんな感じだったんですか?手編みとか、かぎ針とか棒針とかも勉強しつつ、家庭機とか手横とかもあって、なんか自動機もあるイメージなんですけど。
小嶋>
そうですね。すべての基本は手編みからっていう感じだったので、手編みから入って徐々に家庭機、手横、そのうち工業用網み機。全部で作品を作るっていうのでこなしていく感じだったんですけれども、やっぱりメインは手編み。機械とかが全員分あるわけじゃないので、家庭機は一台あるんですけれども、自動機は交代しながらやっていくっていう感じだったので、あんまり自動機については学生の時にはそこまで一人で触れるってところまではちょっと難しいかなっていう。原理を知るっていう感じですかね。
なので正直工業機について、仕事で出来るようになるまでって言ったらやっぱりその先の就職で必ず島精機さんの研修とか、そういうのに行ってって感じですね。
K>卒業して就職するって時に、ニットの仕事でもこれやりたいっていうのは決まっていたんですか?
小嶋>
ニットの仕事っていうイメージがその学生の時の私にはまったくなくて、デザイン画を会社で描いてとか何かそういうものは頭に無くて、ただファンシーヤーンが好きだなっていう感じだったんですよね。先生からも糸好きでも使わなければね!みたいな感じで言われたりとかしてたんですけど、そういうのがあって山形のファンシーヤーンに強い紡績工場持ったところに入社する流れでしたね。
K>紡績工場で縫製やってたって言いますけど、基本的にはリンキングとかじゃなくて、カットのロックとかも一通りやっている感じなんですか?
小嶋>
そうですね。一応会社では全部の部署を一回体験してもらって、色んなところに交代しながらついていくっていう感じだったんですけれども、私は縫製の方で勉強させてもらって。他の紡績とか編み立てとかも研修したんですけれども、そのまま縫製に結局ずっといる形でしたね。
K>難しいですよね。他の会社も一緒ですけどそれこそ、入りたい会社に入ったとて、それがやりたい部署になるとは限らないじゃないですか。
小嶋>
そうですね。ただ縫製に入って良かったのはプロセスが分かる。編み立てと、私の居た部署で製品を組み立てて、次の工程で製品のどういうところを検品していくかみたいな、流れは真ん中で分かり易かったっていうのはありがたい場所だったなって思いますね。
ニットの傷とかって独特というか、ファンシーヤーンいっぱい使っている会社だったので傷が結構多かったりとかしていて、縫製しているとやっぱりずっと編地に触っているので、そういうのをどういう風に対処していくかとか、糸にこういう問題があったとか、そういうのはいっぱい経験させてもらえたので、今のモンドフィルに入ってかなり役に立った経験だったんだなぁって思いましたね。
手編みのニット製品の生産管理の仕事
K>今モンドさんでは、生産管理・小売営業・企画って聞いていますけど、具体的にどのようなことしているのかなって。一連の流れというか、やっていることを教えていただきたいです。
小嶋>
少ない人数の会社なので、なんでもやるって言う感じなんですけれども、普段の業務で言ったら、受けているOEMについての生産管理で、多分珍しいと思うんですけど手編みをメインに私は受けていて、他の工場さんとのやりとりとかだけで終わるものは、その担当の営業さんが進めているんですけれども、私は編み子さんと一緒に仕事をしていくっていう感じなので、手編みならではの細かい傷というか、ちょっとした編目みたいなのを確認していったりとか、糸の組み合わせ、サイズみたいなのを編み子さんと相談しながら進めていくっていう感じですね。
工業製品、工場で作るやつは一度に何百枚っていうのを作るのに特化していて、そういう用の生産とかは向かないと思うんですけれども、手編みは逆に一度にあげることが出来ない人の手で作っているものなので、どうやったら流れが切れないでずっと続けてもらえるかとか、人がやっていることはやっぱりモチベーションというか。家で作業してくださる方々が多いので、ていうか全員そうですね。組合とかでやってる方は本当に少ないんですけど、そういう普段の生活のことから相談しながらとか。本当に一緒に一から作っていくみたいな。ちょっと工場とは全く違う感じでしたね。
K>その背景っていうのはどうやって探しているとか、もともとあったものを、とか。
小嶋>
今まで会社に居てくださった方が辞めてからもモンドの仕事をやってくださったりとか、あとは私が入社する前に広告とかで募集をしたりしていたんですね。その時縁があった方々と今もずっとやっているっていう感じです。
K>その人たちは結構近くに、京都の近くに居たりしますか?
