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普段「編み物」で使っている糸は何の動物の毛から? 獣毛繊維に学ぶ、種類と特性

一部の子どもが「魚は切り身のまま泳いでいる」と思っているような都市伝説を聞いたことありますか?
これはあながち嘘でもなく、魚がどのような形をしていて泳いでいるのか知る機会がない子ども達も少なからずいるということです。
ましてや大人の私たちも、鳥や豚や牛などの切り身のお肉も経験則で学びます。しかしながら、お刺身の盛り合わせを食べる時に、これはどの魚なのかパッと答えれる人は少ないでしょう。

普段着ている服や編み物や織り物に使っている糸がどんな『動物の毛』を使っているのか改めて考えてみると、感謝の気持ちとともに、モノを作ることに対して一段と身が引き締まるのではないのでしょうか。

今回は天然繊維の中でも「獣毛」にスポットを当てて、糸の原料となる魅力的な動物たちを追っていきます。

繊維の名称

家庭法品質表示法に基づき、普段私たちが着ている衣料の組成(デメリット表示)に獣毛は「毛」と表示されています。
その中でも、『ウール』『カシミア』『モヘア』『アンゴラ』『アルパカ』『キャメル』は正式名称があります。

羊(ウール)


組成表示:羊毛、ウール、WOOL、毛
膨らみ、弾力性、保温性がある冬の代名詞的な繊維です。吸湿性もよく、燃えにくく、シワになっても戻りやすい性質もあります。最大の生産国はオーストラリア。繊維同士が絡み合い、縮んでフェルト化(縮絨)特徴もあり。ピリング(毛玉)が出来やすかったり、繊維が太い種類はチクチクしたりします。

カシミヤ


組成表示:カシミヤ、毛
カシミヤ山羊から取れる毛。カシミヤは「ヒツジ」ではなく「ヤギ」なんですね。ぬめり感と光沢、柔らかさがあり保温性に優れた高級素材。
カシミ[ア]ではなく「カシミ[ヤ]」が正しい表記です。百貨店でカシミヤの製品を販売する場合、検査機関が作成した「カシミア証明書」が必ず必要です。

モヘヤ


組成表示:モヘヤ、毛
アンゴラ山羊の毛が「モヘヤ」に分類されます。「アンゴラ」と呼ばれるものはアンゴララビットを指します。獣毛の中でもとても光沢と軽さがあり、吸湿性のある繊維になります。モヘアではなくモヘヤというのが正しい表記です。

アンゴラ


組成表示:アンゴラ・毛
普通のウサギより毛足が長く、繊維として使えるアンゴラウサギの毛を指します。独特のぬめり感があり、とても軽いです。
毛が抜けやすいのが欠点ですが、フェルト化もする繊維なので高品質のフェルトとして帽子などにも良く使われます。

キャメル


組成表示:キャメル、らくだ、毛
『キャメル』は主にふたこぶラクダの毛。モンゴルやアフガニスタンに多く生息しています。ラクダのこぶには脂肪(栄養)が詰まっていて、砂漠での長旅に耐えれる体に進化しています。染色性が悪いのでベージュや茶を中心にナチュラルカラーで使われます。

アルパカ


組成表示:アルパカ、毛
ミラバケッソのCMで一躍有名になったはラクダ科の生き物『アルパカ』。短く立った毛の「ワカヤ種」と長く縮れた毛をもつ「スリ種」にに分かれます。肌触りが良く柔軟さと、保温性に長けています。ペールに「パコマルカ・アルパカ研究所」というアルパカの繊維製造に関わるすべての人々(遊牧民)に恩恵をもたらすことを目的に設立されています。

その他の獣毛繊維

その他の獣毛繊維は全て「毛」と表記されますが、ビキューナなどの希少価値のある繊維は毛(ビキューナ)などその繊維の用語や商標を括弧で表記します。

ビキューナ(らくだ)


カシミアよりも個体数が少なく世界一細い繊維として有名な「ビキューナ」。名前だけは聞いたことあるっていう人も、パッと動物の姿が頭に浮かぶ人は少ないのでは。南米アンデス山脈のペルー、アルゼンチンなどに多く生息しています。イタリアのラグジュアリーブランド「Loro Piana-ロロ・ピアーナ-」がビキューナのための自然保護地区を南米に設立しています。

ヤク(うし)


カシミアと同じ高級素材の一つ。寒冷な環境に生息しているので、保温性と防水性に長けていて、弾力性もあります。 チベットの人にとっては荷物の運搬と性乳製品として飼育されています。

ラクーン(たぬき)


ラクーンはアニメ「あらいぐまラスカル」で知っている人も多いと思いますが「アライグマ」を指します。アンゴラウサギより毛足が長く、柔らかいのが特徴です。一般に繊維(毛)として使われるよりも毛皮として知られている動物の一つです。

ラマ(リャマ)


同じキャメル科の動物の「アルパカ」に毛も顔もとても似ているので見分けが難しい。荷物の運搬用の家畜として遊牧されている。

動物に支えられて生きている

私たちは動物たちと共存し、ある時は食肉として食べ、ある時は繊維として衣服を着ています。

動物性繊維は、アルカリ性に弱く、虫に喰われやすかったり、直射日光で変色したりもします。それでも、「獣毛」が私たちの衣服を支えているのは、それ以上の機能性や温かみがあるから長い年月の間使われてきました。
色々なものが機械化され、作らなくても安く簡単に手に入る時代に私たちが『編み物』や『手芸』をするのは何故なのでしょうか。

今回の『獣毛』の動物の姿を思い浮かべながら改めて考えていきたいと思いました。