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究極のワークコート KNITOLOGY(ニットロジー)

ニットプロダクトブランドのKNITOLOGY(ニットロジー)について話したいと思います。

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KNITOLOGY(ニットロジー)とは?

2013年秋冬にデザイナー鬼久保綾子が立ち上げた、「女性のためのニットコート」一型のみから始まったニットウェアブランドです。

ブランド名は“ knit + logy“とニットとロジー(学問)を組み合わせた造語で、

ニットロジー = ニット学」と謳い、実験的に模索しながら、ニットを学問のように追求していきたいという想いが込められています。

現在は一型目の「ニットコート」の他に、二型目の「ニットジャケット」のみを店舗での受注生産とネット通販で販売しています。

何度着ても清潔さと美しさを保ち、毎日着たくなるような、暮らしに寄り添う女性のためのユニフォームを提案しています。

 

ニットロジーの製品が出来るまで

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ニットロジーの製品が出来るまで

 

デザイナーの鬼久保はデザイナーでありながら、研究者であり、技術者と言えます。

ドレスメーカー学院服飾造形学科卒業後、英国ノッティンガム・トレント大学のニットウェア/テキスタイル科でニットの勉強してきた彼女は、自ら工業 機のプログラムを組む技術者として、生産ラインを整え工場の職人たちと密なやり取りをするため、生産工場に近い福島に活動拠点を移してきました。

また、慶応義塾大学政策・メディア研究科にて「ニットテキスタイルの触感や着心地が人間に影響をどのように与えるのか」研究してきた彼女は、何十種類の糸を何度も何度も試編みし、様々な編み方を試して、目面がきれいで肌触りが抜群に良く、ストレッチ性に富んでいる素材を自らの手で開発しています。

ニットロジーの製品はトワル組を何度も行うことで絶妙な着心地を生むカットラインを完成させています。横編ニット製品でトワルを組むこと自体はほとん どありません。それは、ニット自体が体に馴染みやすく、直線的に作ってもある程度体に馴染むという理由があるからです。また、成形やパーツが増えることは 編立の時間を増やしてしまうので、コストが上がってしまいます。しかしながらデザイナー鬼久保は、パーツの編立とトワル組を繰り返し、立体裁断で形出しを 行い、体に馴染み易いニット素材をさらに布帛のような立体的なカッティングを合わせ、抜群の着心地をニットロジーで表現しています。

 

ニットロジーの製品の細部

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アクリル混の綿素材に*プレーティングという機械編でしか出来ない編む技法を使い、裏側にゴム糸を這わせることで独自のストレッチ性と触感の編地を 表現しています。この製品は、ドイツ「stoll(ストール)」社の横編機で編むことにより、より度目を詰めた目面の綺麗な仕上がりになります。度目を詰 めて編み立てているので、出来上がった製品(編立後の製品編地)は12GGの編み機で編み立てられていますが、「14GG16GG相当の編地」が出来上がり丸編みでは表現できない厚みになっています。また、地糸を綿100%ではなくアクリル混にすることとで、アイロンで蒸気を当てた時に熱で縮んで目面が綺麗になるように計算されて作られています。

編立のパーツ数としても異例で、普通のニットセーターが前身頃、後ろ見頃、袖×2、襟ぐりの五枚のパーツで構成させられているのに対して、コートは倍の10パーツ、ジャケットに至っては12パーツで構成され立体的で人間工学に基づいたパターンを提案している。

このパーツの縫製はリンキングではなく、本縫いミシンで叩いています。普通成形の横編ニットには「リンキング」と呼ばれる特殊な縫製方法を使います が、度目を詰めた編地はリンキング縫製では綺麗に縫製できない為、本縫いミシンで端を叩いて仕立てています。一つ一つ布帛で行う、中アイロンを横編ニット でしながら、サイズをパターンに合わせて縫製しているので手間暇がかかったプロダクトと言えます。

このように、デザイナーのこだわりと愛情がこもった製品なるまで、コートもジャケットもそれぞれ1年ほど研究に費やしたそうです。真夏と真冬も室内着として活用すれば、オールシーズン着用可能です。また、極めて非効率的な工程と手間をかけていますので一日の生産は現在1~2着が限界とされています。

 

 

ニットロジーを支持する人たち

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医師、教師、ヘアメイクアーティスト、カメラマン、デザイナー、ライターなど、自宅勤務の人も含め、さまざまな職業の女性に合う服にしたいというデザイナーの思いが伝わっているようで、購買層は20歳から70歳とかなり幅広いファンがいます。30後半から40代が一番多く購入しています。
そしてリピーターが多いのもこのブランドの特徴です。着まわすために同じサイズ、同じ色を購入する方もいれば、コートは7色展開、ジャケットは4色展開とカラーバリエーションも豊富なので、違う色を買うリピーターも沢山いるそうです。

 

ニットロジーの今後

今後は東京に活動拠点を戻し、高級車数台分ほどするSTOLL社の編み機を自社に構え、研究機関と量産体制の一部として機能させていく予定です。デザイナー自らニットのプログラムを組んだり、編み機を購入して研究に費やすのはかなりまれだと思いますが、ニット工場の効率を重視するあまり研究に時間を当てら れない背景を考えると至極当然な選択だと思います。
デザイナーは自社で背景を持つ強みを活かし、一人のためだけにつくる究極のオーダーニットなども作りたいと思っています。そして、販売をした商品のメンテナンス方法の提供や、ニットに特化したクリーニング、ケア用品など着続けるためにアフターケアに力を入れて行きたいとのことです。

ホスピタリティを重視するデザイナーとして福祉、医療をメインに力を入れて行きたいそうです。

また、三児の母である彼女は子供服への展開も考えているそうです。ニットロジーは婦人服というカテゴリーに限定しているのではなく、独自のニット学を落とし込んだ”ニット” として、あらゆる製品への展開を可能にしている。

ニットで独自の目線とプロダクト性を重視したものづくりをするデザイナー鬼久保の今後の活動が気になります。

 

 

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ニットブランドとしての一つの指針

ニットロジーがニットブランドとして一つの指針になるのではないかと確信しています。

ニット工場は技術力がありますが、開発に時間をかけたりプロダクト目線の製品を企画する土壌がありません。多くの場合、オリジナルブランド(ファク トリーブランド)としてデザイナーズブランドのようなイメージと販売の仕方をして、ニット製品が作れるという強みだけを出すだけなので、多くの場合失敗に 終わっています。

ニットで始まり、ニットを得意としてきたデザイナーズブランドも売り上げや春夏のアイテムの事を考えると、最終的には布帛の比率が多くなってしまっていると聞いています。

またニットを勉強している学生が、デザイナーブランドやコレクションブランドを目指し、同じような製品を作るより、プロダクト目線のニットをつくればファッション業界ではなくニットの違った未来が作れると思っています。

アパレルはメーカーや小売りがイニシアチブ発揮しているので、ロットや納期などの関係上、どうしても川上のニット工場、紡績や撚糸工場などの川上に負担が行ってしまいます。そもそのような構造自体デザイナーでも全く意識をしていない人の方が多く。ニットロジーはデザインや生地開発だけでなく、生産体制や販路なども模索しながら新しいモノ作りを探っている、普通のファッションブランドとは違う概念のブランドとしてニットの可能性を追求しています。

暮らしに寄り添う、女性のためのワークコートとワークジャケット。

一度ニットロジーの製品に袖を通してみてはどうでしょうか。

 

KNITLOGYのウェブサイト