小嶋>
そうですね。主にやってくださっている方はやっぱり京都の方が多いです。どうしてもちょっとずつ手編みのものが上がってくると、荷物の数が増えてしまうので市内だと来ていただいたりとか。ちょっと送料とかが気になってしまうので近い方だとありがたいなっていうのと、手編みなので顔を合わせてお話できる方がお互い安心して進められるので、どうしてもちょっと近くの人が多くなってしまいますね。
K>ブランドさんとか、そのアイテムによって違うとは思うんですけど、生産量ってワンアイテム少なくてどのぐらい、多くてどのぐらい生産してるものなんですか?
小嶋>
そうですね。難しくて少ないものだったら30とかかな。多いものでは400、500ぐらい。
K>すごいですね。
小嶋>
それは逆にちょっと小さいものというか、
K>小物って言う感じですね。
小嶋>
そうですね。アイテム的にはそんな感じですね。
K>うちも手編みの背景が淡路島とかにあったりしていて、多分同じような境遇なので色々編み手さんの気持ちだとか生産を管理するっていうのはすごい分かるんですけど、
例えばファッション業界ってやっぱり納期とか流れがあるじゃないですか。ファーストサンプルして生産もらったものはいいけど、結構量が来すぎちゃって編み手さんにちょっと迷惑かけたりとか、早くしなきゃ、みたいなのもあると思うんですけど、その辺のコントロールとか、一人が何個作るか分からないですけど出来ればあんまり人の数が増えずに、アイテムブレないで一人の人がやった方がいいじゃないですか。そこら辺も含めてどんな風な管理の仕方をしているのかなと思いまして。
小嶋>
そうですね。やっぱり事前にどれぐらいの枚数を予想しているかっていうのを、最初の注文いただく時に聞かせていただいて、最初はそれベースにお話して今おっしゃったように後から枚数がっていうのはあるんですけれども。
とにかく事前に手編みであることのデメリットがどうしてもあると思うんですね。乱寸ですとか、生産数、それをできる限り最初にお伝えして、これでもものすごく枚数が来そうってなったら事前にそういう説明をしているので、枚数を向こうで計算中に、これはちょっとまずいぞっていうのが分かった時点で教えていただいて、本発注の前からも進め始めたりとか。あとは分納とか、納期を出来るだけ長く出来るように相談して進めてるっていう感じですね。
常に編み子さんをフルで回している状態は出来るだけ避けているんですね。編み子さんの都合によって枚数が上がったり上がらなかったりとかはあるので、私のなんとなくの感覚にはなるんですけれども、この人の手とこの人の手の相性が良いから何となく例えば2、3人チームとかで進めてもらって、枚数を割り振っていって、早い人と丁寧な方はちょっとゆっくりになってしまうので、そういう方々の間で調整を取っていく形を取っていると、予想外の枚数が来た時でも今までなんとなくこなせてるっていう感じですね。
やっぱり丁寧でゆっくりな方達だけでチームを作ってしまうと、そういうのには対応が出来なくなっていくので、普段の日常会話を含めてお話させていただいている中から、なんとなく予想していって、枚数のキャパが超えても大丈夫なようにっていうのはある程度考えてはいます。
やっぱりダメな時は空いてる人にとにかく入っていただいてっていう風にはなりますね。そういう時に製品の仕上がりがブレないようにサンプルをとにかく見ていただいて、編み図とサンプルを見た時、その仕上がりのギャップって編み子さんもあると思うので、そういったものを出来るだけ無くしてやってもらうと、手編みの乱寸も出来るだけ防げるのかなっていう感じでやっていますね。大丈夫ですか?これで。
K>めちゃくちゃ分かり易いです。ちなみにその編み子さんっていうのは年齢的に何歳ぐらいの人が多くて、何年ぐらい手編みを仕事としてやっている方がいるのかなって思って。
小嶋>
そうですね。ちょっと詳しくは聞いたことないんですけれども、何十年もこういう仕事をされている方も居れば、ここ数年でそういった仕事をしてみたいって言って相談を受ける方・・・。結構量産っていうよりは手芸メーカーさんの一点サンプルとか、そういったものを少しずつこなしている方とかが多いのかなって思いますね。
でもまあとにかく私よりもベテランの方が多いですね。50代でも若い方なんじゃないかなっていうイメージがあります。編み子さんについては。
