今回はフェイクファー糸がどのような「構造」になってどのような「素材」で作られているのかなど。
フェイクファーの魅力を知って手編みや手織りなど作品づくりの幅を広げるためにまとめました。
「リリアン」ってなに?
元は京都の職人が糸そのものをメリヤス編み(表天竺)したアメリカ製品をレーヨン繊維で再現したことが始まりです。
そのレーヨン繊維を編んだ糸を、「百合印」という名前の商標で販売し、海外では「リリーヤーン(Lily-Yarn)」の名前で呼ばれました。
「リリー・ヤーン」は時代とともに日本人が呼びやすいように「リリヤン」や「リリアン」と変わり呼ばれるようになりました。
「リリアン」は短い幅で筒状に編んでいる糸そのもの、そして筒状に編む用具や技法も同じ名前で呼ばれています。
(普通の横編み機でも前と後ろに針のベットがあれば袋状に編むことが出来る)
ハンディタイプのリリアン編み機としてチューリップ株式会社がリズムニッターというのも販売しています。
また、ハンディタイプより幅が広く太い糸も編むことが出来るおもちゃのリリアン編み機として、タカラトミーから「あむあむたまご」 、「豆しば あみぐる屋」、メガトイから「くるっとあみゅあみゅ」なども販売されています。
フェイクファーの糸はどうやって出来ている?
フェイクファーの糸は「リリアン編み機」で出来ています。
リリアン編み機とは一般的に横に編み針が並列された編み機とは異なり、筒状に編み針が並んでいる編み機です。
仕組みや用途が微妙に違えど、根本的には「筒状」の形として、口径が大きいものは「丸編み」としてTシャツなどのカットーソーに使われる生地を編んだり、靴下を編む機械に使われています。
リリアン編み機はさらに口径が小さくなり「編まれた糸」として表天竺をメインに手芸糸や工業用糸として販売されています。
フェイクファー糸の芯は筒状に編まれていて、毛足が一定の長さに飛んでカットされることでフェイクファーの毛足が出来ます。
芯部分には強度を上げたり、糸が抜けづらくするために一定の温度で溶けて固まる「熱融着糸」が一緒に編まれています。
リリアン編み機でフェイクファー糸を編んで入る動画
フェイクファー糸はレーヨンやポリエステルが使われている
フェイクファーでよく使われるのが「レーヨン混」と「ポリエステル混」の素材です。
獣毛や毛皮を模倣するのに、一番適している糸と言われています。
レーヨンは洗うと縮みやすい糸ですが、触り心地や光沢もよくジャケットの裏地などにも使われています。
ポリエステル糸は洗いも簡単で、レーヨンより張りと腰があるのでしっかりとした毛足が作れます。
フェイクファーの糸は構造的には「天然繊維」でも作ることが出来ます。
以前「ウール100%」でフェイクファー糸と同構造の糸を作ってみましたが、細い糸だと、レーヨン・ポリエステルほど毛足が伸びず、また上記の写真のように太い糸の場合、芯部分が太くなりすぎて重くなりすぎてしまったり糸が抜けやすかったりもするので、コストも含めてレーヨンやポリエステルが使われています。
ポリエステルの光沢がランダムに飛び出す「そっと」
とても触り心地の良いレーヨンのベース糸にポリエステル光沢糸をランダムに飛び出す設計にしたフェイクファー糸「そっと」。
レーヨンだけでは寝てしまう毛足にポリエステルを混ぜることで、見た目がハリネズミのような毛足が出ます。
ハリネズミのように出ているといっても、もちろん全く痛くありません。
他の普通の糸と切り替えて使うことでより良さが際立つ糸です。
ブラック、カーキ、グレー、ホワイトの4色展開です。
素材:本体部分, レーヨン65% ポリエステル35%
標準状態重量 約40g もしくは約100g
参考使用針 棒針 約8〜10号 かぎ針約8〜10号
フェイクファー糸「そっと」オンラインはこちらから→フェイクファー糸 / そっと 40g巻/100g巻
重量感があり毛足が6cもある「もっと」
異色のレーヨンをそれぞれ組み合わせた高密度の直毛された糸で、重量感がのあるフェイクファー糸に仕上げています。
「グレー」はホワイトを、「ベージュ」はホワイトを、「ブラック」はブラウンをそれぞれ組み合わせしておりレーヨンの光沢に陰影が出やすい配色になっています。
毛足が6cもあるので一段だけ編んでもいいですし、指編みなどに使っても面白いかもしれないですね。
グレー、ベージュ、ブラックの3色展開です。
素材:本体部分, レーヨン98% ポリエステル2%
標準状態重量 約40gもしくは100g
参考使用針 カギ針 ジャンボ15mm
フェイクファー糸「もっと」オンラインはこちらから→フェイクファー糸 / もっと 40g巻/100g巻
荒いクシで梳かしてあげるとより毛足が出る
どちらの糸も編む密度によっては毛足が「目と目の間」に挟まって寝てしまいます。
そういう時は100円ショップなどに売っている「荒いクシ」を使って梳かしてあげるとより毛足が出てフェイクファーの糸が生きます。
他の毛足が長い糸に使える裏技ですのでよかったら動画を見て参考にしてください。
フェイクファーを編むのは難しい。それでも魅力的。
フェイクファー糸ははっきり言って「手編み」では扱いが難しい糸です。
その理由としては「編み目(ループ)」が見辛いので、感覚で編まなければならなかったり、洗濯が難しかったり。
それでも、装飾性としてはとても優れている意匠糸なので一段だけ編んだり、部分的に使うことは作品のオリジナリティーをあげるにはとてもオススメの糸です。
オーソドックスな糸と切り替えたり、部分的に使うだけで作品の印象がガラッと変わったりするので「フェイクファーの糸」を使って手編みや手織りに挑戦するのもいいかもしれません。