ニッティングバードロゴ画像

「サンプル修正と量産」ニットデザイナーになって始めにやること

「修正と量産」ニットデザイナーになってはじめてすること「サンプル修正と量産」

この記事は
「糸の選び方」ニットデザイナーになってまず始めにやること
「サンプル依頼」ニットデザイナーになってまず始めにやること の続きになっています。

●サンプル修正●

サンプル
サンプルを修正は、マネキンではなくブランドの対象のイメージの近い体型の人に着用させ、全体的なサイズ感や着用で動いた時に問題が無いかチェックしていきます。

布帛で使用しているようなシルクピンや鈴ピン等はニットの編み地組織上留めづらく、取れやすくなったり紛失したりするのでサイズを小さくしたいときは安全ピンや手縫いでなどで留めます。

ラインを変えたい時などはICテープを使用し、ポケットや釦、その他付属が付いている時は、位置や付け方などもチェックしましょう。

カットではなく成形編立・リンキングで縫製しているサンプルの場合、衿や袖等リンキングを外して付け直したりして修正をすることもあります。

そのようにして、袖口・裾口リブや丈や幅など増やしたところ、減らしたいところを指示書に記入して2ndサンプルのためのサイズを調整します。

●修正依頼●

修正したいところを仕様書で指示していき、2ndサンプルを上げます。

基本的には仕様書に数字で±0cで修正指示をしますが、目数や段数で伝えることもあります。

また、よりわかりやすく伝えるために実寸パターンや実寸コピーを取って、修正したい形を伝えます。

修正内容を記入する際に、「最終的にこうしたい」という希望の内容と「だから、こういう修正をしてほしい」という修正方法を記入しましょう。
ただ単純に出来ないと言われるのは、指示するデザイナー側にニットや機械の理解がなく断れてしまうこともあります。
メーカーと工場の間では共通言語で話せていない時も多いので、具体的な希望を書くだけでも工場さんは直してくれることも多いです。
どういう風にしたら改善されるのか、修正方法を指示・理解しておくことが大切です。

また、こういう修正をして欲しいという修正方法だけを伝えると、意図と違う風になってしまう場合もありますので、改善方法がわからない場合は工場(OEM・商社)に相談しましょう。

1stサンプルからあまり修正がなく2ndサンプルがそのまま展示会で使用するサンプルになる時は「サンプル作成の経費削減」するためにテレコ(1stサンプルとは違う色)で発注し、1stサンプルは色見本として置いておく方法もあります。

修正依頼をした2ndサンプルで製品を発注する数量を会議や展示会などで決めていきます。

発注の数量が決まった製品は、糸手配後生産されます。

●量産依頼●

展示会後、最終サンプルを量産のための修正を入れます。
伸び率を計算して、丈を短くしたり、バイヤーやお客様の声を聞いた場所を細かく仕様書に修正依頼を出します。

また量産に必要な、ブランドネーム、洗濯表示、サイズ表示、下げ札、納品時に必要なニット袋(ビニロン)、中紙なども手配します。(この時、ブランドネームの付け方や、洗濯表示と下げ札の位置も指示します。)

●糸手配●

糸の在庫がない場合染色の時間がかかります。サンプル時の数kgの少ない量ではなくある程度まとまった量だと、糸在庫ないことが多く染色が必要な場合と、紡績から必要な場合があり、紡績工場、染色工場の混み具合にもよりますが紡績に約30日と染色で15日、合わせて45日程度かかります。
S__16310275
・糸染め(綛染め・チーズ染め)は、R/W(ローホワイト)の紡績→染めの流れで染色します。

R/Wの糸在庫が有り、染めるだけの場合は染色のみになりますので2週間前後で染めあがります。
糸を写真のようなチーズ紙管(パラ紙管)に巻き染色する一番オーソドックスで比較的安価で出来る染色方法です。

IMG_5239

・トップ染めは 綿(スライバー)染め→紡績の流れです。

トップ染などの場合は紡績後、撚糸が必要なのでさらに10日~2週間かかります。
ワタから染めるのでより発色がよく綺麗に仕上がりますが、別注糸のミニマムが多く、納品まで時間がかかってしまいます。

糸を染めた後、糸をニット工場に送り込み編み立てをしていきます。

サンプル時に使用している糸と現物で使用する糸の条件が色味に差異が出てしまうことがあります。
(BOOK抜きの色はほぼ問題ありませんが、染めている場合は特に色によって糸が痩せたり風合いに差が出ることもあります)

時間がある場合は、現物で使用する糸で確認用のサンプルを上げてもらい現物進行前に最終確認を取ります。
量産納品前サンプルが納品され、それを最終確認。→量産納品の流れになります。

直接工場と取引をする場合と、OEMや商社を通して取引をする場合では自分で用意しなければいけない量も違います。
糸発注や付属・ニット袋・中紙などはすべてOEMや商社が揃えてくれるところもあります。

●まとめ●

ニットをデザインする」ということが机上の空論にならないためにも、日々勉強したり、工場に見学しに行くことが大切だと思います。

また、工場やOEMを信頼して指示することはとても大切です。

長年の付き合いから、受注枚数を増やして行き、必ず工場に還元できるように考えて付き合う必要があると思います。

アパレルの無茶苦茶な納期に一番負担がかかるのは川上の「工場」だということを頭に置いて、余裕のあるサンプル・量産依頼を心がけましょう。

また、最近では円安・中国内の工賃高騰にともない、中国で生産していたメーカーが日本生産に切り替え至る所で日本の工場がパンクしかけています。
よって、新規の取引先開拓が難しくなっているのが現状ですが、そういうメーカーは日本生産をずっと続ける保証や理由もないと予想しています。

ここに「横編みニットの取引の仕方」を書いたのは、ニットデザイナーのレベルアップやニット関係の仕事に就いてくれる人を増やすため、日本の技術や工場をこれ以上なくさないために、工場との継続的な取引と、1型100枚以上の発注枚数を増やし続けることを考えてくれる人のために書きました。


written by shoco