K>モンドさんの毛糸ってやっぱりかなり面白いファンシーヤーンだから、イメージ的に結構派手なデザイナーズブランドとか、難しい製品とかを作るデザイナーズブランドから受注が来るイメージなんですけど、そういうのってあったりするんですか。そういう時、編み手なんかとやる時にどうしてるのかなって。
糸はファンシーであれ普通のセーターの形とかならまだ普通に話できると思うんですけど、結構形的にもとか、こんな糸の使い方するんかっていう難しい時があるような気がしたんですけど。
小嶋>
うちの編み子さんに何度か言われたことがあるんですけれども、うちの仕事の糸の使い方とかはやっぱりファンシーヤーンが多いので、独特な編地が多いみたいなんですね。ただ、もう正直になれたっていう風によく言われる時もあるので、やっぱりちょっと私も含めなんですけれども、技術的なものはもう一緒に勉強していくっていう感覚で今のその仕事をこなせるようになってるのかなって思います。
なので特に私からは難しいので注意してくださいって言うよりも、サンプルにとにかく寄せていくように、風合いについて注意していくっていう感じですね。ブランドさんにもよると思うんですけれども、複雑なものとかすごくメートルの長いものとかだと、編み図通りに編んでいっても同じようには上がらないので、同じ人が編んでも上がらないですし、色んな人が入っていけばそれはそれで差が出ていくので、寸法重視で編み図を調節したりとかはたまにやってますね、臨機応変に。
K>モンドさんの毛糸って結構ファンシーが多いから結構太番系の方が多いイメージなんですけど、あんまり細い糸とかでやるよりかは結構太い番手とかの仕事の方が多いんですか?その手編みの人の・・・
小嶋>
そうですね。必然的に冬物の注文をいただくことが多いので、やっぱり太くはなっていきますね。細番っていうものに関しては家庭機ですとか、工業機のあるところに協力してください、みたいな感じで進めていくので、私は主に冬物が多いですね。
手編みの糸の縮絨ソーピングについて
K>
基本的に手編みで上げたものっていうのは、機械編みでやっていたみたく、1回縮絨したりとか洗いはかけないんですよね?手編みで完結してる・・?
小嶋>
洗う方がもっと良く見える糸ってあるじゃないですか。紡毛糸はやっぱり手編みで使ったら洗うようにしてますし、洗わないと風合いが出ないですっていう提案をしたりしてますね。
K>なるほど。
小嶋>
なので手編みの製品はよく洗わないっていうイメージがあると思うんですけれども、そういったところに関しては糸屋としてやっぱり提案するべきところはして、そういう工程を入れさせてもらうって感じですね。
K>なるほど、でも難しいですよね。洗わない方が手編みの風合いは出来るかもしれないけど、でもねもっと仕上げが良くなったりとか、あるいは堅牢度とかも考えると一回洗った方がいいっていうのも・・・
小嶋>
そうですね〜。まあ夏物に感しては間違いなく洗わないことが多いんですけど、冬物はモヘアとかもあるので、多分うちに手編みの仕事出してくださる方もやっぱりそういうことに詳しいので・・相談しながらですね本当に。ただ洗っても小物でしたら寸法も変わらないので、あまりリスクは最近感じないですね、洗ったりすることに。
よく寸法変わりますよね、とか相談を受けることがあるんですけれども、正直やってみないとわからないので、とにかくテストさせてもらうことがありますね。
K>生産管理めっちゃ為になりますね。特殊じゃないですか。それこそね、機械編み、工業機でやるならまだしも手編みの生産を管理するって。
小嶋>
そうですね〜。でも手編みの生産管理については、正直他にやっているところってどれぐらいあるのかなってぐらい多分少ない・・
K>そうですね、かなり少ないと思う。ニット工場でも背景で持っているところ多分少ないと思うし、それこそ手編みのオーダーしているところとか、自分が手編みやってて背景自分で作ってるところとか、あとは気仙沼ニッティングさんとかそういうところだと思うので。
それこそやっぱり手芸の中で手編みって時間かかりすぎるじゃないですか。アクセサリー作家さんとかと比べると。なかなかやっぱり仕事として成り立ってないのもあるし、もちろん好きな人はいるけど、ある程度定期的に仕事を振ってあげたりとか、しっかり仕事として成り立たせてあげるっていうのも考えてあげないとな〜とは思うんですけど、なかなかその辺は難しい問題ですよね。
