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アルパカ販売停止。真実や正義はどこにあるのか??

「モヘア」に続き「アルパカ」までもが!?

ユニクロが2021年秋冬シーズンからアルパカ素材の使用廃止を発表しました。2020年にモヘアが使用廃止になるというニュースは記憶に新しいです。

今回の「アルパカ」問題は、世界最大の動物愛護団体「PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)」がペルーのアルパカ農場で覆面調査をおこない、虐待とも思える毛刈り方法を訴え撮影、その映像を「PETA」のウェブサイトで発信し全世界に不買するキャンペーンを持ちかけたのが始まりです。

それに伴い、ユニクロ以外の大企業Marks&Spencerなどはアルパカの段階的使用中止を決め、GAPやH&Mなどは問題となった農場MALLKINI(マルキニ)との取引を停止したと発表しています。

ニッティングバードの過去の記事でも書きましたが、このようなことが起こるのは初めてではありません。

2012年には「ミュールジングウール問題」があり、2018年には「モヘア」で同じような問題がおこりました。

この2つの詳しい説明は過去の記事を読んでいただけるとより今回の問題についてより理解できると思います。

羊のありがたみを考えるーミュールジングウール問題ー

モヘアがなくなる?繊維業界の未来はどうなるの?!

*声明文について日本語訳をしてみました。

今回の事実と農場マルキニの親会社-紡績商Michell(ミシェル)による最終声明文と訴え

今回の問題について調査をしてみたところ、私たちの管理システムにシステムに欠陥があったことは疑う余地がありません。

調査と責任の所在がわかるまではアルパカの毛刈り研究、家畜南里の改善、研修、訪問等を停止し、一時的に農場を閉鎖します。

牧場で行われる全ての活動の管理システムの最適化、再発を2度と行わないようにするために専門を呼びます。

Michell(ミシェル)は紡績会社で繁殖や飼育を主な活動としていません。毛刈りされたアルパカの繊維を購入して加工しています。

毛刈りをしている農家は、高地であるので動物農業以外他の仕事をするのは非常に困難で、私たちが加工する繊維の99.90パーセントは何百ものアンデス山脈のコミュニティ(主な生計はアルパカの繁殖です)から来ます。

私たちマルキニ農場の目的は家畜交配ではなく、アルパカの持続可能な飼育において農家をサポートする研究施設です。

サステナブルな企業へ

ユニクロを始め世界的なアパレルメーカーは生産を委託している工場の「名前や住所」まで開示を行っています。

中国の縫製工場の底賃金問題や賃金未払い、バングラディッシュの工場の崩壊事故などがあり、委託した工場側の環境劣化も企業側の資質や責任が問われてしまうご時世で現代に「透明性」を持つことはとても大切です。

最近では農薬や大量の水を使用しない綿花の栽培や方法や、毛皮を使わないことがトレンドになり始めました。

サステナビリティは今では一般の人にも広がっています。

問題が起こると何故すぐに「販売停止」になってしまうのか

前回のモヘアの件と同じように、アンゴラ牧場での「作業員による虐待」が起こりました。

「PETA」が問題提起や不買キャンペーンを行い、世界的大企業が選択を迫られる。これがいつもと同じ流れです。

不適切な方法が問題視されたのなら、排除やすぐになくすということではなく、「その方法に対して改善点を考える」ことが第一なのではないかと思っています。

アンデス山脈に住んで「アルパカ」で生計を立てる沢山の人が携わっています。高立地のため、他の仕事があまりなく貧しくてもこの仕事を生業とする人も多いです。

今すぐに「アルパカ」をやめるということは南米で一番貧しい人と言われる多くの労働者とアンゴラ山羊を路頭に迷わせ、一つの産業を壊滅的に追い込むことにつながります。

ウールやカシミヤなどでも起こりうる問題なのか?

2018年に起きた「モヘア」の問題や今回の「アルパカ」の使用停止のようなことが他の獣毛繊維にもおこりうることなのか。

以前書いた「ミュールジングウール問題」に遡ります。

2012年に株式会社ファーストリテーリング(以下ユニクロ)はPETAが行ったキャンペーンにより、豪州におけるミュールシングという行為を支持しないというビジネスの決断をしたとされています。

8年経った2020年現在、株式会社良品計画(無印良品)は「羊毛を購入する際にはノンミュールジングであることを確認し素材を選択する」とHPで明確に宣言をしています。

それに対してユニクロは「メリノウールのサプライヤーに対して「ミュールジング」を行う農家からの調達を廃止していく取り組みを進めています」という表記をしています。

「ミュールジングウール」を段階的に廃止しているのは事実ですが、今すぐにノンミュールジングウールだけ使うという宣言は、ユニクロの生産に必要なウールの総量に対して供給足りなくなってしまうので宣言出来ないのだろうと推測できます。

「PETA」は社会変革の手法として、SNSやウェブサイトを通じて人々にメッセージを伝える。そして企業にダイレクトメールをして訴える。企業はイメージが悪くなったり、不買いされないために何かしら声明をだす必要に迫られるます。

アルパカ繊維は「ウール」や「カシミヤ」と比べると中価格帯に位置し、大手アパレルで積極的に使われるのは比較的珍しいです。

動物の虐待や、不要な毛刈りが無くなって欲しいとは多くの人が望むことでしょう。

しかしながら、今回販売停止やアクションを起こした多くの企業が、100%アルパカの商品を扱っていなく(混紡の商品ばかりで他の繊維の使用率に比べてるとかなり低い)アルパカに愛情も、貢献もしていないのに、アルパカで生計を立てる人たちが被害を受けるのは見るに耐えません。

アルパカの価値を改めて考える

アルパカを販売停止する企業とは違い、時間をかけて「アルパカの価値」を高め、現地の人々の生活環境の向上に直接貢献しているブランドがあります。

デンマークを拠点にしている日系二世の兄弟「ザ・イノウエ・ブラザーズ」だ。

彼らは、フェアトレードでなくダイレクトトレードと呼ばれる生産システムを独自で構築し、ロイヤルアルパカのさらに上の品質と言われる、世界で一番高品質な「シュプリーム・ロイヤル・アルパカ」(16.0〜18.5マイクロ)という糸をパコマルカ研究所と現地の農家と一緒に品質改良と糸開発を行い、世界一のアルパカをニットウェアとして販売している。

ダイレクトトレードを行いアルパカ農家との関係性を気付きながら、お金だけでなく生きるためのモチベーションを作り、世界に通用するラグジュアリーなアイテムを発信しています。

ソーシャルデザインとして、生産の仕組みをデザインし買う人、売る人、着る人を全てを幸せになるようにトライをしている。

アルパカはとても特別な素材です。丈夫で毛玉ができずらく、なめらかで毛足が長く、光沢がありしっとりなめらかな肌触りの原料です。

保温性にも優れているだけでなく、余分な熱を発散してくれるすぐれもの。

「ザ・イノウエ・ブラザーズ」たちのように「アルパカ」の原料や毛糸に魅力を奪われた人も少なくはないはずです。

今回の「アルパカ問題」をきっかけにアルパカ素材の良さを今一度考えてもらうと嬉しいです。

*ザ・イノウエ・ブラザーズの活動が気になった人は是非著書「僕たちはファッションの力で世界を変える」を読んでほしいです。