小嶋>
いやもう本当に、勉強しながらここまで来たなっていう感じですね。誰もこういう手編みの仕事の出し方についてとか教えてもらえることもないですし、多分もっとバブルの時とか製品とかってやっぱり手仕事の多いものがあったので、そういうところはいっぱいあったと思うんですけれども、正直今の時代に合ってないような気がしてるのでどんどん減ってもいますし、正直私よりも編み子さんの方が詳しかったりもするんですよね。「こいう風に出したほうが分かり易いんだけど〜。」みたいな。みんなで相談しながら進めていく感じですね。
モンドフィルの毛糸の小売の営業・企画
K>生産管理以外に小売の営業とか企画もやっているとお聞きしてるんですけど、そっちはどのような感じでやっているのでしょうか。
小嶋>
小売に力を入れようってなった後に私が入社したので、本当に一緒に手探りでやってたんですけれども、イベントの参加をきっかけに後ろに並んでる糸の小巻の種類を充実していくところから始めて。
あとは本当にスワッチを編むのも本当に後々からやっと始められたっていう感じなので、最初はもう糸と糸の組み合わせを提案するところからですかね。
K>従来メーカーとかブランドに提案してた糸とは違って、手編み用の糸として改めて始めたっていう感じなんですか?手芸用の。
小嶋>
扱っていた糸がかなり手芸向きのファンシーが多かったので、その中から一般の方向けに使いやすいようなサイズを考えて出しているんですけれども。
うちの会社の糸の出し方で言ったら、いっぱい編む方には100g巻をお勧めしていて、最近は少量使いの作家さんも増えてるので、そういった方にも使ってもらえるように数十グラムの規格と、1種類で2つの規格があるものがほとんどなんですね。それでも多いっていう方のためにもっと小さい規格、メートル巻きでカットしていくようなものを提案するようになりました。
K>それってでも生産管理めっちゃ大変じゃないですか?
小嶋>
そうですね(笑)
K>自社にモンドさんって糸巻き機とかリリアン機とかあるじゃないですか。1キロとかでコーンが置いてあって、ちっちゃいミニコーンに巻きなおしたりとか、メートルでr切って売るという感じで対応してる感じなんですか?
小嶋>
そうですね。やっぱり卸は卸のやり方があってそっちしか知らなかったので、今のスタイルに行くまで結構色々あったと思うんですけど・・・
今のミニコーンのスタイルに落ち着いたのは、家に飾って欲しいっていう思いがあって。私じゃないんですけど、濱中がお客さんと話していくうちに、よく聞くなあって思ったのが、「押入れに糸しまってるんですよね。」って。
K>
はい。そうですよね皆さん。
小嶋>
この押し入れに眠っている糸でも、糸を見ているだけでも可愛いものとか色々あると思うんですけど、閉まっていたら忘れてしまいますし、勿体ないなっていうので、飾ってインテリアにもなるようなものを作りたいっていうことからミニコーンに巻いて、良かったら部屋にも飾ってくださいね、っていうような、そういう思いがあって今の形になっています。
K>素晴らしいと思います。ファンシーヤーンだからこそ、これだけ映えますもんね、置いてて。
小嶋>
そうですね。実際にカフェをされている方がイベントでお店やりますっていう風に購入してくださったり、お客様から、「ずっと飾ってみてはいるんですけど〜。」みたいな、実際にそういう使い形をしてもらっている人もいるので、やっぱり部屋にあって気分が上がるような糸っていうのは、こういうやり方が合ってたのかな〜って思いますね。
K>取引先さんって今だとAVRILさんとかも置いてあると思うんですけど、雑貨屋さん多いじゃないですか。
小嶋>
そうですね。
K>そういった意味で、やっぱりそういうインテリアとしてのコーンって相性もいいから・・
小嶋>
そうですね。雑貨屋さん・・・最初は雑貨屋さんに置いていただいてたんじゃなくて、ボタンをメインにした服飾資材屋さんのお店に置いていただいていて。それでたまたまその雑貨屋さんの方が見て、置かせてくださいみたいな、取引が始まってそれが繋がっていったっていう感じですね。
K>今ってちなみに卸先は何店舗ぐらいあるんですか?
小嶋>
実はあまり卸の方には力を入れてなかったので、営業しているわけとかじゃないので、今TODAY’S SPECIALさんとAVRILさんが主になっていますね。あとはお教室の先生からお声掛けいただいて、そのお教室の中で先生から提案していただいたりとか、そういったことが多いですかね。
K>その他は基本的にはオンラインでやって、たまにガレージセールもやっていて、ポップアップでイベント事と、そういう手芸関係の展示に出るって感じなんですか?
小嶋>
そうですね。色んな催事に最初は参加していたんですけれども、やっぱりそのイベントの空気感とか、小売担当している者が参加して楽しいイベントがだんだん分かってきたので、ちょっと前までは色んなところに出てたんですけれども、最近では私達のやり方に合ってるって言うか、楽しいなっていうイベントをメインに絞ったわけではないんですけれども、他のスタッフも色々兼業しながらイベントに参加したりしているので、ここのとこ今のスタイルに落ち着いてきたかなっていう感じですね。
ガレージセールはここ二年前ぐらいに今の後ろのスペースとかを作って始めたんですけれども、コロナの前までは月一ショップっていう風に変えて、月一回開けて近所の方とか遠方も来ていただいたりだとかしていましたね。イベントよりも全部ここに揃っているので、色々知っていただくにはいい機会なのかなっていう風に思います。
ガレージセールも定期的にしていて、糸屋ならではのちょっと困った在庫とか、B品とかじゃないんですけれども、OEMもやっているので、その時にちょっと間違えて手配してしまった糸とか、そういう一点物とかも置いているので、楽しいイベントを会社でやっているっていう感じになりつつありますね。
イベントも本当は色々出たいんですけれども・・・。
K>そうそう大変ですもんね。僕がイベント行くとやっぱり濱中さんがお一人で居られて、横浜とかもたまに車で来たとか言う時もあるからすごいなーと思ってて。
小嶋>
どうしてもちょっと糸は嵩張ってしまうので、車で行くことが多いですね。あとその横浜の素材博覧会っていうイベントは、濱中が一人で行って楽しいと(笑)逆に私ともう一人メンズのスタッフは、関西圏の方を頼むと。横浜は楽しいからちょっと行ってくる、みたいな(笑)
一回だけちょっと濱中 (モンド代表)の都合が悪くて行かせてもらったんですけれども、やっぱり同じスタッフがいる状況っていうのも、お客さんから安心して来れるみたいで、イベント毎に担当が決まってきてるっていうのもありますね。
K>小嶋さんって今この業界、ニット業界とか毛糸をやり始めて何年目ぐらいなんですか?
小嶋>
震災の年に卒業だったので・・・9年目ですね。
K>
結構長いですね。
小嶋>
そうですね〜長いですかね。でもやっぱりどこまでいっても先輩なので、
小嶋さんにとってニットとは
K>小嶋さんにとってこの9年居られたことで、ニットとは自分にとって、糸とはどのような関係性になっていますか。
小嶋>
作ることが好きな人に共通すると思うんですけれども、やっぱりその終わりってワクワクするものだなって思うんですよねえ。布と違って糸を組み合わせたりとか使い方で。表情がかなり変わっていると思うので、本当に自分だけのオリジナルを表現できるもの、だと思っています。
K>そうですよね。僕も織りと編みを比べるとき、織りってテキスタイルデザイナーだったり工場さんが基本的に生地を作って、生地を見たデザイナーさんの人がデザイン画を描いて、それを見てパターンナーさんがパターンして縫製をお願いするみたいな、一連の流れがありますけど。
編み物、ニットってこれを全部やるじゃないですか。糸一本を調理してテキスタイルデザイン的な事から編みながら成形とかシルエットを決めれるので、そこの楽しみっていうのは一番手芸の中でもある分野なのかなとは思いますね。
小嶋>
そうですね。ただ自由度が高いが故にどこまでこだわって作るかみたいな。そういう壁にはよく当たっていましたね。そういう上でここはやりたいけどここは詰められないなぁみたいな。
K>わかります。なんか本当に僕がこういう仕事してるのでやっぱ人に会うんですけど、本当に会う人会う人僕が知らない知識とか技術とかを出してくれてて、皆んなどこまでも良い意味で変態な知識とか持ってるから、なんか本当に人に会うのが楽しくてしょうがないなって思いますね。
小嶋>
製品とかも経験色々9年やってても知らなかった作り方とかに出会ったりとかもあるので、昔の本を読んだりもするんですよ。編み物の本。
K>それは何年ぐらい前の?10年とか、20年前のですか?
小嶋>
京都ってよく古本市とかあるんですね。定期的に開催しているのとか、本屋さんのイベントであるのとか、そういうので見ていくと昭和中頃から後期にかけての編み物の本が多いので、
K>カラーじゃないやつですよね。なんか白黒とかで。
小嶋>
そうですそうです。写真じゃなかったり絵だったりとかするやつを見て、こういうことをしているんだな〜みたいなのを時々発見して知識としていれたりとか、そういうのはやっぱり続けてますね。
K>それは楽しそうですね。
小嶋>
楽しかったり苦しかったり(笑)あとはとにかく編み子さんに教わったりとかもありますね。悩んだときには実際に聞いて、どっちがやり易いですかね、みたいな。こうやったら正解っていうのが無いのと、完成をどこで終わらせるかみたいなのが難しい。納得いくものが皆んなで作れたら嬉しいですし、デザイナーさんに喜んでもらえるとやっぱりちょっと止められないな〜この仕事、っていうのはありましたね。
ニット業界を目指す人へ
K>ニット業界とか、小嶋さんのような糸問屋さんみたいなところで仕事に就きたいと思っている学生さんとか後輩に向けての何かアドバイス的なのがあれば。
小嶋>
そうですね。やっぱりとにかく編むしかないかなっていう。ニットを見る、ですかね。最初の方とかは結構つまずいてたんですけれども、この糸とこの糸で作ってくださいって言われたときに頭の中でシミュレーションすると思うんですよ、皆さん。「その時に編まないと分かりません。」ってやっぱりなっちゃうんですけれども、そうなる前にある程度デザイナーさんとか注文くださった方に伝えておきたいこととかがあると、その先が本当にスムーズなので、色んな製品を見て、色んな糸を触って、とにかく体で覚えてほしい。覚えておいた方が良いんじゃないかな〜って思いますね。
私学生の頃あんまり製品洗ったりとか、そういったことはやってなかったんですけど、前勤めてた工場でファンシーヤーンをいっぱい使ったセーターとか、そういうのは必ず洗ってたんですよね。多分どの工場さんでも洗ったりとかはあると思うんですけれども、洗った後の表情っていうのも全く編み上がりと違うので、やはりそういうのもご提案出来るようになっていったほうが、ニットの仕事をしていて楽しいというか、より入っていけるんじゃないかな〜って考えることが多いですね。
あと小売の方もイベントに行ったりとかすると、「これで何が作れるの?」ってやっぱり聞かれると思うんですよね。田沼さんも糸を売ってらっしゃると思うんですけれども、結構太い糸とか扱ってらっしゃると思うのでやっぱり聞かれると思うんですよね。どういうものに使ったらいいのかな〜みたいな。なのでそういうのはやっぱり会社にいる以上、誰よりも経験値が高くないと説明出来ないのかな〜っていうので。とにかく編む、ですかね。
あと思ってた以上にグラムよりもメートルを気にされる方が多いなって。「これは何メートルあるの?」って。メートルからセーターの絵付けを考えていく人もいるので、柔軟に対応できるように情報入れておかないとな〜って。
K>慣れてる太さが分かってるから、そのメートルに対してどのぐらい作れるっていうの分かっているってことなんですよね。手芸というか、その手編みの糸って番手って概念がないじゃないですか。中細とかそういうのにするから。本当は最近僕らもを始めたのが、そういう極太とか極細とか太さの単位+番手+グラムとメートル全部書くようにしたんです。
うちもお問い合わせきて、それこそメートルとか、そんなメートルからじゃ別に編めること換算できないじゃんって思っていたんですけど、番手とか知らないお客さんも多いので。でもやっぱ彼女たちは自分たちが編み慣れている長さ、太さの長さを理解しているから、そこから計算してるんだろうなってなる。
小嶋>
そうですね。あとはニットの会社なんですけど、やっぱり日本の織りの型を意識した提案とかも必要だなあって。ニットやる人って多分どの手芸も好きだと思うんですよ。織をやっている方が「これは縦糸に使えますか?」とか聞かれたりとかもあるので、そういった意味でもそういう情報が必要かな。こっちがニットに使うって固定するのも良くないのかなあって。
K>そうですよね。それこそね、モンドさんみたいなファンシーヤーンだったら絶対織りに使っても楽しいだろうし。
業界が抱える問題
K>ニット業界自体が抱える問題ってあるじゃないですか。さっきの番手とか太さの話もそうだし、手編みだったら時間がかかるからお金になりづらいこともそうだし、とりあえず業界に居るからあまり口出さないっていうのも、会社に入ってたら言えないこともあると思うんですけど、個人的にはやっぱり問題解決になるんだったら話し合うのも一つだし、解決方法とかこんな方法もあるのかもしれないねっていうのも大切だと思っていてもし良かったらその辺のことも喋ってくれたらなと。
小嶋>
ニット業界について質問を頂いてたんですけど、ニット業界っていうかアパレル自体があまりにも元気が無さすぎて。ただ、良いニュースはあまり聞かないけれども、インフルエンサーって良く聞くようになってきたな〜と思って、そういう人たちがやっているアパレルって好調だったりするじゃないですか。今までのやり方が通用して無いなあと感じることが多くて、だからと言ってこうしたら良いっていうのも自分自身を見つけてないんですけれども、今のままじゃダメって皆んなが分かっているけれども、じゃあどうしたらいいのかなって迷っているのが今の業界なのかなって。
K>そうですね。まさしく、それこそSNSだったらTwitter、Instagram、facebookとか色々あるじゃないですか。老舗のブランドというか、やっぱりご年配の方が多すぎるのは、もしかしたらターゲット層が見てないっていうのかもしれないですけど、やらないじゃないですか。
でも、やってどうするって以前に、まずやらないとスタートラインに立たないみたいに僕は思っていて、とりあえずお金もかからないし、ちょっとだけ時間と手間かけたら出来るのであれば、それは当たり前ようにやらなきゃいけないのかなっていうのを、あまりにもやらなすぎるのと、やっぱり考え方がちょっと古典的すぎるから・・・。例えば未だにあれですかね。工場さんと取り引きする時とかはFAXとかを使っている時とかあったりしますか?
小嶋>
出来るだけメールのほうが良いんですけど・・やっぱりありますね。メールアドレスあるけれども、電話するまで見てもらえない(笑)こっちも電話すると向こうの時間を取ってしまうので、メールで完結できたら。FAXだとちょっと残りにくかったり もあるので、やっぱりそういうものを使った仕事の仕方っていうのは、業界全体がもっとアップデートしていかないとダメなんだなって思いますね。
「こういう糸を探してるんです。」って郵送で糸のサンプルが来たりとか、そういうのはやっぱり実物を見ないといけないので大事だと思うんですけれども、問い合わせ出来るところって、いっぱいあると思うんですよ。そういうものをもっと見つけていって、やっていかないと皆んな共倒れというか、やっぱりネットの力を使ったビジネスっていうものの凄さをやっぱり体感してしまうので、皆んなで頑張りましょうよって、思ったりはありますね。
難しいですよね、やっぱり。物を売る仕事なので、どこまでそういったやりとりをキュッと小さくできるのかっていうのは課題なのかな〜って。とにかく良いニュース欲しいですね。
K>そうですね。どこが潰れたとか、そういうのばっかですもんね。
小嶋>
そうですね。ただ、このコロナで外出自粛になってデザイン事務所をちょっと解散するみたいな、在宅に切り替えるとかそういった話を聞く機会もあったので、今後工場とかはもちろん無理ですけれども、何かしら新しい流れが来るのかなっていうのはなんとなく思っています。
K>そうですね、この機会でマイナスだけじゃなくて、出来なくなったからこそ、こういうこと出来たっていうのはあるし、それこそ今日のリモートのインタビューなんか多分やってなかったと思うので、確実に。Zoomなんか多分使っていなかったと思うので、でもこう話すきっかけがあったりとか、リモート越しに誰かと話してっていうのが、すごい最近自分としてはかなり大切だなと、今日も。
小嶋>
こういった機会がありがたいです。
K>はい、いえ、こちらこそ小嶋さんに時間いただいてありがとうございます。
小嶋>
もうちょっとニット業界というか、ニットを使ったことが盛り上がっていったらいいな〜って思いますね。日本の編み物は年配の方の趣味みたいなイメージが強いので、海外だと若いアーティストの方が糸で表現とか、よくInstagramとかで見たりするんですけど、あんまりそういうのが少ないかな〜って。中国とか韓国で今手編みがすごくブームが来ているので、日本もこれに巻き込まれていって何か盛り上がるきっかけがあったらいいなってずっと思っているんですけど。